医療一般|page:331

糖尿病・脂肪性肝炎の新たな発症機序の解明~国立国際医療研究センター

 肝臓での代謝は絶食時と摂食時で大きく変化するが、その生理的意義や調節機構、またその破綻がどのように種々の疾患の病態形成に寄与するのか、これまで十分解明されていなかった。今回、東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座 特任助教 笹子 敬洋氏、同糖尿病・生活習慣病予防講座 特任教授 門脇 孝氏、国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センター センター長 植木 浩二郎氏らのグループは、絶食・摂食で大きく変化する肝臓での小胞体ストレスとそれに対する応答に注目し、食事で発現誘導されるSdf2l1(stromal cell-derived factor 2 like 1)の発現低下が、糖尿病や脂肪性肝炎の発症や進行に関わることを明らかにした。2月27日、国立国際医療研究センターが発表した。Nature Communications誌に掲載予定。

がんマネジメントに有用な栄養療法とは?

 2019年2月14、15日の2日間にわたり、第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会が開催された。1日目のシンポジウム3「がんと栄養療法の実際-エビデンス?日常診療?」(司会:比企 直樹氏、鍋谷 圭宏氏)では、岡本 浩一氏(金沢大学消化器・腫瘍・再生外科)が「食道がん化学療法におけるCAWLと有害事象対策としての栄養支持療法」について講演。自施設での食道がん化学療法におけるがん関連体重減少(CAWL)・治療関連サルコペニア対策としての栄養支持療法について報告した。

Z薬の濫用や依存~欧州医薬品庁データ調査

 元来、zaleplon、ゾルピデム、ゾピクロンなどのZ薬は、依存性薬物であるベンゾジアゼピンの安全な代替薬として市販されいていたが、Z薬の濫用、依存、離脱などの可能性に関する臨床的懸念の報告が増加している。英国・ハートフォードシャー大学のFabrizio Schifano氏らは、EudraVigilance(EV)システムを用いて欧州医薬品庁(EMA)より提供された薬物有害反応(ADR)のデータセットを分析し、これらの問題点について評価を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年2月5日号の報告。

会員医師が感じる医師不足・偏在の問題

 2月15日に厚生労働省において「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)」が開催され、将来の医師数不足、診療科による医師数偏在に関する資料が公開された。CareNet.comでは、この発表をうけ、「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマに緊急アンケートを会員医師に行った。今回、その結果がまとまったのでお伝えする。  調査は、2019年2月20日にCareNet.comの医師会員を対象に、インターネット上で実施。回答者総数は340名。

非肥満で冠動脈疾患を有する2型糖尿病の血糖管理

 非肥満者の糖尿病はインスリン抵抗性よりインスリン分泌低下による可能性が高い。それゆえ、内因性もしくは外因性のインスリン供給(IP)治療が、インスリン抵抗性改善(IS)治療よりも有効かもしれないが、最適な戦略は不明のままである。今回、国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らは、非肥満で冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者の血糖コントロールについて検討したところ、IS治療のほうがIP治療より有益である可能性が示唆された。International Journal of Cardiology誌オンライン版2019年2月7日号に掲載。

日本におけるレビー小体型認知症の診断、治療に関する調査

 レビー小体型認知症(DLB)は、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を伴う進行性の認知症である。横浜市立大学の小田原 俊成氏らは、日本におけるDLB治療に関して、現在の臨床診断の状況調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年2月5日号の報告。  日本で認知症臨床に携わっている医師を対象に調査を行った。対象医師は、精神科医(P群)と神経内科・脳神経外科医(NS群)の2群に分けられた。DLBの診断と治療、とくにBPSD治療に関するアンケートを実施し、両群間の比較分析を行った。

中高年の歩数にポケモンGOが影響

 『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野 公宏氏らの研究で明らかになった。  現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2019年2月5日号掲載の報告。

EGFR変異陽性NSCLC1次治療の新たな選択肢ダコミチニブ

 ファイザー株式会社は、ダコミチニブの承認にあたり、本年(2019年)2月、都内で記者会見を開催した。その中で近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 中川 和彦氏と国立がん研究センター中央病院 先端医療科長/呼吸器内科 山本 昇氏がEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療とダコミチニブについて紹介した。  2000年時点のNSCLCの標準治療はプラチナ併用化学療法で、当時の全生存期間(OS)は約1年だった。昨年、オシメルチニブが1次治療薬に承認となったEGFR変異陽性NSCLCは、無増悪生存期間(PFS)でさえ19.1ヵ月1)となった。EGFR-TKI、化学療法と治療選択肢が増えるなか、「EGFR陽性NSCLCの今の問題は、治療シーケンスである」と、中川氏は述べる。

レビー小体型認知症のBPSD、対応のポイントは?

