認知症診断後の余命と施設入所までの期間~メタ解析/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/16

 

 認知症と診断された人々の平均余命は、男性では5.7(診断時65歳)~2.2年(診断時85歳)であり、女性は同年齢で8.0~4.5年であった。また、余命の約3分の1はナーシングホームで過ごしており、半数以上の人が認知症の診断後5年以内でナーシングホームに移っていた。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのChiara C. Bruck氏らが、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究を対象に、認知症の人々のナーシングホーム入所および死亡までの期間に関するエビデンスを要約し、予後指標を探ることを目的として実施したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「このシステマティックレビューでは、認知症診断後の予後は、患者、疾患、研究の特性に大きく依存していた。これらの知見から、個別化された予後情報とケアプランを提供できる可能性が示唆された。今後の研究では、診断時の患者を対象として、個別的要因、社会的要因、疾患ステージ、併存疾患を考慮し、生存だけでなく関連する機能的アウトカム指標を評価する必要がある」と述べている。BMJ誌2025年1月8日号掲載の報告。

適格研究261件を対象にシステマティックレビューおよびメタ解析

 研究グループは、2024年7月4日までにMedline、Embase、Web of Science、Cochrane、Google Scholarへ登録された文献を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。適格条件は、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究で、被験者が150例未満、急性期病院入院中に募集が行われた研究、または追跡調査期間が1年未満の研究は除外した。

 検索により論文1万9,307本が特定され、適格研究261件を対象に含んだ。生存に関する報告が235件(555万3,960例)、ナーシングホーム入所に関する報告が79件(35万2,990例)であった。

診断後余命中央値は4.8年、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長い

 診断後余命中央値は4.8年(四分位範囲[IQR]:4.0~6.0、66研究)で、全体的な5年生存率は51%であった。すでに認知症と診断されている人々を対象とした53研究では、診断後余命中央値は3.1年(IQR:2.4~5.6)であった。

 余命中央値は年齢に強く依存していることが見受けられ、研究開始時の年齢が高いほど短かった。診断後平均余命は、男性では5.7年(診断時65歳)から2.2年(診断時85歳)にわたっており、女性の場合は同年齢で8.0年から4.5年にわたっていた。全体的に女性の診断後平均余命は男性よりも短かった(平均差:4.1年、95%信頼区間[CI]:2.1~6.1)。これは女性のほうが診断時の年齢が高いことに起因していた。

 診断後余命中央値は、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長く、アルツハイマー病では認知症の他のタイプと比べて1.4年長かった。また、2000年以前の研究と比較して、現在のクリニックベースの研究では余命が延長していたが(傾向のp=0.02)、地域ベースの研究ではそのような傾向はみられなかった。

 総合すると、余命に関する不均一性の51%は、報告された臨床特性と研究方法のばらつきによるものであった。

 ナーシングホーム入所までの期間中央値は、3.3年(IQR:1.9~4.0)であった。診断から1年以内に入所した人は13%で、5年後には57%まで増加していた。ただし、入所率の評価の際に競合死亡リスクを適切に考慮していた研究はわずかであった。

(ケアネット)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

大正大学

J-CLEAR評議員