急性脳卒中患者において、四肢虚血と再灌流の一過性サイクルによる遠隔虚血コンディショニング(RIC)を、病院到着前から病院到着後に継続して行っても、90日時点での機能的アウトカムは改善しなかった。デンマーク・オーフス大学病院のRolf Ankerlund Blauenfeldt氏らが、1,500例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、いつくかの有望な前臨床および臨床データが示されてはいたが、RICが急性脳卒中に対して有効な治療法かどうかは依然として不明であった。JAMA誌2023年10月3日号掲載の報告。
上肢可動式カフ圧力を救急車内で開始、病院でも継続
研究グループは、2018年3月16日~2022年11月11日に、デンマーク4ヵ所の脳卒中センターで、病院前脳卒中症状が4時間未満の1,500例を対象に無作為化比較試験を行った(最終フォローアップは2023年2月3日)。
被験者の上肢に可動式カフを取り付け、RIC群(749例)はカフ圧力200mmHg以下、対照(シャム)群(751例)は同20mmHgに設定し、5分間のカフ膨張とその後の5分間解放を1サイクルとし5回続けた。救急車内で開始し、病院到着後に少なくとも1回行い、一部の被験者にはその後7日間、1日2回行った。
主要エンドポイントは、90日時点の機能的アウトカム改善で、最終的な診断が虚血性・出血性脳卒中であった被験者を標的集団とし、修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[無症状]~6[死亡])の変化で評価した。
90日時点のmRSスコア中央値、RIC群2、対照群1
被験者1,500例の年齢中央値は71歳、591例(41%)が女性で、1,433例(96%)が試験を完了した。このうち149例(10%)が一過性脳虚血発作(TIA)、382例(27%)が脳卒中疑い(stroke mimic)と診断された。残りの902例が標的集団の脳卒中発症者(虚血性脳卒中737例[82%]、くも膜下出血165例[18%])で、RIC群436例、対照群466例だった。
90日時点のmRSスコア中央値は、RIC群が2(四分位範囲[IQR]:1~3)、対照群が1(1~3)であり、RIC治療は90日時点の機能的アウトカム改善と有意に関連していなかった(オッズ比[OR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.75~1.20、p=0.67、mRSスコア中央値の絶対群間差:-1、95%CI:-1.7~-0.25)。
無作為化された全患者において、重篤な有害事象の発現件数に有意な差はなかった。1つ以上の重篤な有害事象が認められたのは、RIC群169例(23.7%)、対照群175例(24.3%)だった(オッズ比[OR]:0.97、95%CI:0.85~1.11、p=0.68)。治療中の上肢の痛みまたは皮膚の紫斑が、RIC群54例(7.2%)、対照群11例(1.5%)で報告された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)