医療一般|page:10

自分の飲酒量は仲間次第で変わる?

 飲酒量は仲間次第で変化するという研究結果が報告された。お酒をたくさん飲む人が身近にいる場合は自分が飲む量も多くなり、飲まない人がそばにいる場合は少なくなるという。  この研究は、アムステルダム大学(オランダ)のMaarten van den Ende氏らによるもので、結果の詳細は「Alcohol: Clinical and Experimental Research」に1月1日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「われわれの研究結果は、年齢にかかわりなく、周囲の人のつながりが個人の飲酒行動の形成に、極めて重要な役割を果たしていることを浮き彫りにしている」と話している。

毎日どのくらい歩くとうつ病予防に効果的か〜メタ解析

 1日の歩行は、心血管イベントや全死亡リスクを低下させ、保護的に作用することが、近年のエビデンスで報告されている。しかし、歩数に基づく健康アウトカムには、追加の推奨事項が含まれる可能性がある。スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのBruno Bizzozero-Peroni氏らは、一般成人における1日の歩数とうつ病との関連を総合的に評価した。JAMA Network Open誌2024年12月2日号の報告。  2024年5月18日までに公表された研究をPubMed、PsycINFO、Scopus、SPORTDiscus、Web of Scienceデータベースをシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。対象研究には、身体活動、1日の歩数、うつ病などに関連するキーワードで検索した観察研究を含めた。補足的な検索方法も適用した。研究データには、客観的に測定された1日の歩数、うつ病に関するデータを含めた。PRISMA、MOOSEガイドラインに従い、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。独立した2人のレビューアーにより、データを抽出した。プールされたエフェクトサイズ(相関係数、標準化平均差[SMD]、リスク比[RR])、95%信頼区間(CI)の推定には、Sidik-Jonkmanランダム効果モデルを用いた。

敗血症へのβ-ラクタム系薬+VCM、投与順序で予後に差はあるか?

 敗血症が疑われる患者への治療において、β-ラクタム系薬とバンコマイシン(VCM)の併用療法が広く用いられている。しかし、β-ラクタム系薬とVCMの投与順序による予後への影響は明らかになっていない。そこで、近藤 豊氏(順天堂大学大学院医学研究科 救急災害医学 教授)らの研究グループは、β-ラクタム系薬とVCMの併用による治療が行われた敗血症患者を対象として、投与順序の予後への影響を検討した。その結果、β-ラクタム系薬を先に投与した集団で、院内死亡率が低下することが示唆された。本研究結果は、Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2024年12月5日号に掲載された。

T1cN0M0のHER2+乳がんへの術前vs.術後補助療法、OSに差は?

 T1cN0M0のHER2+乳がん患者において、術前補助療法は術後補助療法と同等の全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)を示したことを、中国・ハルビン医科大学のXuelian Wang氏らが明らかにした。これまで、腫瘍径が小さく、リンパ節転移のないHER2+乳がん患者おける術前補助療法の術後補助療法に対する優位性については議論が続いていた。Cancer誌2025年1月1日号掲載の報告。  研究グループは、米国・Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースから、2010~20年に化学療法と手術を受けたT1cN0M0のHER2+乳がん患者のデータを抽出した。傾向スコアマッチングにより、術前補助療法群と術後補助療法群の背景因子が一致するコホートを作成した。術前補助療法群と術後補助療法群のOSとBCSSを、カプランマイヤー法とCox比例ハザードモデルによって解析した。さらに、ロジスティック回帰モデルを使用して、術前補助療法に対する病理学的完全奏効(pCR)の予測因子を探索した。

