ブタからヒトへ、腎臓異種移植後の免疫反応/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/09/01

 

 ブタからヒトへの腎臓異種移植は、短期アウトカムは良好で超急性拒絶反応はみられなかったが、再灌流から54時間後の腎臓異種移植片では主に糸球体に抗体関連型拒絶反応が生じていることを、フランス・パリ・シテ大学のAlexandre Loupy氏らがマルチモーダルフェノタイプ解析の結果で明らかにした。異種間の免疫学的不適合がブタ-ヒト間の異種移植の妨げとなっていたが、ブタのゲノム工学によって、最近、初のブタ-ヒト間の腎臓異種移植が成功した。しかし、ブタの腎臓をヒトレシピエントに移植した後の免疫反応についてはほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、次世代のブタ遺伝子編集を改良し、異種移植臨床試験における拒絶反応の液性機序を最適に制御するための研究の道筋や方向性を開くものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月17日号掲載の報告。

ブタ腎臓異種移植片のマルチモーダルフェノタイプ解析

 研究グループは、脳死のヒト2例に移植された遺伝子改変ブタ腎臓異種移植片について完全なフェノタイプ解析を行った。異種移植片の検体は再灌流から54時間後に採取し、解析では形態学的評価、免疫フェノタイピング(IgM、IgG、C4d、CD68、CD15、NKp46、CD3、CD20、フォン・ヴィレブランド因子)、遺伝子発現プロファイリング、全トランスクリプトームデジタル空間プロファイリングおよび細胞デコンボリューションを組み合わせたマルチモーダル戦略を使用した。

 対照として、移植前の異種移植片、野生型ブタ腎臓自家移植片、および虚血再灌流あり/なしの野生型非移植ブタ腎臓を使用した。

異種移植片の糸球体で抗体関連型拒絶反応を確認

 異種移植片から得られたデータは、免疫沈着を伴う微小血管炎症、内皮細胞の活性化、および異種反応性クロスマッチ陽性を特徴とする、抗体関連型拒絶反応の初期兆候を示唆した。

 毛細血管炎症は、主に血管内のCD68+およびCD15+自然免疫細胞、ならびにNKp46+細胞で構成されていた。どちらの異種移植片でも、単球およびマクロファージの活性化、NK細胞負荷、内皮活性化、補体活性化、T細胞発生など、液性反応に生物学的に関連する遺伝子の発現増加が示されたという。

 全トランスクリプトームデジタル空間プロファイリングでは、抗体関連型拒絶反応は主に異種移植片の糸球体に位置し、単球、マクロファージ、好中球、NK細胞に関連する転写産物の有意な濃縮が示された。この表現型は、対照であるブタの自家移植片や虚血再灌流モデルでは観察されていない。

(医学ライター 吉尾 幸恵)