医療一般|page:96

統合失調症患者の入院期間・回数に対する抗精神病薬治療順守の影響

 統合失調症治療における長期的アウトアカムの最適化には、効果的な薬理学的介入が必要とされる。また、服薬アドヒアランスは、統合失調症患者のウェルビーイングにどのような影響を及ぼすかを示す重要な指標の1つである。この服薬アドヒアランスが統合失調症患者の臨床アウトカムに影響することは知られているが、入院期間や再入院の頻度といった因子とどのように関連しているかを調査した研究は十分ではない。インドネシア・パジャジャラン大学のMelisa Intan Barliana氏らは、統合失調症患者の入院期間と入院回数に対する服薬アドヒアランスの影響を調査するため、横断的レトロスペクティブ研究を実施した。その結果、治療アドヒアランスと治療計画は統合失調症患者の性別と有意に関連し、男性患者と女性患者の間に統計学的な有意差があることが示された。Patient Preference and Adherence誌2023年11月1日号の報告。

塩分過多は糖尿病のリスクも高める可能性

 糖分の取り過ぎは2型糖尿病リスクを高めることはよく知られている。一方、高血圧リスクとの関連で注意が呼び掛けられることの多い塩分の取り過ぎも、2型糖尿病リスクを高める可能性のあることが報告された。米チューレーン大学公衆衛生熱帯医学大学院のLu Qi氏らの研究によるもので、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」11月号に掲載された。  この研究は、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて行われた。ベースライン時に糖尿病、慢性腎臓病、がん、心血管疾患の既往がなく、料理に塩を加える頻度を問う質問への回答が記録されていた40万2,982人を解析対象とした。中央値11.9年の追跡で1万3,120人の2型糖尿病発症が記録されていた。

うがいと鼻洗浄がコロナ感染による入院リスクを低減か

 新型コロナウイルスに感染した際には、生理食塩水でうがいと鼻洗浄(鼻うがい)をすることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクを低減できる可能性のあることが、小規模研究で明らかになった。米テキサス大学ヒューストン医療科学センター産婦人科・生殖科学分野教授のJimmy Espinoza氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting、11月9~13日、米アナハイム)で発表された。  この研究では、2020年から2022年の間に新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が確認された58人(18〜65歳)を、低濃度(27人、平均年齢39歳)または高濃度(28人、同41歳)の生理食塩水でうがいと鼻洗浄をする群にランダムに割り付け、COVID-19の症状の発症頻度や持続期間、転帰(入院、集中治療室入室、機械的人工換気によるサポート、死亡)について比較を行った。対照者は、本試験期間中に新型コロナウイルスに感染した9,398人(平均年齢45歳)とした。生理食塩水は、8オンス(約237mL)のお湯に2.13gの塩を溶かした場合を低濃度、6gを溶かした場合を高濃度とし、対象者には1日4回、14日にわたってうがいと鼻洗浄を行ってもらった。対象者のうちの3人は追跡不能となった。

ピーナツアレルギーを特殊な歯磨き粉で治療できる?

 ピーナツなど特定の食品にアレルギーを持つ人に対する治療用歯磨き粉の開発に向けた第1相臨床試験の結果を、米オレンジ郡小児病院(CHOC)の小児アレルギー専門医であるWilliam Berger氏らが、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting、11月9~13日、米アナハイム)で発表した。口腔粘膜免疫療法(oral mucosal immunotherapy;OMIT)と呼ばれるこの免疫療法は、医師などの専門家の監視下でアレルゲンとなっている物質を、少しずつ量を増やしながら摂取する「経口免疫療法」にひと工夫加えたもので、多くの免疫応答細胞が分布する口腔粘膜を通じた減感作を目指す。

