医療一般|page:1

再発/難治性濾胞性リンパ腫に対する二重特異性抗体モスネツズマブ発売/中外

 中外製薬は、2024年12月27日に「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」に対して製造販売承認を取得した抗CD20/CD3ヒト化二重特異性モノクローナル抗体であるモスネツズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ルンスミオ)について、2025年3月19日に薬価収載され、販売を開始したことを発表した。  本剤は、過去に少なくとも2つの標準治療が無効または治療後に再発した濾胞性リンパ腫に対する新たな治療選択肢である。効果に応じ投与期間があらかじめ定められているfixed durationの治療であり、治療に伴う患者さんの負担軽減が期待されるという。

潰瘍性大腸炎に対する1日1回の経口薬オザニモドを発売/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは2025年3月19日、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬オザニモド(商品名:ゼポジア)を発売した。  オザニモドは、潰瘍性大腸炎に対する新規作用機序の治療薬である。S1P1受容体および S1P5受容体に高い親和性を持って選択的に結合するS1P受容体調節薬であり、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、S1P1受容体の内在化および分解を誘導することにより、リンパ球を末梢リンパ組織内に保持する。この作用によってリンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害することで、潰瘍性大腸炎の病理学的変化を改善すると考えられてい る。

HR+/HER2-乳がんへのダトポタマブ デルクステカンが発売開始/第一三共

 第一三共は、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの治療薬である抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2025年3月19日に薬価収載され、同日より発売開始したことを発表した。  本剤は、TROP-2に対するヒト化モノクローナル抗体とトポイソメラーゼI阻害作用を有するカンプトテシン誘導体を、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体である。化学療法の前治療歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または転移を有する乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験において、ダトポタマブ デルクステカン投与群では医師選択化学療法投与群よりも有意に無増悪生存期間が延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象は半数以下であったことが示された。なお、アジア人サブグループ解析においても、全体集団と同様の結果が得られている。

強迫症併存の双極症I型に対するLAI抗精神病薬補助療法の有用性

 双極症と強迫症は、併存することが多く、このような場合の治療には、大きな課題がある。双極症における強迫症の併存は、自殺リスクの増加や機能障害などの重篤な臨床的特徴と関連している。強迫症には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効であるが、双極症の躁症状への転換リスクを増加させる可能性がある。アリピプラゾール月1回製剤やパリペリドン月1回製剤などの長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用は、双極症治療における有病な代替治療として期待されるが、強迫症併存の双極症に対する有効性および安全性は、十分に研究されていない。イタリア・Asl Napoli 1 CentroのVassilis Martiadis氏らは、強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の有効性および忍容性を評価するため、本研究を実施した。Journal of Clinical Medicine誌2025年2月2日号の報告。

超迅速遺伝子検査が脳腫瘍の手術の助けに

 慎重を要する脳腫瘍患者の腫瘍の摘出で、実験段階にある超迅速遺伝子検査が外科医の助けとなることが、米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部神経外科・病理学准教授のDaniel Orringer氏らによる新たな研究で示唆された。この検査では、組織標本中のがん細胞の量を15分以内に測定することができる。これは、患者が手術室にいる間に外科医がフィードバックを得るのに十分な速さだ。また、腫瘍辺縁部の1mm2当たり5個未満という低密度のがん細胞も検出可能であるという。詳細は、「Med」に2月25日掲載された。  Orringer氏らは、「その迅速性と正確性から、脳腫瘍の手術中にリアルタイムでがん細胞を検出できる、この種のものとしては初の実用的なツールになる」と結論付けている。Orringer氏は、「脳腫瘍をはじめとする多くのがんにおいて、がんの手術の成功と再発の予防は、できる限り安全に腫瘍とその周囲のがん細胞を切除することが前提となる」とNYUのニュースリリースの中で述べている。