緑の豊かさと子どものテストの点数との関係

 並木道や緑豊かな公園は、都会の子どもの脳の働きを高めるようだ。米ユタ大学経済学教授のAlberto Garcia氏と同大学環境・経済・持続可能性学部のMichelle Lee氏は、米シカゴのトネリコの木の半数が害虫によって消失してから、同地域に住む3年生から8年生(日本での小学3年生から中学2年生に相当)の子どものテストの点数が低下したとする研究結果を明らかにした。詳細は、「Global Environmental Change」12月号に掲載された。  Garcia氏は、「トネリコの木を食害する虫が侵入・異常発生した地域では、似たような環境でも害虫による被害はない地域と比べて、子どものテストの点数が低下していたことが明らかになった」と話している。

上腕カフ式の家庭血圧測定により血圧が下がる/東北医科薬科大学ほか

 家庭での血圧自己測定の有用性に関する新たなエビデンスが報告された。日本高血圧学会による「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」策定のためのタスクフォースとして、東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室の佐藤倫広氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「Hypertension Research」に11月21日掲載された。上腕カフ式の血圧計で家庭血圧測定を行っている場合に、血圧値がより厳格に管理されることが確認されたという。  家庭血圧測定に関する有用性は主に日本から多くのエビデンスが発信されてきており、国内のガイドラインでは診察室血圧より家庭血圧を重視することが推奨され、海外のガイドラインもそのように変化してきている。しかし、以前に行われたメタ解析では、家庭血圧の測定のみでなく、遠隔医療などを並行して行った場合において、顕著な臨床効果を期待できると結論付けられている。佐藤氏らは今回、新たな研究報告も対象に含めたシステマティックレビューとメタ解析を行い、改めて家庭血圧測定の有用性を検討した。

NSAIDsとPPI併用で下部消化管出血リスク上昇か

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)使用者の上部消化管出血を予防し、消化性潰瘍や胃食道逆流症などの治療に広く使用されている。しかし複数の先行研究では、NSAIDs単独使用よりも、NSAIDsとPPIの併用のほうが下部消化管出血の発生率が高いことが指摘されていた。韓国・慶熙大学のMoonhyung Lee氏らは、実臨床での NSAIDs+PPI併用者とNSAIDs単独使用者間の下部消化管出血リスクを比較したところ、NSAIDs+PPI併用者のほうが下部消化管出血リスクが高いことが判明した。Gut and Liver誌オンライン版2025年1月3日号に掲載。

新生児マススクリーニングでみつかる長鎖脂肪酸代謝異常症/ウルトラジェニックス

 希少疾病の分野に特化し、多様な治療薬の研究・開発を行うウルトラジェニックスは、希少疾病啓発事業の一環として、「長鎖脂肪酸代謝異常症」をテーマにメディアセミナーを開催した。  長鎖脂肪酸代謝異常症は、運動や空腹などで体内のエネルギー需要が増加するような状況で突然発症することが多い疾患で、わが国では毎年数十人の新患が発生していると推定されている。セミナーでは、専門医からの疾患説明と患者会から患者の現状などについての講演が行われた。

自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別に有用な評価尺度は

 統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、別々の疾患として認識されているが、症状の類似性により鑑別診断が困難な場合が少なくない。昭和大学の中村 暖氏らは、統合失調症とASDの症状について類似点と相違点の特定、より有用で客観的な鑑別診断法の確立、統合失調症患者におけるASD特性を明らかにすることを目的に、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年12月18日号の報告。  対象は統合失調症患者40例(女性:13例、平均年齢:34±11歳)およびASD患者50例(女性:15例、平均年齢:34±8歳)。自閉症診断観察尺度第2版(ADOS-2)およびその他の臨床尺度を用いて評価を行った。

PM2.5が多いとマラソン選手の記録が低下する

 マラソン選手は良い記録を出すために、レース前やレース中に摂取する食べ物や飲み物に細心の注意を払う。しかし、新たな研究によると、レース時の大気汚染のレベルも、走行タイムを左右する因子の一つであることが明らかになった。大気汚染のレベルが高いほど、選手の走行タイムが悪化する傾向があるという。  この研究は、米ハーバード大学博士課程のElvira Fleury氏らによるもので、詳細は「Sports Medicine」に12月18日掲載された。論文の筆頭著者であるFleury氏は、「ハイレベルのマラソン選手は記録向上のために、トレーニング、栄養、シューズやウエア、競技コース、さらに天候まで考慮して大会に臨んでいる。しかしわれわれの研究から、パフォーマンスの最大化には、大気汚染の影響をも考慮すべきであることが示された」と述べている。

