心筋症を伴うトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者において、nexiguran ziclumeran(nex-z)の単回投与は、血清TTR値を迅速かつ持続的に減少したことが示された。nex-zと関連がある有害事象としては一過性の注入に伴う反応が認められた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMarianna Fontana氏らが、トランスサイレチン(TTR)遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9を用いた遺伝子編集療法nex-zの、安全性および有効性を評価した第I相非盲検試験の結果を報告した。ATTR-CMは進行性の致死的疾患であるが、nex-zはポリニューロパチーを伴う遺伝性ATTRアミロイドーシス患者において血清TTR値を減少させたことが報告されていた。NEJM誌2024年12月12日号掲載の報告。
心不全既往・併存のATTR-CM患者36例においてnex-zの安全性と有効性を評価
研究グループは、18~90歳のATTR-CM患者で、心不全による入院歴があるかまたは心不全の臨床症状があり、NYHA心機能分類I~III、NT-proBNP値≧600pg/mL(心房細動の診断がある場合は>1,000pg/mL)の患者を対象に、用量設定パートにおいてnex-zを0.7mg/kg(9例)または1mg/kg(3例)、その後の拡大パートにおいて固定用量の55mg(0.7mg/kgに相当)(24例)を、最低2時間かけて単回点滴静注した。
試験の主要目的はnex-zの安全性および薬力学(血清TTR値)の評価であり、副次エンドポイントはNT-proBNP値、高感度心筋トロポニンT値、6分間歩行距離およびNYHA心機能分類の変化などであった。
2024年8月21日時点で、36例が登録されnex-zの投与を受けた。患者背景は、50%がNYHA心機能分類III、31%が遺伝性ATTR-CMで、追跡期間中央値は18ヵ月(範囲:12~27)であった。
主な副作用は注入に伴う反応、血清TTR値は28日後に89%低下
有害事象は36例中34例で報告された。主な事象(発現率15%以上)は、心不全13例(36%)、COVID-19および上気道感染が各7例(各19%)、心房細動および尿路感染が各6例(各17%)であった。治験責任医師によりnex-zと関連があると判断された有害事象は、注入に伴う反応5例(14%)およびAST増加2例(6%)であった。
重篤な有害事象は14例(39%)で報告されたが、ほとんどはATTR-CMの症状であり、nex-zと関連があると判断された重篤な有害事象は注入に伴う反応1例のみであった。
全例で血清TTR値はベースラインから急速に低下し、平均変化率は28日時で-89%(95%信頼区間[CI]:-92~-87)、12ヵ月時で-90%(-93~-87)であった。
副次エンドポイントについては、12ヵ月時におけるベースラインからの変化として、NT-proBNP値が幾何平均で1.02(95%CI:0.88~1.17)、高感度心筋トロポニンT値が同0.95(0.89~1.01)、6分間歩行距離は中央値で5m(四分位範囲:-33~49)であった。また、NYHA心機能分類は、患者の92%で改善または変化なしであった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)