臨床意思決定支援システム(CDSS)を導入しても、大学病院における医師による不適切な画像診断依頼の数は減少しなかった。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのStijntje W. Dijk氏らが、CDSSとしての欧州放射線学会(ESR)iGuideの導入が医師の画像検査発注行動の適切性に与える影響を評価する目的で実施したクラスター無作為化臨床試験「Medical Imaging Decision And Support trial:MIDAS試験」の結果を報告した。医療画像診断が広く使用されていることを考慮すると、適切性を向上させるための介入の有効性を評価することは、医療資源と患者のアウトカムの最適化において非常に重要とされる。JAMA誌オンライン版2025年2月10日号掲載の報告。
ドイツの3大学病院26診療科によるクラスター無作為化試験
研究グループは、ドイツの大学病院3施設の26診療科を対象にクラスター無作為化臨床試験を実施した。2021年12月~2024年6月の2.5年間にわたり、参加診療科の医師によるすべての画像診断依頼を対象とした。
全診療科においてCDSS非使用で試験が開始され、構造化された臨床適応データの入力と画像診断依頼の追跡が求められた。その後、無作為化され、13の診療科(クラスター)がCDSS介入を受け(介入群)、13の診療科は介入を受けなかった(対照群)。
介入群では、画像診断依頼が「適切」「条件付きで適切」「不適切」かの情報が医師に提示され、さらにCDSSより代替の診断検査とその適切性スコアが提案され、それに基づき医師は画像診断依頼の修正を選択することができた。
主要アウトカムは、診療科別の不適切な画像診断依頼の割合とした。差分の差分法を用い、CDSSを導入している診療科と導入していない診療科での不適切な画像診断依頼の割合の変化を比較した。
CDSS導入前後で、不適切な画像診断依頼は減少せず
計6万5,764件の画像診断依頼がCDSSによりスコア付けされた。画像診断依頼の50.1%は女性患者に関するもので、患者の平均年齢は64歳(標準偏差17.1歳)であった。
CDSS導入前において、対照群の画像診断依頼は2万1,625件で、そのうち1,367件(6.3%)が不適切と分類された。また、介入群の画像診断依頼は1万3,338件で、そのうち1,007件(7.6%)が不適切と分類された。
CDSS導入後、不適切に分類されたのは、対照群で画像診断依頼1万55件中518件(5.2%)、介入群で7,206件中461件(6.4%)であった。
不適切な画像診断依頼の減少は、介入群で平均差-0.5%(99%信頼区間[CI]:-2.4~0.4)であり、対照群の-1.8%(-4.3~-0.4)と変わらなかった。差分の差分析の結果、群間差は1.3%ポイント(99%CI:-2.0~1.8、p=0.69)であり、統計学的な有意差は認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)