医師による身体活動量の評価は慢性疾患の予防につながる

 医師が患者の身体活動量について尋ねることは、慢性疾患の予防に役立つ可能性があるようだ。米アイオワ大学ヘルスケア医療センターの患者を対象にした調査結果から、中強度から高強度の身体活動を週に150分以上というガイドラインの推奨を満たしていた人では、高血圧や心疾患、糖尿病など19種類の慢性疾患の発症リスクが有意に低いことが示された。論文の上席著者である、アイオワ大学健康・人間生理学分野のLucas Carr氏らによるこの研究結果は、「Preventing Chronic Disease」1月号に掲載された。

透析中の骨粗鬆症患者へのデノスマブは心血管イベントリスクを上げる可能性/京都大

 透析患者の骨粗鬆症の治療では、腎排泄に頼らないデノスマブが使用されている。しかし、その有効性、安全性を他の骨粗鬆症治療薬と比較した大規模研究はこれまでなかった。そこで、桝田 崇一郎氏(京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野)らの研究グループは、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブは、ビスホスホネートと比較し、骨折リスクを低減させる一方で、心血管イベントのリスクを増加させる可能性があることを、電子レセプトデータを用いたコホート研究により明らかにした。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2025年1月7日オンライン版に掲載された。

MASLD患者の転帰、発症リスクに性差

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は世界的に増加傾向にあり、好ましくない肝臓や肝臓以外における転帰の主な原因となっている。米国のMASLD患者のデータを使用し、性別と肝臓および肝臓以外の転帰との関連性を調査した、米国・スタンフォード大学医療センターのTaotao Yan氏らによる研究がJAMA Network Open誌2024年12月4日号に掲載された。  研究者らは2007~22年のMerative MarketScanデータベースからMASLDの成人患者を特定し、傾向スコアマッチングを使用して男性/女性群のベースライン特性のバランスをとった。肝臓関連の転帰(肝硬変、肝代償不全、肝細胞がん[HCC])と肝臓以外の転帰(心血管系疾患[CVD]、慢性腎臓病[CKD]、肝臓以外の性別に関係ないがん)の発生率を推定し、性別ごとに比較した。

25種類の治療抵抗性うつ病治療の有効性比較〜ネットワークメタ解析

 オーストリア・ウィーン医科大学のJohan Saelens氏らは、治療抵抗性うつ病に対するさまざまな抗うつ薬治療を比較し、エビデンスに基づく治療選択を促進するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2024年12月30日号の報告。  2つ以上の抗うつ薬試験で治療反応が認められなかった成人うつ病を対象に実施されたランダム化比較試験(RCT)を対象研究とした。2023年4月13日までに公表された研究をPubMed、Cochrane Library、Embaseより検索した。すべてのRCTは、研究群が10例以上で構成され、双極性うつ病または精神病性うつ病患者は除外された。研究の質の評価には、Cochrane Risk of Bias Tool-2を用いた。主要アウトカムは、治療反応率とした。ランダム効果ネットワークメタ解析を用いてオッズ比(OR)を算出した。

タバコを1本吸うごとに寿命が22分縮む?