治療歴のあるHER2+転移乳がん、アベルマブ追加でPFS改善(AVIATOR/TBCRC045)/SABCS2023

 治療歴のあるHER2+転移乳がんに対して、標準治療である化学療法+トラスツズマブに、抗PD-L1抗体であるアベルマブを追加することで無増悪生存期間(PFS)が有意に改善することが示された。一方、化学療法+トラスツズマブ+アベルマブに、4-1BBアゴニストであるutomilumabを追加してもPFSの改善はみられなかった。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのAdrienne G. Waks氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。  本試験は、HER2+転移乳がんに対して、化学療法+トラスツズマブにアベルマブおよびutomilumabを併用した場合の有効性と安全性を検討した無作為化第II相試験である。

最新の制吐療法、何が変わった?「制吐薬適正使用ガイドライン」改訂

 『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版』が発刊された。本書は2015年10月【第2版】(Web最新版ver.2.2)を全面改訂したもので、書籍としては8年ぶりの改訂となる。悪心・嘔吐治療の基本は“過不足ない適切な発現予防を目指す”ことであることから、第3版では、がん薬物療法の催吐性リスクに応じた適切な最新の制吐療法を提示するのはもちろん、有用性が明確ではないまま行われている非薬物療法のエビデンスに基づいた評価、患者サポートとして医療現場で行うべき制吐対応などにも焦点が当てられている。今回、ガイドライン改訂ワーキンググループ委員長の青儀 健二郎氏(四国がんセンター乳腺外科 臨床研究推進部長)に主な改訂ポイントについて話を聞いた。

生後6ヵ月~4歳へのコロナワクチン、救急受診・入院予防に40%有効/CDC

 米国では2022年6月より、新型コロナウイルスの起源株に対する1価mRNAワクチンが、生後6ヵ月~4歳児に推奨となった。米国疾病予防管理センター(CDC)は、2022年7月~2023年9月における乳幼児への新型コロナワクチンの有効性を評価したところ、ワクチン未接種と比較すると、2回以上のコロナワクチン接種は、救急外来受診と入院の予防に40%有効であることが認められた。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年12月1日号に掲載された。

糖質制限or脂質制限、向いている食事療法を予測/京都医療センター

 米国糖尿病予防プログラム(DPP)やフィンランド糖尿病予防研究では低脂肪食が糖尿病に有効との報告がある一方で、糖質制限が減量に有効であるとの報告もある。それでは、目の前の患者さんにどのような食事療法を指導していけばいいのだろうか。  この問題を解決するために、坂根 直樹氏(京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室)らの研究グループは、PwCグループが開発した膵臓・肝臓・脂肪など臓器間のネットワークを含めたシミュレーションモデル(機序計算モデル)を用いて、糖尿病の食事療法の個別化分析を行った。PLoS One誌2023年11月30日の報告。

抗うつ薬治療抵抗性うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法~国内第II/III相ランダム化比較試験

 抗うつ薬への治療反応が不十分であることは、効果的なうつ病治療の妨げとなる。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者を対象に、ブレクスピプラゾール補助療法の投与量、有効性、安全性を評価するため、国内第II/III相ランダム化比較試験であるBLESS試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年11月7日号の報告。  BLESS試験は、8週間の単盲検期間では抗うつ薬治療で効果不十分であった日本人治療抵抗性うつ病患者を対象としたプラセボ対照ランダム化多施設共同並行群間第II/III相試験である。SSRI/SNRI治療で効果不十分なうつ病患者を対象に、6週間のブレクスピプラゾール1mg、2mgまたはプラセボの補助療法を行う群にランダムに割り付けられた。治療抵抗性うつ病患者の定義は、1~3の抗うつ薬治療では、ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)合計スコア14以上と効果不十分であった患者とした。主要エンドポイントは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアのベースラインからの変化とした。副次的エンドポイントは、MADRSによる治療反応、寛解率、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)スコアとした。安全性は、とくに抗精神病薬の有害事象に関して包括的に評価した。

パクスロビド投与後のCOVID-19再発リスクは高い?

