慢性片頭痛の予防治療において、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬atogepantはプラセボと比較して、12週の治療期間における1ヵ月当たりの平均片頭痛日数(MMD)に関して臨床的に意義のある抑制効果を示すとともに、安全性プロファイルも良好で既知のものと一致することが、スペイン・バルセロナ自治大学のPatricia Pozo-Rosich氏らが実施した「PROGRESS試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月26日号で報告された。
16の国と地域の無作為化プラセボ対照第III相試験
PROGRESS試験は、日本を含む16の国と地域の142施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月11日~2022年1月20日に参加者の適格性の評価が行われた(Allergan[現AbbVie]の助成を受けた)。
年齢18~80歳で、50歳以前に発症し、1年以上の病歴を有する慢性片頭痛の患者を、atogepant 30mg(1日2回)、同60mg(1日1回)、プラセボを経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、修正intent-to-treat(mITT)集団における12週の治療期間中の平均MMDの変化量であった。
778例を登録し、このうち773例(安全性評価集団、atogepant 30mg群255例、同60mg群257例、プラセボ群261例)が実際に試験薬の投与を受け、755例(253例、256例、246例)がmITT集団に含まれた。
臨床的に意義のある体重減少効果の可能性も
安全性評価集団の平均年齢は42.1歳、88%が女性、59%が白人で、平均罹患期間は21.4(SD 12.2)年、平均MMDは16.0(5.9)日であり、83%に予防薬の使用歴があった。mITT集団におけるベースラインの平均MMDは、30mg群が18.6(SE 5.1)日、60mg群が19.2(5.3)日、プラセボ群は18.9(4.8)日だった。
12週の治療期間におけるmITT集団でのベースラインからのMMDの変化量は、atogepant 30mg群が-7.5(SE 0.4)日、同60mg群が-6.9(0.4)日、プラセボ群が-5.1(0.4)日であった。プラセボ群との最小二乗平均差は、atogepant 30mg群が-2.4(95%信頼区間[CI]:-3.5~-1.3、p<0.0001)、同60mg群が-1.8(-2.9~-0.8、p=0.0009)であり、いずれもatogepant群で有意に優れた。
atogepant群で最も頻度の高い有害事象は、便秘(30mg群10.9%、60mg群10%、プラセボ群3%)と、吐き気(8%、10%、4%)であった。重篤な治療関連有害事象は、30mg群が2%、60mg群が3%、プラセボ群が1%で、投与中止の原因となった有害事象はそれぞれ5%、3%、4%で発現した。
また、臨床的に有意義な可能性のある体重減少(ベースライン以降の任意の評価時点で7%以上の減少)が、各治療群で観察された(30mg群6%、60mg群6%、プラセボ群2%)。
著者は、「本試験の知見は、atogepantの有益性を慢性片頭痛にも拡大するものである。これにより、慢性片頭痛における初のCGRPを標的とする有効で忍容性が良好な経口予防薬の選択肢が確立された」としている。
(医学ライター 菅野 守)