CKDへのエンパグリフロジン、中止後も心腎保護効果が持続/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/07

 

 疾患進行リスクのある幅広い慢性腎臓病(CKD)患者において、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、投与中止後も最長12ヵ月間、追加的な心腎ベネフィットをもたらし続けることが、英国・オックスフォード大学のWilliam G. Herrington氏らEMPA-KIDNEY Collaborative Groupによる「EMPA-KIDNEY試験」の試験後追跡評価において示された。EMPA-KIDNEY試験では、エンパグリフロジンが疾患進行リスクのある幅広いCKD患者に良好な心腎効果をもたらすことが示されていた。今回の試験後追跡評価(post-trial follow-up)では、試験薬中止後のエンパグリフロジンの効果がどのように進展するかが評価された。NEJM誌オンライン版2024年10月25日号掲載の報告。

EMPA-KIDNEY試験後の追跡評価

 EMPA-KIDNEY試験は、CKD患者を対象に8ヵ国241施設で行われた第III相二重盲検プラセボ対照試験。被験者は、エンパグリフロジン(1日1回10mg)またはプラセボの投与を受ける群に無作為化され、中央値2年間追跡された。全被験者が、eGFR≧20~<45mL/分/1.73m2もしくは≧45~<90mL/分/1.73m2かつ尿中アルブミン(mg)/クレアチニン(g)比≧200であった。

 試験終了後、同意を得た生存患者を2年間観察した。同期間中に試験薬(エンパグリフロジンまたはプラセボ)は投与されなかったが、各試験施設の治験担当医師はエンパグリフロジンを含むSGLT2阻害薬の非盲検での処方は可能であった。

 主要アウトカムは2つで、EMPA-KIDNEY試験開始から試験後追跡評価終了まで評価した腎疾患進行または心血管死であった。

統合期間の主要アウトカムイベント発生HRは0.79、試験後のみでは0.87

 試験後追跡評価は、7ヵ国185施設で行われ、EMPA-KIDNEY試験で無作為化された6,609例のうち、4,891例(74%)が登録された。この間の非盲検SGLT2阻害薬の使用は、両群で同程度であった(エンパグリフロジン群43%、プラセボ群40%)。

 EMPA-KIDNEY試験開始から試験後追跡評価終了まで(統合期間)に、主要アウトカムイベントの発生は、エンパグリフロジン群で865/3,304例(26.2%)、プラセボ群で1,001/3,305例(30.3%)報告された(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.72~0.87)。試験後追跡評価期間のみでは、主要アウトカムイベントのHRは0.87(95%CI:0.76~0.99)であった。

 統合期間における腎疾患進行の発生は、エンパグリフロジン群23.5%、プラセボ群27.1%であり、死亡または末期腎不全(ESKD)の複合の発生は各群16.9%、19.6%、心血管死の発生は各群3.8%、4.9%であった。エンパグリフロジンの非心血管死への影響は認められなかった(両群とも5.3%)。

(ケアネット)

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コメンテーター : 栗山 哲( くりやま さとる ) 氏

東京慈恵会医科大学客員教授

医療法人社団 優穂会・三穂クリニック 腎臓高血圧研究所

J-CLEAR評議員