重度頭蓋内アテローム性動脈硬化による脳卒中、薬物+PTA/ステントは支持されず/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/08/18

 

 症候性の重度頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄による一過性脳虚血発作(TIA)または虚血性脳卒中を呈した患者において、抗血小板薬による薬物療法+経皮的血管形成術(PTA)またはステント留置術は、薬物療法のみと比べて、短期(30日以内)の脳卒中/死亡の発生または長期(30日超~1年)の該当動脈領域の脳卒中発生について、有意差は認められなかった。中国・首都医科大学のPeng Gao氏らが行った多施設共同非盲検無作為化・評価者盲検試験の結果で、著者は「結果は、症候性の重度頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄を有する患者の治療として、薬物療法へのPTAまたはステント留置の併用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2022年8月9日号掲載の報告。

30日脳卒中/死亡、または30日超~1年の該当動脈領域脳卒中を比較

 試験は中国8ヵ所の医療センターで行われ、症候性重度頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄の患者における「薬物療法+ステント留置術」と「薬物療法単独」を比較した。被験者は、重度(70~99%)頭蓋内狭窄に起因するTIAまたは後遺症のない虚血性脳卒中、非穿通枝領域(非脳幹、非大脳基底核側動脈)虚血性脳卒中を発症し、直近の虚血性症状発症から3週間超が経過した患者380例で、2014年3月5日~2016年11月10日に登録され、3年間追跡が行われた(最終フォローアップは2019年11月10日)。

 薬物療法には、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)90日間、その後同単剤併用療法(SAPT)と脳卒中リスク因子コントロールなどが含まれた。

 主要アウトカムは、30日以内の脳卒中または死亡と、30日超~1年の該当動脈領域の脳卒中の複合だった。副次アウトカムは5項目で、2、3年後の該当動脈領域の脳卒中や3年死亡率などだった。

3年死亡率、ステント併用群4.4% vs.薬物療法群1.3%

 380例が無作為化を受け、適格性が確認された358例(平均年齢56.3歳、男性は263例[73.5%])を対象に試験を行い、343例が試験を完了した。薬物療法+ステント留置群(ステント併用群)は176例、薬物療法単独群(薬物療法群)は182例だった。

 主要複合アウトカムの発生は、ステント併用群が8.0%(14/176例)、薬物療法群が7.2%(13/181例)と、両群で有意差はなかった(群間差:0.4%[95%信頼区間[CI]:-5.0~5.9]、ハザード比[HR]:1.10[95%CI:0.52~2.35]、p=0.82)。

 2年該当動脈領域脳卒中発症率(9.9%[17/171例]vs.9.0%[16/178例]、群間差:0.7%[95%CI:-5.4~6.7]、HR:1.10[95%CI:0.56~2.16]、p=0.80)、3年該当動脈領域脳卒中発症率(11.3%[19/168例]vs.11.2%[19/170例]、-0.2%[-7.0~6.5]、1.00[0.53~1.90]、p>0.99)など、5つの副次アウトカムはいずれも両群で有意差は認められなかった。

 一方3年死亡率は、ステント併用群4.4%(7/160例)と薬物療法群1.3%(2/159例)だった(群間差:3.2%[95%CI:-0.5~6.9]、HR:3.75[95%CI:0.77~18.13]、p=0.08)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 高梨 成彦( たかなし しげひこ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 脳神経外科医長