双極性障害治療薬 ラモトリギン(商品名:ラミクタール)

提供元:ケアネット

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公開日:2011/08/29

 

 抗てんかん薬であるラモトリギン(商品名:ラミクタール)は、2011年7月、国内初となる「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」を効能・効果とする適応追加の承認を取得した。

双極性障害とは

 双極性障害は、躁状態または軽躁状態とうつ状態が反復して現れる疾患である。躁状態とうつ状態が反復して現れる双極I型障害と、軽躁状態とうつ状態が反復して現れる双極II型障害とに分類される。また、双極性障害は再発を繰り返す疾患であり、その再発率は1年間で48~60%、5年間で81~91%であると報告されている1)

 わが国における双極性障害の患者数は約40万人、潜在患者数は100万人を超えるともいわれている。

双極性障害の診断・治療における課題

 双極性障害の診断では、躁状態または軽躁状態を見逃さないことが重要となる。過去に明確な躁状態がみられる双極I型障害の診断は比較的容易だが、双極II型障害の軽躁状態は患者本人が自覚していないことが多く、診断が難しいケースも少なくない。実際、うつ病外来受診者の約60%が双極II型障害であると報告されている2)。このように、双極性障害、とくに双極II型障害の患者は見逃されている可能性が高く、適切に診断することが求められる。

 また、気分エピソードの再発・再燃を予防することも非常に重要となる。双極性障害は再発率が高く、再発を繰り返すことで患者の社会的予後および生命予後は悪化する。そのため、治療の際は、長期的な視点から生涯にわたる維持療法を行う必要がある3)。その一方、わが国における双極性障害の治療選択肢は限られており、新しい選択肢の登場が待ち望まれていた。

ラモトリギンが日本初「気分エピソードの再発・再燃抑制」の適応

 そのような中、海外での豊富な使用実績を持つラモトリギンが適応追加の承認を取得した。「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」を効能・効果とした、国内初となる本適応症は、双極性障害という疾患の本質を突くものであり、双極性障害の治療概念に変化をもたらすことが期待されている。

ラモトリギンは気分エピソードの再発・再燃までの期間を延長

 ラモトリギンの再発・再燃抑制効果は、国内臨床試験においても示されている。DSM-IV-TRで双極I型障害と診断され、最も新しい気分エピソードが大うつ病、軽躁病、あるいは躁病エピソードである20歳以上の患者229例を対象としたプラセボ対照多施設共同二重盲検比較試験において、試験を中止・脱落するまでの期間(Time to withdrawal from study : TWS)の中央値は、ラモトリギン群(1日1回200mg)で169.0日(95%信頼区間:111.0-)、プラセボ群で67.5日(同:32.0-127.0)と、ラモトリギン群が有意に長く(p=0.010、Log-rank検定)4)、ラモトリギンが双極性障害における気分エピソードの再発・再燃までの期間(すなわち寛解状態でいられる期間とほぼ同義)を延長することが示された。

ラモトリギンは長期にわたり双極性障害患者の予後を改善

 双極性障害はうつ状態で過ごす期間のほうが長いため、うつ病と診断されるケースも少なくない。とくに、双極II型障害は診断までに長い期間を必要とすることも多い。新たな治療薬の登場により、双極性障害への関心が高まり、早期診断の浸透が望まれる。また、治療の際は、再発予防を念頭に置いた長期的な視点が望まれる。

 双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に適応を有するラモトリギンは、長期にわたり双極性障害患者の予後を改善する薬剤といえ、今後、双極性障害の早期診断・再発予防の浸透への貢献が期待される薬剤である。

(ケアネット 鷹野 敦夫)