 抗ウイルス薬のパクスロビド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル、日本での商品名パキロビッドパック)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化予防に有効ではあるが、その反面、再発リスクを著しく高める可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。パクスロビドを投与されたおよそ5人に1人で、そのようなウイルス学的なリバウンドが認められたという。米マサチューセッツ総合病院の感染症専門医であるMark Siedner氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に11月14日掲載された。

HER2+転移乳がんへのtucatinib+T-DM1がPFS改善、脳転移例にも有望(HER2CLIMB-02)/SABCS2023

 既治療のHER2陽性局所進行/転移乳がん患者に対する経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibとトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の併用が、T-DM1単独療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。米国・フレッド・ハッチンソンがん研究センターのSara A. Hurvitz氏が第III相HER2CLIMB-02試験の結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2023)で報告した。

投与時間短縮のペルツズマブ・トラスツズマブ配合皮下注、患者・医療者の使用感は/中外

 抗HER2ヒト化モノクローナル抗体のペルツズマブおよびトラスツズマブの配合皮下注製剤「フェスゴ配合皮下注IN(初回投与量)、同MA(維持投与量)」が11月22日に発売された。これを受けて11月30日、中外製薬は新製品発売説明会を開催。林 直輝氏(昭和大学医学部 乳腺外科)が登壇し、HER2陽性乳がん患者に対して実施された2つの臨床試験結果と現場での活用の可能性について講演した。  フェスゴはペルツズマブとトラスツズマブをそれぞれ固定用量で配合し、薬液の浸透吸収促進を目的としてボルヒアルロニダーゼアルファを配合した皮下注製剤。従来の静注製剤を続けて投与する場合、初回が約150分、2回目以降が60~150分かかるのに対し、フェスゴは初回が8分以上、2回目以降が5分以上に投与時間を短縮できる。

オンコマインDx、METエクソン14スキッピング非小細胞肺がんに対するテポチニブのコンパニオン診断として追加申請/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーサイエンティフィックは、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いたコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム(以下、オンコマインDx)」について、「テポチニブ塩酸塩水和物」のMET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対するコンパニオン診断システムとして、2023年12月4日付で厚生労働省に医療機器製造販売承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。  上記の一部変更が承認されると、オンコマインDxの判定補助対象は、非小細胞肺がんの7ドライバー遺伝子(BRAF、EGFR、HER2、ALK、ROS1、RET、MET)、甲状腺がんの1ドライバー遺伝子(RET)、甲状腺髄様がんの1ドライバー遺伝子(RET)となる。

統合失調症患者に対する心血管リスク最適化プログラム

 心血管疾患は、統合失調症患者の早期死亡の主な原因の1つである。関連する修正可能なリスク因子には、不健全なライフスタイル、薬剤性副作用、身体的併存疾患などが含まれる。スペイン・ビック大学のNuria Riera-Molist氏らは、統合失調症患者の心血管リスク(CVR)低下のための6ヵ月間にわたる多因子CVR介入の有効性を評価する目的で本研究を実施した。その結果、患者中心の多因子CVR介入は統合失調症患者の6ヵ月後のCVRを改善し、それは主に脂質プロファイルの改善によりもたらされていたという。Journal of Psychiatric Practice誌2023年11月1日号の報告。

座って過ごすことは眠っているよりも心臓の健康に悪い

 心臓の健康にとって、座って過ごすことほど悪いことはないことが、新たな研究で確認された。研究論文の筆頭著者である、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)スポーツ・運動・健康研究所のJoanna Blodgett氏は、「われわれの研究から得られた大きな収穫は、活動量を少し増やすだけでも心臓の健康に良い影響を与えることができるということと、その強度も重要だということだ」と述べている。Blodgett氏らの研究では、心臓の健康に最も効果的なのは、たとえ数分でも、座って過ごす時間をランニングや早歩きなどの心拍数と呼吸数を上げるような中等度から高強度の運動(moderate to vigorous physical activity;MVPA)に置き換えることであり、立っていることや眠っていることでさえ、座っているよりは良いことが示されたという。この研究結果は、「European Heart Journal」に11月10日掲載された。

