多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)または超高リスクの非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)患者において、追跡期間4.8年時点の全死因死亡、心筋梗塞または予定外の血行再建術の複合リスクは、血流予備量比(FFR)ガイド下完全血行再建術と責任病変のみの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で差は認められなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のFelix Bohm氏らが、スウェーデン、デンマーク、セルビア、フィンランド、ラトビア、オーストラリア、ニュージーランドの7ヵ国32施設で実施した無作為化試験「FFR-Guidance for Complete Nonculprit Revascularization trial:FULL REVASC試験」の結果を報告した。多枝病変を有するMI患者およびSTEMI患者におけるFFRガイド下完全血行再建術の有益性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。
計1,542例を責任病変に対する初回PCI成功後に無作為化
研究グループは、責任病変へのPCIが予定された多枝病変を有するSTEMI患者、または超高リスクのNSTEMIで多枝病変を有し緊急PCIを受けた患者を、責任病変に対する初回PCI成功後6時間以内に、入院期間中FFRガイド下完全血行再建術を施行する群、または入院期間中はそれ以上の血行再建術を行わない(責任病変のみのPCI)群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞または予定外の血行再建術の複合とした。また、全死因死亡または心筋梗塞の複合、ならびに予定外の血行再建術を、重要な副次アウトカムとした。
2016年8月8日~2019年9月11日の間に、計1,542例が無作為化され、764例がFFRガイド下完全血行再建術群に、778例が責任病変のみのPCI群に割り付けられた。各患者の最終追跡調査日は2023年4月15日~7月17日であった。
複合イベント発生19.0% vs.20.4%、有意差認められず
追跡期間中央値4.8年(四分位範囲[IQR]:4.3~5.2)において、主要アウトカムの複合イベントは、FFRガイド下完全血行再建術群で145例(19.0%)、責任病変のみPCI群で159例(20.4%)に発生した(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.74~1.17、p=0.53)。
重要な副次アウトカムについても、全死因死亡または心筋梗塞の複合(HR:1.12、95%CI:0.87~1.44)、予定外の血行再建術(0.76、0.56~1.04)のいずれも両群間で有意差は認められなかった。
安全性について、造影剤に関連した急性腎障害と神経学的合併症に関しては、グループ間に明らかな差は認められなかった。また、全追跡期間中、脳卒中、大出血、心不全による再入院の発生率に明らかな群間差はみられなかった。
なお本試験は、COMPLETE試験(
ジャーナル四天王「STEMI合併多枝冠動脈疾患、完全血行再建術は有効か/NEJM」)の結果が2019年9月に発表された後、実行可能性と倫理的な理由から患者の登録が中止されている。当初の重要な副次アウトカムが主要アウトカムに変更され、追跡期間1年以降に発生したイベントは主要解析に含まれた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)