慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の3剤配合吸入薬による治療において、ブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール(定量噴霧吸入器、1日2回)はフルチカゾン/ウメクリジニウム/ビランテロール(ドライパウダー吸入器、1日1回)と比較して、中等度または重度のCOPD初回増悪の発生率が高く、肺炎による初回入院の発生率は同程度であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のWilliam B. Feldman氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年12月30日号に掲載された。
傾向スコアマッチング法を用いた米国のコホート研究
研究グループは、COPD患者における2つの3剤配合吸入薬の有効性と安全性の比較を目的にコホート研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。
解析には、米国の診療報酬データベースを用いた。対象は、年齢40歳以上で、COPDと診断され、2021年1月1日~2023年9月30日にブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール(曝露群)またはフルチカゾン/ウメクリジニウム/ビランテロール(対照群)による治療を新規に開始した患者であった。
傾向スコアを用いてマッチさせた集団を比較した。主要アウトカムは治療期間中の中等度または重度のCOPD初回増悪(有効性)と、肺炎による初回入院(安全性)とした。
曝露群で主要アウトカムが高率
各群2万388例の集団を解析の対象とした。曝露群は平均年齢70.8(SD 8.9)歳、55.5%が女性であり、対照群は70.8(SD 9.0)歳、55.7%が女性であった。
1,000人年当たりの中等度または重度のCOPD初回増悪の発生件数は、対照群が482.8件であったのに対し、曝露群は535.7件と高い値を示した(ハザード比[HR]:1.09[95%信頼区間[CI]:1.04~1.14]、365日時のリスク差:2.6%[95%CI:0.8~4.4]、有害必要数[NNH]:38)。
一方、1,000人年当たりの肺炎による初回入院の発生件数は、対照群が103.9件、曝露群は106.0件であり、両群間に差を認めなかった(HR:1.00[95%CI:0.91~1.10]、365日時のリスク差:0.4%[95%CI:-0.6~1.3])。
中等度、重度の増悪とも曝露群で高値
主要アウトカムの構成要素のうち、中等度のCOPD初回増悪の1,000人年当たりの発生件数は、対照群451.1件、曝露群489.6件(HR:1.07[95%CI:1.02~1.12]、365日時のリスク差:1.9%[95%CI:0.1~3.6]、NNH:54)、重度のCOPD初回増悪はそれぞれ41.9件および54.4件(1.29[1.12~1.48]、1.0[0.1~1.9]、97)であり、いずれも曝露群のほうが高い値を示した。
著者は、「定量噴霧吸入器の気候への影響を考慮すると、COPD患者ではフルチカゾン/ウメクリジニウム/ビランテロールの処方をさらに促進するための検討が進む可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)