認知症の家族歴のある認知機能障害のない高齢者において、ベースラインから3年までの認知機能および脳MRIの変化は、MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)摂取群と軽度カロリー制限を伴う対照食摂取群で有意な差はなかった。米国・ラッシュ大学医療センターのLisa L. Barnes氏らが、米国国立老化研究所の助成を受けて実施した無作為化比較試験の結果を報告した。MIND食は、地中海食とDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧を防ぐ食事法)を混成(hybrid)させたもので、認知症リスク低下との関連が推定される食品を含むよう修正されている。観察研究から得られた知見では、食事パターンが認知機能低下の予防に効果がある可能性が示唆されているが、臨床試験のデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2023年7月18日号掲載の報告。
3年後の認知機能と脳画像アウトカムを比較
研究グループは2017年1月~2018年4月に、シカゴおよびボストンの2施設において、アルツハイマー型認知症の家族歴があり、モントリオール認知機能検査(範囲:0~30、低いほど認知機能が低下していることを示す)のスコアが22以上、BMI値が25以上、MIND食スコア(研究者によって考案され脳の健康に不適切な食事を検出するためにデザインされた14項目の食事質問票に基づく、範囲:0~14、低いほど脳の健康に関して不適切であることを示す)が8以下の不十分な食生活をしている65歳以上の高齢者を登録し、軽度カロリー制限を伴うMIND食群、ならびに同様の軽度カロリー制限を伴う通常食(対照食)群に、1対1の割合で無作為に割り付け、3年間、食事療法を行った。全参加者は、割り付けられた食事の順守に関するカウンセリングと、減量を促進するための支援を受けた。
主要エンドポイントは、全体的な認知スコアおよび4つの認知機能ドメインの各スコアのベースラインからの変化とした。認知機能は、一般公開されている12種類の認知機能検査で評価した。各検査の素スコアは、ベースラインの平均値および標準偏差を用いてZスコアに変換し、得られたZスコアは全検査を平均して全体的な認知スコアを作成するとともに、4つのドメインの検査を平均してドメインスコアを作成した(スコアが高いほど認知能力が高いことを示す)。副次エンドポイントは、MRIで得られた脳特性(全脳容積、海馬容積など)の測定値ベースラインからの変化とした。
MIND食と通常食で認知機能と脳画像転帰に有意差なし
スクリーニングを受けた1,929例のうち604例が登録され、MIND食群301例、対照食群303例に割り付けられた。参加者の93.4%が試験を完遂した。
全体的な認知スコアは両群ともベースラインから3年時まで改善が認められ、3年時のベースラインからの変化(Zスコア)はMIND食群で0.205、対照食群で0.170であり、平均群間差は0.035(95%信頼区間[CI]:-0.022~0.092、p=0.23)であった。
MRIによる大脳白質高信号域、海馬容積、灰白質および白質容積の変化は、両群で同程度であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)