CLEAR!ジャーナル四天王|page:91

〔CLEAR! ジャーナル四天王(85)〕 アスピリンの時代の終焉?

 急性心筋梗塞に代表される冠動脈疾患の予防、治療にはアスピリンが標準治療である。長年のエビデンスの蓄積により、有効性、安全性、経済性の観点から、アスピリンに勝る抗血小板薬はなかった。クロピドグレルは、CAPRIE試験によりアスピリンに勝る有効性を示した。さらに、多くの国で特許を喪失しつつあるため、経済性もアスピリンに競合可能となった。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(84)〕 「先生、禁煙すると太るからいやです!」 この患者さんにどう説明しますか?

 「たばこを止めたら太っちゃった!先生それでも大丈夫なんですか?」と尋ねられた経験が一度ならずある、という医師は多いであろう。メタボの怖さを患者に説得している医師にとって、この手の質問に「太っても心配ない」と自信を持って答えられるだけの資料を、医師側はこれまで無かった。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(83)〕 運動療法の効果:深層を読む

 本研究は、重度の精神疾患の患者(統合失調症あるいは統合失調感情障害58.1%、双極性感情障害22.0%、大うつ病12.0%)で地域の精神科リハビリテーションに外来で参加している291名を対象とし、無作為に介入群(グループでの体重管理のセッション、個人での体重管理のセッション、グループでの運動セッション)と対照群(健康一般の講義)に分け、体重減少をメインアウトカムとして6、12、18ヵ月で評価したものである。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(82)〕 2型糖尿病患者に対して冠動脈カルシウム・スコアは有用な検査か?

 従来の冠危険因子の中でも糖尿病の危険度は高く、高血圧や脂質異常症の治療ガイドラインのリスク層別化でも糖尿病のリスク比重はより重く設定されている。すなわち、糖尿病である対象者は心血管疾患発症の一次予防よりも二次予防に近い治療管理の適応となる。このような状況で、糖尿病患者の中でもより高リスクのグループを同定できないかとの数多くの試みがなされている。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(81)〕 パーキンソン病にはより積極的な運動療法介入を

 パーキンソン病は運動障害のほかにも、うつや無為、不眠、便秘などの非運動症状など、多様な症状を示す神経変性疾患で、薬物治療によっても進行を食い止めることができないのが現状である。最近、運動療法が身体機能、筋力、平衡機能、歩行のスピードなどを改善することが指摘されている。著者らはParkFit programを開発し、32の施設より586人の活発な運動がみられないHoehn-Yahr 分類3以下の患者を対象に、2年間の追跡研究を行った。ParkFit programとは、月ごとにコーチがより活発なライフスタイルを個別指導し外来でフィードバックを行うものである。586人のパーキンソン病患者を、ParkFit群と一般的な機能訓練を行う群に二分して追跡した。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(80)〕 カフェインドリンクの飲用は交通事故を減らす

 長距離ドライバーの居眠りによる交通事故が大惨事を引き起こしたことはわが国でも記憶に新しい。オーストラリアという広大な国では、長距離ドライバーの居眠り事故対策は大きな課題であろう。本研究は、オーストラリアで200km以上運行する12トン以上の商業用トラック(バスは除く)を運転するドライバーへの聞き取り調査から、カフェイン飲料の使用と交通事故との関連について調査したものである。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(79)〕 非緊急PCI:心臓外科がなくてもアウトカムは劣らない(マサチューセッツ州の場合)

 1977年Gruentzigが世界で初めて臨床応用して以来、経カテーテル冠動脈インターベンション(PCI)の進歩は留まるところを知らないように見える。しかしながら、いわゆる「質の保証(Quality assurance)」の観点から、本治療法の急速な普及と適応拡大には、懸念を示す論議も少なくない。PCIには一定の技術的修練が必要なこと、その合併症が直ちに生命を危うくしうること、そして緊急に外科的処置を行う必要がありうることが、術者や施設のあり方についての議論の根底にある。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(78)〕 大規模臨床試験で試される新規抗血小板薬はわが国で必要か?

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行において、ステントを使用することが標準となった現在では、急性期および亜急性期の血栓性閉塞を予防するために、アスピリンとADP受容体阻害薬であるチエノピリジン系の抗血小板薬の2剤併用(Dual Antiplatelet Therapy:DAPT)の使用が標準とされ、後者の標準薬としてはクロピドグレルが使用されている。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(77)〕 TNFα阻害薬により低疾患活動性を達成した関節リウマチ患者でTNFα阻害薬の減量や中止は可能か?

 TNFα阻害薬の登場により関節リウマチの診療にパラダイムシフトがおこり、関節リウマチの疾患活動性を数値化し、糖尿病や高血圧のように定められた治療目標(寛解、低疾患活動性)に向けて治療が強化されるようになった。一般的な治療方法は第一選択薬としてメトトレキサート(MTX)が使用され、治療目標を達成できない場合にTNFα阻害薬が使用される。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(75)〕 プライマリ・ケア医による閉塞性睡眠時無呼吸の管理は、睡眠専門施設に劣らない

 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の診断と重症度評価は、睡眠センターにおける終夜睡眠ポリグラフ(PSG)によってなされてきた。近年、入院せずに在宅で行う簡易モニターの有用性が示され、代表的な治療法であるCPAPも自動的に圧調節が可能となり、適正圧の決定ができるようになってきた。しかし、OSA患者の管理が、睡眠センターの専門医ではなく、プライマリ・ケアを担当する医師と看護師でも可能であるかは明らかでない。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(74)〕 進行性腎機能障害を呈する特発性膜性腎症の治療にはステロイド+アルキル化剤が有用