 紙巻きタバコ(以下、タバコ)を1本吸うごとに寿命が最大22分短縮する可能性のあることが、英国の喫煙者の死亡率データに基づく研究で明らかにされた。この結果は、1日に20本入りのタバコを1箱吸うと、寿命が7時間近く縮む可能性があることを示唆している。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のアルコール・タバコ研究グループのSarah Jackson氏らによるこの研究結果は、「Addiction」に12月29日掲載された。Jackson氏は、「喫煙者が失う時間は、大切な人々と健康な状態で過ごすことができるはずの時間だ」と述べている。

米アルツハイマー病協会が新たな診療ガイドラインを作成

 アルツハイマー病(AD)の専門家グループが、新たに包括的な診療ガイドラインを作成し、家庭医や脳専門医がADおよびAD関連疾患(ADRD)を最も効果的に検出する方法を提示した。この新ガイドラインは、「Alzheimer’s & Dementia」に12月23日掲載された。  このガイドラインでは、次に挙げる3つの一般的な基準に従い脳の健康状態を評価することを推奨している。それは、1)患者の全体的な認知障害のレベル、2)記憶、推論、言語、気分などに関わる特定の症状の有無、3)症状を引き起こしている可能性のある脳疾患の有無。

日本における片頭痛診療の現状、今求められることとは

 日本では、片頭痛を治療する医療機関および医師の専門分野における実際の治療パターンに関する調査は十分に行われていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、日本の片頭痛患者の実際の臨床診療および治療パターンを医療機関や医師の専門分野別に評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。PLoS One誌2024年12月19日号の報告。  2018年1月〜2023年6月のJMDC Incより匿名化された片頭痛患者のレセプトデータを収集した。片頭痛を治療する医療機関および医師の専門分野別に患者の特性や治療パターンを評価した。

乳がん診断後の手術遅延、サブタイプ別の死亡リスクへの影響

 乳がん診断後の手術遅延による乳がん特異的死亡率(BCSM)への影響はサブタイプにより異なり、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)患者でBCSMリスクの最も顕著な増加がみられたことが明らかになった。これまで、手術の遅れが死亡リスク増加と関連することが報告されていたが、サブタイプによる違いがあるかどうかは明らかになっていなかった。米国・Stephenson Cancer CenterのMacall Leslie Salewon氏らが実施した後ろ向きコホート研究の結果が、Breast Cancer Research誌2024年12月30日号に掲載された。

自己主導型のCBTはアトピー性皮膚炎の症状軽減に有効

 アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は、強いかゆみや皮疹、乾燥肌を特徴とする炎症性皮膚疾患である。AD患者では、皮膚をかく行為が不安や抑うつなどのメンタルヘルス問題と関連していることが示唆されている。こうした中、オンラインで患者自身が行う認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT)が、医師主導で行うCBTと同程度にADの症状を軽減する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のDorian Kern氏らによるこの研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月18日掲載された。  Kern氏は同研究所のニュースリリースの中で、「オンラインで患者自身が行うCBT(自己主導型CBT)は、医療リソースの消費を抑えながら患者の症状を軽減し、生活の質(QOL)を向上させる効果的な選択肢であることが明らかになった」と述べている。

コーヒーやお茶の摂取は頭頸部がんのリスクを下げる?

 朝の1杯のコーヒーや午後のお茶には、あるタイプのがんを予防する効果があるようだ。コーヒーやお茶の摂取は頭頸部がんのリスク低下と関連していることが、新たな研究で明らかになった。論文の上席著者である米ユタ大学医学部の疫学者Yuan-Chin Amy Lee氏によると、「カフェイン抜きのコーヒーでも、ある程度のプラスの影響があった」という。この研究の詳細は、「Cancer」に12月23日掲載された。  頭頸部がんとは、口腔、咽頭(上咽頭、中咽頭、下咽頭)、甲状腺など、目と脳を除く首から上の全て領域に発生するがんのこと。頭頸部がんは、患者数が世界で7番目に多いがんであり、2020年だけで新規患者数は約74万5,000人、死亡者数は36万4,000人に上るという。この研究でLee氏らは、14件の症例対象研究のデータを統合してコーヒーやお茶の摂取と頭頸部がんとの関連を検討した。解析対象者は、頭頸部がん患者9,548人と対照1万5,783人であった。