内頸動脈(ICA)または中大脳動脈(MCA)にアテローム性動脈硬化症による閉塞を有し、患部に血行動態不全を認める症候性の患者においては、薬物療法(内科的治療)に頭蓋外-頭蓋内(EC-IC)バイパス術を併用しても、内科的治療単独と比較して脳卒中または死亡の発生を抑制しないことが、中国・National Center for Neurological DisordersのYan Ma氏らが実施した「CMOSS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号に掲載された。
中国の13施設で行われた無作為化試験
CMOSS試験は、中国の13施設が参加した非盲検(アウトカム評価者盲検)無作為化試験であり、2013年6月~2018年3月に患者を登録した(中国国家衛生健康委員会の助成を受けた)。
対象は、年齢18~65歳、CT灌流画像上の血行動態不全に起因する一過性脳虚血発作または後遺障害のない虚血性脳卒中を認め、デジタルサブトラクション血管造影検査で片側性のICAまたはMCAの閉塞がみられ、修正Rankin尺度(mRS)スコアが0~2点の患者であった。
被験者を、EC-ICバイパス術+内科的治療を行う群(手術群)、または内科的治療のみを行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。内科的治療は、ガイドラインに基づき、抗血小板療法と脳卒中のリスク因子を管理するための薬物療法(必要に応じて高LDLコレステロールや高血圧の治療薬を使用)が行われ、禁煙(カウンセリング、経口禁煙補助薬)および減量(行動変容、薬物療法)が推奨された。
主要アウトカムは、無作為化から30日以内の脳卒中または死亡と、31日~2年までの同側の虚血性脳卒中の複合であった。
9項目の副次アウトカムにも有意差なし
324例(年齢中央値52.7歳、男性79.3%)を登録し、手術群に161例、内科的治療群に163例を割り付けた。309例(95.4%)が試験を完遂した。
主要複合アウトカムは、手術群8.6%(13/151例)、内科的治療群12.3%(19/155例)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(発生率の群間差:-3.6%[95%信頼区間[CI]:-10.1~2.9]、ハザード比[HR]:0.71[95%CI:0.33~1.54]、p=0.39)。
30日以内の脳卒中または死亡は、手術群6.2%(10/161例)、内科的治療群1.8%(3/163例)で、31日~2年までの同側の虚血性脳卒中は、それぞれ2.0%(3/151例)、10.3%(16/155例)で発生した。
事前に規定された9項目の副次アウトカムはいずれも有意差を示さなかった。たとえば、2年以内のあらゆる脳卒中または死亡は、手術群9.9%(15/152例)、内科的治療群15.3%(24/157例)で発生し(発生率の群間差:-5.4%[95%CI:-12.5~1.7]、HR:0.69[95%CI:0.34~1.39]、p=0.30)、2年以内の致死的脳卒中は、それぞれ2.0%(3/150例)、0%(0/153例)で発生した(発生率の群間差:1.9%、95%CI:-0.2~4.0、p=0.08)。
著者は、「今後の試験でバイパス術を検討する際は、より大きなサンプルサイズ、バイパス術が最も有効な患者を同定するためのより精緻な患者選択基準の確立、バイパス術の至適なタイミングの解明、より長期の追跡期間が必要となるだろう」としている。
(医学ライター 菅野 守)