手術中の強オピオイド鎮痛薬の使用は手術後の疼痛と関連

 手術中に強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルとスフェンタニルを使用することは、手術後の望ましくない「疼痛経験」と独立して関連することが示された。「疼痛経験」とは、単なる痛みの強度だけでなく、感情的・精神的・認知的な側面を含めた包括的な概念である。ニース・パスツール病院大学病院センター(フランス)のAxel Maurice-Szamburski氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に2月25日掲載された。  Maurice-Szamburski氏は、「オピオイド鎮痛薬は手術後の疼痛軽減に役立つことがあるが、手術中の使用、特に、強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルやスフェンタニルの使用は、逆に疼痛を増大させる可能性がある」と述べている。

厳格な血圧管理が高齢者にもたらすベネフィットはリスクを上回る

 地域在住の高齢者では、厳格な血圧管理による健康上の利点は潜在的なリスクを上回る可能性の高いことが、最新の大規模臨床試験により明らかにされた。試験では、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする治療を受けた高齢者の約85%で、腎障害などの潜在的なリスクと比較して、得られるベネフィット(ネットベネフィット)の方が大きいことが示されたという。米カリフォルニア大学デービス校のSimon Ascher氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Geriatrics Society」に2月18日掲載された。

失明を来し得る眼疾患のリスクがセマグルチドでわずかに上昇

 2型糖尿病の治療や減量目的で処方されるセマグルチドによって、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)という失明の可能性もある病気の発症リスクが、わずかに高まることを示唆するデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ウィルマー眼研究所のCindy Cai氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に2月20日掲載された。  NAIONは、網膜で受け取った情報を脳へ送っている「視神経」への血流が途絶え、視野が欠けたり視力が低下したり、時には失明に至る病気。一方、セマグルチドはGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)という薬の一種で、血糖管理や減量のために処方される。2024年に、同薬がNAION発症リスクを高めるという論文が発表された。ただし、ほぼ同時期にその可能性を否定する研究結果も発表されたが、安全性の懸念が残されている。これらを背景としてCai氏は、複数のデータベースを統合した大規模サンプルを用いた後ろ向き研究を実施した。

進行乳がんでのT-DXdの効果と関連するゲノム異常/日本臨床腫瘍学会

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の効果に関連するゲノム異常の影響については十分に解明されていない。今回、進行乳がん患者の組織検体における包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査データの後ろ向き解析により、CDK4およびCDK12異常がT-DXdへの1次耐性に寄与する可能性が示唆された。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)にて、国立がん研究センター中央病院の山中 太郎氏が発表した。  本研究では、2019年6月~2024年8月に組織検体のCGP検査を受け、国立がん研究センター・がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録された進行乳がん患者のデータを後ろ向きに解析した。CGP検査には、NCCオンコパネルシステム、FoundationOne CDx、GenMineTOPが含まれる。T-DXd投与前の検体を用いてCGP検査を受けた患者を対象とし、actionableな遺伝子異常はpathogenic/oncogenicバリアントまたはlikely pathogenic/likely oncogenicバリアントに分類された場合にカウントした。

頻回の献血によるクローン性造血への影響は?/Blood

 頻回の献血が健康や造血幹細胞に及ぼす影響についてはほとんど解明されていない。今回、ドイツ赤十字献血センターのDarja Karpova氏らが100回以上の献血者と10回未満の献血者を調べた結果、前がん病変であるクローン性造血の発生率には差はなかったが、DNMT3Aに明らかに異なる変異パターンがみられることがわかった。Blood誌オンライン版2025年3月11日号に掲載。  本研究では、100回超の献血歴を有する高齢男性の頻回献血者217人と10回未満の献血歴の散発的献血者212人のデータを比較した。

