拡張型心筋症、アフリカ系とヨーロッパ系患者での遺伝的構造/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/11

 

 拡張型心筋症(DCM)の遺伝子変異について、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系の患者を対象に調べたところ、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低いことが、米国・オハイオ州立大学のElizabeth Jordan氏らによる検討で明らかにされた。原因として、遺伝子構造が異なる点と、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者の臨床データが不足している点が示唆されたという。黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも、家族歴によるリスクが高くアウトカムが不良である一方、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものである。研究グループは、多様なDCM患者集団において、ゲノム祖先ごとにDCMのまれな変異遺伝子構造を比較した。JAMA誌2023年8月1日号掲載の報告。

36のDCM変異遺伝子について病原性/病原性の可能性/意義不明を判定

 研究グループは2016年6月7日~2020年3月15日にかけて、米国の25のAdvanced Heart Failure Programsを通じ、人種の自己申告による非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系のDCM患者を対象に横断研究を行った。

 主要アウトカムは、36のDCM変異遺伝子の、病原性/病原性の可能性/意義不明の判定と、臨床的に対処が可能(病原性/病原性の可能性と判定)か否かであった。

臨床的に対処可能な変異遺伝子、欧州系26%に対しアフリカ系8%

 解析対象は、主にアフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者が505例、欧州系が667例、ネイティブ・アメリカンが26例だった。

 アフリカ系患者は欧州系患者と比べ、臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低かった(8.2%[95%信頼区間[CI]:5.2~11.1]vs.25.5%[21.3~29.6])。このことは、病原性/病原性の可能性/意義不明の変異遺伝子のいずれかを有する患者では、臨床的に対処可能な変異遺伝子のオッズが、欧州系患者と比べアフリカ系患者は低いことを示唆するものであった(オッズ比[OR]:0.25、95%CI:0.17~0.37)。

 平均してアフリカ系患者は、TTN遺伝子や、病気を引き起こすメカニズムとして機能欠失が予測されるその他の遺伝子について、欧州系患者に比べ臨床的対処可能な変異遺伝子の割合が低かった(それぞれの群間差:-0.09[95%CI:-0.14~-0.05]、-0.06[-0.11~-0.02])。

 一方で、病原性/病原性の可能性/意義不明のいずれかに判定された変異遺伝子数は、アフリカ系患者と欧州系患者で同程度だった(群間差:-0.07、95%CI:-0.22~0.09)。これは、アフリカ系患者では、主にミスセンス変異による非TTN遺伝子・非予測機能欠失型株の意義不明変異株が、より多く認められたためであった(群間差:0.15、95%CI:0.00~0.30)。また、アフリカ系患者のみに検出される変異遺伝子が病原性であることを支持する、臨床症例に基づく公表済みのエビデンスは少なかった(p<0.001)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 原田 和昌( はらだ かずまさ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 副院長

J-CLEAR理事