乳頭状頭蓋咽頭腫患者を対象とした小規模な第II相単群試験において、ベムラフェニブ+cobimetinibのBRAF・MEK阻害薬併用療法により16例中15例で客観的奏効(部分奏効以上)が得られたことを、米国・ハーバード大学医学大学院のPriscilla K. Brastianos氏らが報告した。下垂体-視床下部軸の原発性脳腫瘍である頭蓋咽頭腫は、手術、放射線療法あるいはそれらの併用による治療によって、失明、神経内分泌機能障害、記憶喪失など臨床的に重大な後遺症が引き起こされることが多い。遺伝子型の解析では、乳頭状頭蓋咽頭腫の90%以上の患者が、BRAF V600E遺伝子変異を保有していることが示されているが、放射線療法歴のない乳頭状頭蓋咽頭腫の患者におけるBRAF・MEK阻害薬併用療法の安全性と有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌2023年7月13日号掲載の報告。
ベムラフェニブ+cobimetinib併用療法による客観的奏効を評価
研究グループは、2018年2月20日~2020年3月31日に、放射線療法歴または全身療法歴のない測定可能な病変を有する、ECOG-PSスコア0~2、18歳以上の
BRAF V600E変異陽性乳頭状頭蓋咽頭腫患者を登録し、28日を1サイクルとしてベムラフェニブ960mgを1日2回28日間、cobimetinib 60mgを1日1回21日間、それぞれ経口投与した。
主要評価項目は、4ヵ月後の造影MRIで評価した客観的奏効で、事前に規定された腫瘍量基準に基づき中央画像判定により評価した。
客観的奏効率94%、2年無増悪生存率58%
17例が登録され、併用薬の使用により不適格となった1例を除く16例が解析対象となった。16例は年齢中央値49.5歳(範囲:33~83)、15例のECOG-PSスコア0/1で、ベースライン腫瘍量中央値2.75cm
3であった。
16例中15例(94%、95%信頼区間[CI]:70~100)において、持続的な客観的奏効(完全奏効または部分奏効)が認められた。腫瘍量減少率の中央値は、91%(範囲:68~99)であった。
追跡期間中央値は、22ヵ月(95%CI:19~30)で、治療サイクル数中央値は8であった。
無増悪生存率は、12ヵ月時点で87%(95%CI:57~98)、24ヵ月時点で58%(95%CI 10~89)であった。3例は治療中止後の追跡期間中に病勢進行が認められたが、死亡例は確認されなかった。
奏効が得られなかった1例は、有害事象(Grade3のアナフィラキシーおよびGrade2の急性腎障害)のため投与開始8日後に治療を中止した。
治療に関連する可能性のあるGrade3の有害事象は、発疹6例を含む12例に認められた。Grade4の有害事象は2例(高血糖1例、クレアチンキナーゼ上昇1例)報告され、3例は有害事象により投与を中止した。
(医学ライター 吉尾 幸恵)