慢性不眠症に対する睡眠薬の切り替え/中止に関する臨床実践ガイドライン

 現在のガイドラインでは、慢性不眠症の第1選択治療として、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)が推奨されている。欧州ガイドラインにおける薬理学的治療の推奨事項には、短時間または中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬・Z薬(エスゾピクロン、zaleplon、ゾルピデム、ゾピクロン)、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA:ダリドレキサント)、メラトニン受容体拮抗薬(徐放性メラトニン2mg)などの薬剤が含まれている。不眠症は慢性的な疾患であり、一部の治療に反応しない患者も少なくないため、さまざまな治療アプローチや治療薬の切り替えが必要とされる。しかし、現在の欧州では、これらの治療薬切り替えを安全かつ効果的に実践するためのプロトコールに関して、明確な指標が示されているわけではない。イタリア・ピサ大学のLaura Palagini氏らは、このギャップを埋めるために、不眠症に使用される薬剤を切り替える手順と妥当性を評価し、実臨床現場で使用可能な不眠症治療薬の減量アルゴリズムを提案した。Sleep Medicine誌2025年4月号の報告。

患者のAI信頼度は約半数、救急の重症度判断における注意点/日本救急医学会

 日本救急医学会の救急医療における先端テクノロジー活用特別委員会は、大規模言語モデル(LLM)が回答した救急外来受診の要否判断の正確性、回答内容に対する利用者(非医療者の一般人)の理解度について検証を行った。その結果、医学知識を持つ専門家側はLLMが救急外来受診の判断を高精度でアドバイスしていると評価した一方で、一般人側は同じ回答を見ても専門家と異なる解釈をする傾向があることが明らかになった。これにより、AIが生成する医療アドバイスに関する理解や解釈において、専門家と一般人の間に大きな隔たりがあることが示唆された。Acute Medicine & Surgery誌2025年3月12日号掲載の報告。

非がん性慢性疼痛へのオピオイド、副作用対策と適切な使用のポイント~ガイドライン改訂

 慢性疼痛はQOLを大きく左右する重要な問題であり、オピオイド鎮痛薬はその改善に重要な役割を果たす。一方、不適切な使用により乱用や依存、副作用が生じる可能性があるため、適切な使用が求められている。そこで、2024年5月に改訂された『非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン改訂第3版』の作成ワーキンググループ長を務める井関 雅子氏(順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授)に、本ガイドラインのポイントを中心として、オピオイド鎮痛薬の副作用対策と適切な使用法について話を聞いた。

強度を徐々に上げる歩行運動は脳卒中後の患者の転帰を向上させる

 脳卒中後の標準的なリハビリテーションに1日30分の強度を徐々に上げる歩行運動(以下、漸増負荷歩行運動)を加えることで、退院時の患者の生活の質(QOL)と運動能力が著しく改善したとする研究結果が報告された。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)理学療法学教授のJanice Eng氏らによるこの研究は、米国脳卒中学会(ASA)の国際脳卒中会議(ISC 2025、2月5〜7日、米ロサンゼルス)で発表された。Eng氏は、「ガイドラインでは、脳卒中後には体系的なリハビリテーション(以下、リハビリ)や運動療法を段階的に進めることを推奨しているものの、十分な強度を持つこうしたアプローチがリハビリプログラムに広く採用されているとは言えない」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースで述べている。

“オゼンピック・フェイス”が美容外科のトレンドに

 米国顔面形成外科学会(AAFPRS)が行った調査により、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)による肥満治療後の顔のたるみを引き締める手術が、急速に増加していることが明らかになった。この調査の結果は、AAFPRSのサイトに2月4日公開された。  GLP-1RAは、当初は2型糖尿病患者対象の血糖降下薬としてのみ使用されていたが、近年は減量目的での処方が広がっている。GLP-1RAによる減量に伴い、顔の皮膚がたるんでくることがある。このような特徴が現れた顔は、肥満目的で処方されることの多いGLP-1RAであるセマグルチドの商品名がオゼンピックであることから、“オゼンピック・フェイス”と呼ばれる(なお、肥満治療の適応を有するセマグルチドの商品名はウゴービであり、オゼンピックは血糖降下薬としてのみ認可されているが、実際には医師の裁量でオゼンピックが肥満治療に使われるケースも多い)。

