脳血管障害、冠動脈・末梢動脈疾患などアテローム性動脈硬化症の2次予防において、P2Y12阻害薬の単独療法はアスピリン単独療法と比べて、心筋梗塞リスクを2割近く低減し、脳卒中リスクは同等であることが示された。イタリア・Humanitas UniversityのMauro Chiarito氏らが、これまでに発表された無作為化比較試験を対象にシステマティック・レビューと、被験者総数約4万2,000例についてメタ解析を行った結果を報告した。しかし、著者は、「心筋梗塞の予防に必要な治療数(NNT)が高値であること、全死因死亡や血管死への効果がみられないことから、P2Y12阻害薬の単独療法の臨床的妥当性には議論の余地がある」と述べている。Lancet誌2020年5月9日号掲載の報告。
主要な科学論文データベースと関連学会アブストラクトなどをレビュー
研究グループは、2019年12月18日時点でPubMed、Embase、BioMedCentral、Google Scholar、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを検索し、脳血管障害、冠動脈疾患、末梢動脈疾患の患者に対する2次予防治療としてのP2Y
12阻害薬単剤療法をアスピリン単剤療法と比較した無作為化比較試験について、システマティック・レビューを行った。加えて、検索した論文の参考文献や、2017~19年に関連学会で発表された試験のアブストラクトについても調査を行った。
ランダム効果モデルでオッズ比を算出し、治療効果の比較をした。主要エンドポイントは2つで、心筋梗塞と脳卒中の発生とした。主な副次エンドポイントは、全死因死亡、血管死だった。試験間の異質性をI
2検定で評価し検証した。
P2Y12阻害薬による心筋梗塞予防、NNTは244
検索により、9件の無作為化比較試験が特定され、総被験者4万2,108例を解析に包含した。そのうちP2Y
12阻害薬群に割り付けられたのは2万1,043例、アスピリン群は2万1,065例だった。
P2Y
12阻害薬群はアスピリン群に比べ、心筋梗塞リスクがわずかだが有意な低下が認められた(オッズ比[OR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.66~0.99、I
2=10.9%)。
一方で、脳卒中リスクについては両群間で差はみられなかった(OR:0.93、95%CI:0.82~1.06、I
2=34.5%)。全死因死亡リスク(0.98、0.89~1.08、0%)、血管死リスク(0.97、0.86~1.09、0%)についても同等であった。
重大出血リスクについても、両群間で差はなかった(OR:0.90、95%CI:0.74~1.10、I
2=3.9%)。
P2Y
12阻害薬単剤療法の心筋梗塞予防に関するNNTは244だった。
これらの試験結果は、P2Y
12阻害薬の種類を問わず一貫していた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)