遺伝性の2型糖尿病のリスクの予測に新時代到来か?
家族性糖尿病を有する人は有さない人に比べ2~6倍のリスク増大がある。また最新の研究で、複数の遺伝子座が2型糖尿病のリスクと関連していること(リスク対立遺伝子ごとに5~37%増大)が証明されたことを受け、マサチューセッツ総合病院遺伝子治療部門のJames B. Meigs氏らは、これら遺伝子座に関する知見を用いることで糖尿病リスクの予測は、従来の臨床的なリスクファクターのみを用いた場合の予測能よりも優れたものとなるのではとの仮説を立て検証を行った。NEJM誌2008年11月20日号より。
糖尿病と関連する18の遺伝子型スコアについて検証
検証したのは糖尿病と関連する18の遺伝子座。フラミンガム子孫研究(Framingham Offspring Study)の参加者2,377例を対象とし、18遺伝子座のSNP(一塩基多型)の遺伝子型を確定し、そのリスク対立遺伝子の数から遺伝子型スコアを作成。一般に用いられている臨床的リスクファター単独の場合と、それに遺伝子型スコアの情報を加えた場合との、糖尿病リスクの予測能を、それぞれC統計量を算出してロジスティック回帰分析にて比較した。
従来の予測能と大差なし
追跡期間は28年。この間に確認された糖尿病の新規発症は255例だった。
糖尿病発症者の遺伝子型スコアの平均(±SD)は17.7±2.7、未発症者は17.1±2.6(P<0.001)だった。
遺伝子型スコアを用いた場合の糖尿病リスクの予測能(性補正後)は、用いなかった場合に比べて1.12倍(95%信頼区間:1.07~1.17)だった。
C統計量は、遺伝子型スコアを用いなかった場合は0.534、用いた場合は0.581(P=0.01)。補正後モデル(性、自己申告による糖尿病家族歴にて)のC統計量は、遺伝子型スコアを用いなかった場合は0.595、用いた場合は0.615(P=0.11)。さらなる補正後モデル(年齢、性、家族歴、BMI、空腹時血糖値、収縮期血圧、HDLコレステロール値、中性脂肪にて補正)のC統計量は、遺伝子型スコアを用いなかった場合は0.900、用いた場合は0.901(P=0.49)であった。また、遺伝子型スコアで、対象者のリスクが適切に再分類された割合は最大で4%だった。
これら結果を受けMeigs氏は、「18遺伝子座から作成した遺伝子型スコアで、地域集団での糖尿病の新規発症を予測することはできるが、従来の臨床的なリスクファクターでの予測よりわずかに優れているにすぎなかった」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)