 2019年2月20日、大日本住友製薬主催により、レビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、その中で2つの講演が行われた。  初めに、小田原 俊成氏(横浜市立大学 保健管理センター教授・センター長)が、DLBの現状、認知機能障害、行動・心理症状(BPSD)の特徴について講演を行った。  現在、日本国内におけるDLBの推定患者数は、50~100万人程度とされている。しかし、類似疾患との鑑別が難しく、DLBと診断されていない患者も多く存在すると考えられている。実際に、臨床診断されるDLBの割合は4%程度だが、病理診断される割合は20%近いという報告もある。

皮膚がんの遠隔診断、その有効性は?

 遠隔医療のもたらすさまざまな効果が期待されているが、海外では一歩進んだ検討が行われているようだ。米国・カイザーパーマネンテのS. Marwaha氏らは、皮膚病変の診断に対する遠隔皮膚診断(テレダーマトロジー)と対面診断による有効性や有用性は十分に検討されていないとして、対面診断とテレダーマトロジーによる皮膚がんの診断について後ろ向きに検討。テレダーマトロジーのほうが皮膚がん検出力の向上、生検率低下、対面診断の減少において、対面診断よりも優れている可能性が示唆された。ただし、今回の検討では、各テレダーマトロジーのワークフロー遂行力の違い、紹介を受けた医師による患者選択で、バイアスが生じた可能性があった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2019年2月1日掲載の報告。

アリピプラゾール治療と精神医学的イベントリスク

 抗精神病薬で治療されている精神疾患患者に対するアリピプラゾール初回使用に関連した潜在的な精神医学的悪化を懸念する報告がいくつかあるが、とくに長期的なアリピプラゾール使用が、重篤な精神医学的イベントリスクを増大させるかは、よくわかっていなかった。カナダ・Jewish General HospitalのFrancois Montastruc氏らは、他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加(アリピプラゾール群)が、アリピプラゾール以外の抗精神病薬への切り替えまたは追加(非アリピプラゾール群)と比較し、重篤な精神医学的イベントと関連性が認められるかについて評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年1月30日号の報告。

インスリン治療、認知症リスクに関連か

 糖尿病は認知症の危険因子と報告されているが、糖尿病治療薬と認知症との関連についての研究は少なく結果も一貫していない。今回、インスリン、メトホルミン、スルホニル尿素(SU)類の使用と認知機能および認知症リスクとの関連について、イスラエル・ハイファ大学のGalit Weinstein氏らが5つのコホートの統合解析により検討した。その結果、インスリン使用と認知症発症リスクの増加および全般的認知機能の大きな低下との関連が示唆された。著者らは、「インスリン治療は、おそらく低血糖リスクがより高いことにより、有害な認知アウトカムの増加と関連する可能性がある」としている。PLOS ONE誌2019年2月15日号に掲載。

非浸潤性乳管がん、局所治療しない場合の進行・死亡リスク

 非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性の大多数が治療を受けるため、局所治療していない女性の浸潤性乳がんへの進行および死亡リスクは不明である。今回、米国・デューク大学メディカルセンターのMarc D. Ryser氏らの研究により、局所治療を受けていないDCIS患者の浸潤がん進行リスクは限られることが示唆された。また、今回の研究コホートはDCISと診断された患者の一般集団を代表するものではないが、高齢者や併存疾患の多い患者においてとくに過剰治療の可能性があることが示唆された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2019年2月13日号に掲載。

日本人学生のスマートフォン使用とうつ病リスク

 椙山女学園大学の西田 友子氏らは、高校生の男女ごとのスマートフォン使用とうつ病との関連性について評価を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年1月26日号の報告。  日本の15~19歳の高校生295人を対象に、自己管理質問票を用いて、横断的研究を実施した。うつ病は、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。 ・女性は、男性と比較し、1日のスマートフォン使用時間が長かった。

