難治性の転移を有する大腸がんの治療において、VEGFR-1、2、3を標的とする経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)fruquintinibはプラセボと比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、安全性も良好であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのArvind Dasari氏らが実施した「FRESCO-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月15日号で報告された。
14ヵ国124施設の無作為化プラセボ対照第III相試験
FRESCO-2試験は、日本を含む14ヵ国124施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年8月~2021年12月の期間に患者の登録が行われた(中国・HUTCHMEDの助成を受けた)。
対象は、年齢18歳以上(日本は20歳以上)、組織学的または細胞学的に転移を有する大腸がんと診断され、現在承認されているすべての標準的な細胞障害性抗がん剤および標的薬による治療を受け、トリフルリジン・チピラシルまたはレゴラフェニブ、あるいはこれら双方による治療で病勢が進行または忍容性のない患者であった。
被験者は、最良の支持療法(BSC)に加え、fruquintinib(5mgカプセル)またはマッチさせたプラセボを、28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、OS(無作為化から全死因死亡までの期間)であった。
QOLデータの解析が進行中
691例が登録され、fruquintinib群に461例、プラセボ群に230例が割り付けられた。全体の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:56~70)で、436例(63%)がRAS遺伝子変異を、495例(72%)が肝転移を有していた。全身療法による前治療のライン数中央値は4(IQR:3~6)であり、502例(73%)が3ライン以上の前治療を受けていた。
解析の結果、OS中央値は、プラセボ群の4.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.0~5.8)に対し、fruquintinib群は7.4ヵ月(6.7~8.2)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.55~0.80、p<0.0001)。
また、PFSは、プラセボ群の1.8ヵ月(95%CI:1.8~1.9)に比べ、fruquintinib群は3.7ヵ月(3.5~3.8)であり、有意差が認められた(HR:0.32、95%CI:0.27~0.39、p<0.0001)。
客観的奏効率は、fruquintinib群が2%、プラセボ群は0%(p=0.059)と両群間に有意な差はなかったが、病勢コントロール率はそれぞれ56%、16%(p<0.0001)とfruquintinib群で有意に優れた。奏効期間中央値はそれぞれ10.7ヵ月、0ヵ月だった。
Grade3以上の有害事象は、fruquintinib群が63%(286/456例)、プラセボ群は50%(116/230例)で発現した。fruquintinib群で最も多かったGrade3以上の有害事象は、高血圧(14%)であり、次いで無力症(8%)、手足症候群(6%)であった。各群で1例ずつ治療関連死が認められ、fruquintinib群は腸管穿孔、プラセボ群は心停止によるものだった。
著者は、「現在、QOLデータの解析が進行中で、これによりこの患者集団におけるfruquintinibの臨床的有用性の確立がさらに進むと考えられる」としている。また、「2ライン以上の治療が無効であった患者に対する至適な逐次治療戦略を決定するにはさらなる研究を要する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)