HER2+乳がんへのtucatinib、日本人集団でも良好な有効性(HER2CLIMB-03)/日本臨床腫瘍学会

 前治療歴のある切除不能な局所進行または転移を有するHER2+乳がん患者に対し、トラスツズマブとカペシタビンに加えて経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibを追加投与した第II相HER2CLIMB-03試験の結果、日本人集団においても良好な有効性と安全性を示したことを、大阪国際がんセンターの中山 貴寛氏が22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。  グローバルなHER2CLIMB試験において、複数の前治療歴があり、局所進行/転移を有するHER2+乳がん患者に対するトラスツズマブ+カペシタビン+tucatinib併用療法は、臨床的に有意な有効性を示し、忍容性も良好であったことが報告されている。今回は、主に日本から患者を登録したHER2CLIMB-03試験の有効性と安全性が報告された。

新たな時代に向けた白血病診療の在り方と展開/日本臨床腫瘍学会

 自己複製能と多分化能を備える造血幹細胞は、複数の過程を経てさまざまな血液細胞に分化し、体内の造血系を恒常的に維持している。一方、この分化過程の各段階で生じるがん化は、白血病やリンパ腫、骨髄腫を引き起こす。  2025年3月6〜8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、教育講演の1つとして「本邦における白血病診療」と題した講演が行われた。演者の藥師神 公和氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科)は、「白血病に特異的な症状はない。多くの場合、血液検査で異常が指摘されると、造血の場である骨髄の検査が実施され、診断に至る」と説明し、白血病が急性または慢性、ならびに骨髄性またはリンパ性の違いで一般的に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の4つに分類されることから、「本講演では、日本血液学会より2024年に公開された『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』に沿って、各白血病の総論やアルゴリズム、クリニカルクエスチョン(CQ)の改訂点を紹介するとともに、今後の展望にも触れたい」とした。

認知症の臨床診療ガイドライン―韓国認知症協会の推奨事項

 韓国・江原大学校のYeshin Kim氏らが、エビデンスに基づく推奨事項をまとめた韓国認知症協会の臨床診療ガイドラインについて、アルツハイマー病およびその他のタイプの認知症に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬に関する推奨事項に焦点を当て、Dementia and Neurocognitive Disorders誌2025年1月号に発表した。また同誌にて、同国・カトリック大学校のGihwan Byeon氏らは本ガイドラインについて、患者のQOLや介護者の負担に影響を及ぼす認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する、抗精神病薬、抗うつ薬、抗認知症薬など薬理学的治療に関する臨床実践ガイドラインとして提示した。

高齢の市中肺炎、セフトリアキソンvs.スルバクタム・アンピシリン

 高齢者の市中肺炎の初期対応として、嫌気性菌をカバーするスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、カナダの市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究では、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させたことが報告されている1)。そこで、山本 舜悟氏(大阪大学)らの研究グループは、市中肺炎により入院した65歳以上の患者を対象としたデータベース研究を実施し、セフトリアキソン(CTRX)とSBT/ABPCを比較した。その結果、SBT/ABPCのほうがCTRXよりも院内死亡率が高かった。本研究結果は、Open Forum Infectious Diseases誌2025年3月5日号に掲載された。

帝王切開は子どもの成長に影響しない?

 帝王切開(CD)で生まれた子どもと、長期的な健康や発達における悪影響との間には有意な関連はないとする研究結果が報告された。0.5~9歳までの全原因入院、肥満、発達マイルストーン(発達がどこまで進んでいるかという指標)といったさまざまな評価項目で有意な関連は認められなかったという。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の松本尚美氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月20日掲載された。  出産方法は長期的に見た場合、子どもの健康と発達に影響を及ぼすことが示唆されてきた。CDは、母子の安全確保のため、ある特定の臨床的状態のときに実施される。しかしながら、この外科的介入が子どもの身体的成長、認知発達、慢性疾患のリスクなどさまざまな側面に及ぼす潜在的な影響については現在も議論が続いている。松本氏らは、「日本産科婦人科学会周産期登録(PRN)データベース」にリンクされた「21世紀出生児縦断調査」を利用して、CDと子どもの健康および発達との関連を調査した。