米国では2000年に、5歳未満児全員に7価小児用肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の定期接種が導入されて以降、侵襲性肺炎球菌感染症の発症が小児および成人においても減少した。成人における減少はPCV7の集団免疫の効果による。一方で、同ワクチンの肺炎球菌性髄膜炎に関する効果は明らかになっていなかったことから、ピッツバーグ大学のHeather E. Hsu氏らが調査を行ったところ、発症率は低下しており全体的な効果は見られるものの、非PCV血清型髄膜炎の増加が見られ、懸念される結果も明らかとなった。NEJM誌2009年1月15日号より。
8つの地域住民ベースで導入前と導入後の肺炎球菌性髄膜炎の発症率の変化を評価
Hsu氏らは、米国内8つの地域から集めた住民ベースのサーベイランスデータを用いて、1998~2005年の肺炎球菌性髄膜炎の動向を調査した。発症例の分離株を、「PCV7血清型」「PCV7関連血清型」「非PCV7血清型」にグループ分けし、ワクチン導入前の1998~1999年をベースラインとして、肺炎球菌性髄膜炎の発症率の変化を評価した。
全体的発症率は低下したが、分離株別で見ると非PCV血清型で増加が
対象期間中の肺炎球菌性髄膜炎の発症例は1,379例で、10万人当たり発症率を導入前の1998~1999年と直近の2004~2005年で比べると、1.13例から0.79例へと30.1%低下していた(P<0.001)。年代別で比較すると、2歳未満における低下率は64.0%、65歳以上の低下率は54.0%だった(両群ともP<0.001)。
分離株別で見ると、「PCV7血清型」の発症率(全年齢)は0.66例から0.18例に低下し、低下率73.3%(P<0.001)、「PCV7関連血清型」も32.1%低下していたが(P=0.08)、「非PCV7血清型」については0.32例から0.51例へと60.5%増大していた(P<0.001)。非PCV7血清型の19A、22F、35Bタイプの発症率はいずれも研究対象期間中に有意に増大していた。
またペニシリン非感受性の分離株は平均27.8%を占めた。一方でクロラムフェニコール非感受性(5.7%)、メロペネム非感受性(16.6%)、セホタキシム非感受性(11.8%)の分離株は少ない。またペニシリン非感受性の分離株は、1998年から2003年にかけては32.0%から19.4%へと低下していたが(P=0.01)、2003年から2005年にかけて19.4%から30.1%に増大していた(P=0.03)。
(武藤まき:医療ライター)