早期TN乳がん術後化療にアテゾ追加、iDFSを改善せず中止(ALEXANDRA/IMpassion030)/SABCS2023

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術後補助療法として、標準的なアントラサイクリンおよびタキサンベースの化学療法にアテゾリズマブを追加した第III相ALEXANDRA/ IMpassion030試験の中間解析の結果、アテゾリズマブを上乗せしても無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善せず、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は増加したことを、ベルギー・Institut Jules BordetのMichail Ignatiadis氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。

コロナ・インフル同時迅速検査キットを発売/Meiji Seika・ロート

 Meiji Seika ファルマは12月5日付のプレスリリースにて、ロート製薬が10月13日に製造販売承認を取得した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)・インフルエンザウイルス抗原迅速検査キット「チェックMR-COV19+Flu」を発売したことを発表した。  本検査キットはイムノクロマト法によるもので、特別な測定機器を必要とせず、鼻咽頭ぬぐい液および鼻腔ぬぐい液中のSARS-CoV-2抗原、A型インフルエンザウイルス抗原およびB型インフルエンザウイルス抗原を同時検出することができる。1つのキットで15分(陽性の場合は3~15分)と、迅速かつ簡便に検査を行うことができ、診断時間の短縮と負担軽減につなげる。本製品の測定原理は金コロイドクロマト免疫測定法。有効期限は24ヵ月で、1パッケージに10テスト分を包装。  Meiji Seika ファルマは、ロート製薬と締結した販売提携契約に基づき、本製品の国内での流通、販売、プロモーションを行う。

ファイザーXBB.1.5対応コロナワクチン、流行中の各変異株に有効

 2023年9月に欧米諸国や日本で承認となったファイザーのオミクロン株XBB.1.5対応新型コロナワクチン(BNT162b2 XBB.1.5)の効果を検証するため、ドイツ・Hannover Medical SchoolのMetodi V Stankov氏らの研究チームは、本ワクチン30μgを接種した医療従事者53人について、接種から8~10日後の免疫応答を解析した。その結果、すべての接種者において抗スパイクIgG抗体が大幅に増加し、現在流行しているSARS-CoV-2の各系統に対する強力な中和反応が誘発されたことが示された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年11月20日号掲載の報告。

オミクロン株感染で脳が変化、認知機能に影響か

 新型コロナウイルスのオミクロン株による感染後急性期の脳への影響はわかっていない。今回、中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYanyao Du氏らが、オミクロン株感染後の男性患者における臨床症状、灰白質と皮質下核の変化を調べたところ、急性期に左楔前部と右後頭外側部の灰白質厚と、頭蓋内総容積に対する右海馬容積の割合が大幅に減少していたことがわかった。また、灰白質厚と皮質下核容積損傷が不安や認知機能と有意に関連することが示された。JAMA Network Open誌2023年11月30日号に掲載。

日本の大学病院の外来における睡眠薬の処方傾向

 日本では、不眠症治療のための1日当たりの睡眠薬の投与量が年々増加しており、睡眠薬治療への過度な依存が大きな問題となっている。久留米大学の加藤 隆郎氏らは、自院において、1年間で3種類以上の睡眠薬を減量・中止するために必要な要因の検討を試みた。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年11月9日号の報告。  次の2つの調査が実施された。調査1では、2013年1月~2019年3月に一般外来および精神科外来を受診したすべての患者の診療データをレトロスペクティブに調査し、3種類以上の睡眠薬の処方頻度を評価した。調査2では、2013年4月~2019年3月に精神科外来を複数回受診し、3種類以上の睡眠薬を処方されたすべての患者の診療データをレトロスペクティブに調査し、その後1年間の睡眠薬と向精神薬の処方変化を評価した。