妊娠高血圧症候群(HDP)、とくに子癇および重症妊娠高血圧腎症の母親から生まれた児は、最長41年間(中央値19.4年)の追跡期間における全死亡、ならびに消化器疾患、周産期に起因する疾患、内分泌・栄養・代謝疾患および心血管疾患による原因別死亡のリスクが高いことが、中国・復旦大学のChen Huang氏らによるデンマークの国民健康登録を用いたコホート研究の結果、示された。HDPは、母体および胎児の発病や死亡の主な原因の1つであるが、母親のHDPが児の出生から青年期以降の長期にわたる死亡に及ぼす影響については明らかになっていなかった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。
1978~2018年の出生児を対象に解析
研究グループは、デンマークの出生登録(Danish Medical Birth Register)、患者登録(Danish National Patient Register)、死亡登録(Danish Register of Causes of Death)のデータを用い、コホート研究を実施した。
対象は1978~2018年にデンマークで出生した児で、出生日から死亡日、移住日、または2018年12月31日のいずれか早い日まで追跡した。
主要評価項目は死亡登録で確認された全死因死亡、副次評価項目は特定の死因による死亡である。Cox回帰分析を用い、児の性別、単胎出産、経産回数、児の誕生年、母親の年齢、妊娠中の喫煙、居住地、出身国、妊娠前の教育、出産時の所得、妊娠前のBMI、糖尿病歴(有、無)、児の出生前の親の心血管疾患歴などの共変量で調整し、母親のHDPへの曝露と死亡との関連について解析するとともに、その関連が妊娠高血圧腎症の診断時期や重症度、母親の糖尿病歴、母親の教育によって異なるかどうかについても検討した。
HDPの母親から生まれた児は全死因死亡リスクが26%高い
解析対象児は243万7,718例で、このうち母親がHDPであったのは10万2,095例(4.2%)で、内訳は6万7,683例が妊娠高血圧腎症、679例が子癇、3万3,733例が高血圧であった。
最長41年間(中央値19.4年、四分位範囲:9.7~28.7)の追跡期間において、母親が妊娠高血圧腎症であった児781例(10万人年当たり58.94)、子癇であった児17例(133.73)、高血圧であった児223例(44.38)、HDPではなかった児1万9,119例(41.99)が死亡した。
全死因死亡の累積発生率は、母親がHDPであった児(2.06%、95%信頼区間[CI]:1.82~2.34)がHDPではなかった児(1.69%、1.65~1.73)より高く、群間差は0.37%(95%CI:0.11~0.64)で、母親のHDPの人口寄与割合は1.09%(95%CI:0.77~1.41)と推定された。全死因死亡リスクは母親がHDPであった児で26%高く(ハザード比[HR]:1.26、95%CI:1.18~1.34)、母親が妊娠高血圧腎症、子癇、高血圧でHRはそれぞれ1.29(95%CI:1.20~1.38)、2.88(1.79~4.63)、および1.12(0.98~1.28)であった。
母親がHDPであった児の原因別死亡のリスクは、消化器疾患(HR:2.09、95%CI:1.27~3.43)および周産期に起因する疾患(2.04、1.81~2.30)で2倍以上に達し、次いで内分泌・栄養・代謝疾患(1.56、1.08~2.27)、心疾患(1.52、1.08~2.13)でそれぞれ56%、52%増加した。
また、全死因死亡のリスク増加は、早期発症かつ重症の妊娠高血圧腎症(HR:6.06、95%CI:5.35~6.86)、HDPと糖尿病歴(1.57、1.16~2.14)、HDPと教育レベルの低さ(1.49、1.34~1.66)を有する母親の児でより顕著であった。
(ケアネット)