 特発性膜性腎症は、その経過中に自然寛解する例が20~30%あるため、これが薬物療法の評価を一部左右する可能性がある。また、腎機能がすでに低下している症例に関しては、臨床試験の確実なエビデンスが得られていない。本研究は進行性の腎機能障害が確認されている例が対象であるため、自然寛解の影響を考慮する必要がなく、また、すでに腎機能障害のある症例の治療効果を検証するという意味で、意義が大きい。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(73)〕 高齢者のOPCAB:手術成績の改善は見られず、再血行再建率が高い

 ドイツで実施された、75歳以上の高齢者を対象としたoff-pump CABG(OPCAB)とon-pump CABGの多施設前向き比較臨床試験報告である。術後30日の死亡率(2.6% vs 2.8%)、および死亡・脳合併症・心筋梗塞・再血行再建・新規血液透析の5つのCompositeエンドポイント(7.8% vs 8.2%)は両群で差はなかったが、再血行再建率(1.3% vs 0.4%、p=0.04)はOPCABで高かった。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(72)〕 腹部大動脈瘤の瘤径に応じた適切なサーベイランス間隔は?

 この論文は腹部大動脈瘤のサーベイランス18論文を、1万5,471例の患者データを、瘤径はランダム効果モデル、破裂率は比例ハザード回帰を用いて統合解析したものである。結果は男性では瘤径3.0㎝では平均1.28㎜/年、5.0cmでは平均3.61mm /年拡大する。女性は4倍破裂率が高く、喫煙者と非糖尿病患者の拡大速度が大きいという文献より、解剖学的構造、性ホルモン、喫煙歴が関与した結果と推察される。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(71)〕 神経刺激療法は、早期パーキンソン病患者の治療選択肢として有用

 パーキンソン病に対する神経刺激療法(視床下核刺激療法)は、わが国では脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)と呼ばれ、すでに健康保険が適用されている定位的脳手術療法の一つである。その適応は、Levodopaなどのパーキンソン病の薬に対して「オフ」期間(薬の効果が十分になく、症状が続いている) に悩まされている場合や、ジスキネジア(不随意過剰運動)がある場合など、病状が比較的進行したパーキンソン病患者(Hoehn-Yahr重症度分類Stage3以上)に有効とされている。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(70)〕 偶発的な心臓への照射はその後の冠動脈イベント発生リスクを増加させる

心臓(冠動脈)への照射が動脈硬化を進展させることは知られているが、実際に乳がんに対する放射線療法における電離放射線の心臓への偶発的被爆が、その後の虚血性心疾患のリスクに与える影響は不明である。本試験では2,168例の乳がんに対して放射線治療を受けた患者を対象に、その後重大な冠動脈イベント(心筋梗塞、冠血行再建、虚血性心疾患による死亡)の発生率が上昇したか否かを検討したものである。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(69)〕 慢性心不全と貧血を考える際のlandmark studyとなるか?!

慢性心不全の定義は研究者により異なるが、「慢性心疾患のため心臓のポンプ機能が低下し、結果として容易にうっ血性心不全状態に陥ったり重症不整脈の発生がみられる予後不良の状態」というコアな部分においては異論がないと思われる。心血管系の第一の役割は諸臓器に酸素を送り届けることである。したがって、その運搬媒体であるヘモグロビンの不足(=貧血)の存在は、脆弱化した循環系に対して慢性的に過運動を強いるものであり、予後不良因子になると推測されたのは一見自然なことであったように思われるであろう。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(68)〕 慢性疾患の遠隔医療におけるテレシステムの優越性を示せず(英国)

 慢性疾患に罹患した高齢者が増えているのはわが国ばかりでなく、欧州でも同じである。高齢者をできる限り在宅で自立して生活できるよう支援することが、医療経済の大きなテーマとなっている。欧州は遠隔医療に関して長い歴史を有するが、なかでもドイツや英国は、伝送システムやロボットシステムによる在宅管理に先進的に取り組んでいる。しかし、これらの遠隔医療が本当に患者の生活の質の改善や入院の抑制、医療経済の改善に役立っているのかどうかに関しては、確かな指標に乏しい。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(67)〕 低悪性度リンパ腫とマントル細胞リンパ腫の1次治療、B-RがR-CHOPよりも有用かつ安全

 1963年に旧東ドイツで開発されたベンダムスチン(B)は、プリンアナログ様骨格にアルキル基が結合したユニークな抗がん薬である。治癒が期待できる治療法が確立していない低悪性度(B細胞性)リンパ腫や、従来の化学療法では予後不良なマントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma:MCL)に対する高い有効性と低毒性が注目され、本邦では、2010年に再発・難治低悪性度リンパ腫と再発・難治MCLに対して承認された。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(66)〕 脳と精神の世紀は始まったばかり

 死後脳の大規模(33332 cases and 27888 controls)解析により、5つの精神疾患(自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、双極性感情障害、大うつ病性障害、統合失調症)に共通の(cross-disorder)、いくつかの一塩基多型との関連が見いだされたという報告である。著者らはサマリーでの「解釈」で「精神医学における記述的症候群を超えて、疾患の原因に基づく診断学というゴールに向けたエビデンスをもたらした」と高らかに宣言している。確かに、これにより精神医学は科学として確実に一歩前進した。しかし、著者らはゴールまでの気の遠くなるような距離を知っているに違いない。