幻覚成分シロシビンの抑うつ作用を抗うつ薬と比較/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/04

 

 抑うつ症状に対するサイケデリックス薬による介入のうち、高用量のシロシビンの投与を受けた患者は、抗うつ薬(エスシタロプラム)の試験においてプラセボを投与された患者と比較して、抑うつ症状の改善において良好な反応を示すものの効果量は小さいことが、台湾・義守大学のTien-Wei Hsu氏らの調査で示された。研究の詳細はBMJ誌2024年8月21日号に掲載された。

5剤の経口単剤療法のベイズ流ネットワークメタ解析

 研究グループは、抑うつ症状を有する患者において、4つのサイケデリックス薬またはエスシタロプラム(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用いた経口単剤療法の有効性と受容性を、盲検化の失敗による効果の過大評価の可能性を考慮して比較することを目的に、文献の系統的レビューとベイズ流ネットワークメタ解析を行った(台湾国家科学技術委員会[NSTC]の助成を受けた)。

 2023年10月12日の時点で医学関連データベースに登録された文献を検索した。対象は、抑うつ症状を有する成人患者を対象としたサイケデリックス薬またはエスシタロプラムに関する無作為化対照比較試験とした。サイケデリックス薬は、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、アヤワスカのいずれかで、抗うつ薬を併用しない経口単剤療法とした。

 主要アウトカムは、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)で評価した抑うつ状態の変化であった。推定バイアスを回避するために、プラセボ反応をサイケデリックス薬と抗うつ薬の試験で区別した。

プラセボ反応はサイケデリックス薬の試験で低い

 サイケデリックス薬の試験におけるプラセボ反応は、エスシタロプラムを用いた抗うつ薬の試験におけるプラセボ反応に比べて低かった(平均差:-3.90、95%信用区間[CrI]:-7.10~-0.96)。

 サイケデリックス薬の試験の多くでは、プラセボに比べサイケデリックス薬で抑うつ症状の改善効果が高かったが、エスシタロプラムを用いた抗うつ薬の試験のプラセボと比較して効果が優れたのは高用量シロシビンのみだった(平均差:6.45、95%CrI:3.19~9.41)。

 一方、参照群をサイケデリックス薬の試験のプラセボ反応から抗うつ薬の試験に変更すると、高用量シロシビンの効果量(標準化平均差)は「大きい(0.88)」から「小さい(0.31)」へ低下した。

高用量シロシビンの効果は2つの用量の抗うつ薬より高い

 高用量シロシビンの相対的な効果は、エスシタロプラム10mg(平均差:4.66、95%CrI:1.36~7.74、標準化平均差:0.22)および同20mg(4.69、1.64~7.54、0.24)のいずれよりも高かった。

 プラセボに比べて、サイケデリックス薬やエスシタロプラムで投与中止や重度有害事象の頻度が高かった介入(高用量、低用量、超低用量など)はなかった。

 著者は、「高用量シロシビンは、抑うつ症状の治療に有効である可能性があるが、本研究のデザインはサイケデリックス薬の有効性を過大評価していると考えられる」と述べるとともに、「高用量シロシビンの標準化平均差は、現在の抗うつ薬と同程度であり、効果量は小さいことが示唆される」としている。

(医学ライター 菅野 守)