日本人の雇用形態と教育水準、LDL-Cに関連

 食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールにおける良好な関係は、最近の一連のコホート研究によって疑問視されている。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの岡見 雪子氏らは横断研究(INTERLIPID)を実施し、日本人における雇用形態と教育年数が、食事によるコレステロール摂取と血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)濃度との関係に、どのように関連するかを調査した。その結果、被雇用者ではなく教育水準の低い男性で、食事によるコレステロール摂取量の増加が血清LDL-C濃度の上昇と関連していた。また、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関が見られたことが明らかになった。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2019年2月1日号掲載の報告。

日本人の進行NSCLC患者に対するニボルマブ治療における転移臓器が治療奏効に与える影響

 これまで、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるニボルマブの効果予測因子として、臨床的に有意な転移部位についての詳細はわかっていなかった。今回、大阪国際がんセンターの田宮 基裕氏らにより、わが国の3施設において、2015年12月17日~2016年7月31日(フォロー期間は2017年3月31日まで)にニボルマブで治療された全症例が後ろ向きに抽出され、効果予測因子の検討が行われた。  その結果、ニボルマブによる治療を受けた進行NSCLC患者では、肝および肺への転移と全身状態(PS)不良の状態が、無増悪生存期間(PFS)中央値の短縮と関連していることが示唆された。PLoS ONE誌2018年2月22日号に掲載。

C型肝炎ウイルス感染症にエプクルーサ配合錠発売

 ギリアド・サイエンシズは、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の成人患者、および直接作用型抗ウイルス療法(DAA)の前治療歴を有する慢性肝炎又は代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の患者に対する1日1回投与の治療薬「エプクルーサ配合錠」(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル)を2月26日に発売した。  本剤は、核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソホスブビル(商品名:ソバルディ、2015年3月承認)とNS5A阻害作用を有する新有効成分ベルパタスビルを含有する新規配合剤。日本における非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の成人患者に対する最初の治療薬であり、また難治性患者に対して新たな治療選択肢を提供できることとなる。

セリチニブ、用法・用量変更で奏効率と安全性が向上/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、2019年2月21日、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの治療薬セリチニブ(商品名:ジカディア)について、用法・用量を「450mg、1日1回食後投与」に変更するための製造販売承認事項一部変更承認を取得した。  セリチニブの用法・用量は、これまで「750mg、1日1回空腹時投与」であったが、主な副作用である悪心、嘔吐、下痢といった消化器症状が、治療継続の課題となっていた。今回、用法・用量が「450mg、1日1回食後投与」に変更されたことで、このような消化器症状の低減が期待される。

重度の精神疾患患者における脂質異常症と抗精神病薬に関するメタ解析

 重度の精神疾患患者は、抗精神病薬の悪影響に関連している可能性のある代謝系の問題への罹患率やそれに伴う死亡率の上昇を来す。第2世代抗精神病薬(SGA)は、第1世代抗精神病薬(FGA)と比較し、脂質代謝異常とより関連が強いと考えられているが、このことに対するエビデンスは、システマティックレビューされていなかった。英国・East London NHS Foundation TrustのKurt Buhagiar氏らは、重度の精神疾患患者における脂質異常症リスクについて、SGAとFGAの評価を行った。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2019年1月24日号の報告。

血圧レベル別の脳卒中・冠動脈疾患死亡の生涯リスク~EPOCH-JAPAN

 生涯リスク(lifetime risk、以下LTR)は、生涯に対象疾患を罹患する確率であり、長期的な絶対リスクを示す。アジア人集団において、詳細な血圧分類別の脳卒中死亡および冠動脈疾患(coronary heart disease、以下CHD)死亡のLTRを算出した研究は存在しない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の個人レベルのデータを統合した大規模統合データベースEPOCH-JAPANを用いたことにより、血圧レベル別の脳卒中死亡およびCHD死亡のLTRが明らかになったことを、東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らが報告した。本研究で算出されたLTRは、とくに10年間の循環器疾患死亡率が低い若年の高血圧患者に対して、早期の生活習慣是正と降圧治療開始の動機付けに役立つだろう、と結論している。Hypertension誌2019年1月号に掲載。