医療一般|page:116

DOAC内服AF患者の出血リスク、DOACスコアで回避可能か/ESC2023

 心房細動患者における出血リスクの評価には、HAS-BLEDスコアが多く用いられているが、このスコアはワルファリンを用いる患者を対象として開発されたものであり、その性能には限界がある。そこで、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らは直接経口抗凝固薬(DOAC)による出血リスクを予測する「DOACスコア」を開発・検証した。その結果、大出血リスクの判別能はDOACスコアがHAS-BLEDスコアよりも優れていた。本研究結果は、オランダ・アムステルダムで2023年8月25日~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology 2023(ESC2023、欧州心臓病学会)で発表され、Circulation誌オンライン版2023年8月25日号に同時掲載された。

スタチン開始後の効果、高齢者では大きい!?

 高齢になってからスタチンの使用を開始した患者では、若いときにスタチンの使用を開始した患者と比べて、同薬により得られるLDLコレステロール(LDL-C)の低減効果が大きい可能性のあることが、約8万3,000人のデンマーク人患者のデータ解析から明らかになった。デンマーク国立血清研究所のMarie Lund氏らによる研究で、詳細は、「Annals of Internal Medicine」に8月1日掲載された。Lund氏は、「スタチンによる治療が必要な高齢患者は、同薬による副作用のリスクを最小限に抑えるために、低強度のスタチンから開始すると良いのではないか」との見解を示している。  スタチンは安全な薬と考えられているが、一部の人に筋肉痛や血糖値の上昇などの問題を引き起こすことがある。副作用が生じる可能性は通常、スタチンの強度が高まるほど上昇し、また、高齢者では若い人よりも副作用が起きやすい。そのため、高齢患者にとっては、低強度のスタチンで治療を開始することが「好ましい選択肢」になり得るとLund氏は言う。ただし、その際には、高齢者の健康状態や、その後の心筋梗塞や脳卒中のリスク低減の必要性といった問題を考慮する必要があることも付け加えている。

NSAIDsがC. difficile感染症を悪化させる機序とは

 多くの人々に鎮痛薬や抗炎症薬として使用されている非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は、クロストリディオイデス・ディフィシル(C. difficile)への感染により生じる消化管感染症(CDI)を悪化させることが報告されている。こうした中、マウスを用いた研究でこの機序の解明につながる結果が得られたことを、米ペンシルベニア大学のJoshua Soto Ocana氏らのグループが発表した。詳細は、「Science Advances」に7月21日号に掲載された。  C. difficileは世界の抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌である。CDIは、軽度の下痢から複雑な感染症まで多様な症状を引き起こし、死亡の原因になることもある。

オリーブ油の摂取で認知症による死亡リスクが低下する?

 年を重ねても鋭敏な頭脳を保ちたい人は、マーガリンの代わりにオリーブ油を使うようにすると良いようだ。米国のヘルスケア専門家9万人以上を対象とした予備的研究から、オリーブ油の愛用者は、オリーブ油をほとんど摂取しない人に比べて、今後30年間で認知症により死亡するリスクが25%低いことが明らかになった。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAnne-Julie Tessier氏らによるこの研究の詳細は、米国栄養学会(ASN)の年次総会(Nutrition 2023、7月22〜25日、米ボストン)で発表された。

ファイザーXBB.1.5対応ワクチン、EMAで生後6ヵ月以上に推奨

 米国・Pfizer社とドイツ・BioNTech社は8月30日付のプレスリリースにて、両社のオミクロン株XBB.1.5対応1価の新型コロナワクチン「COMIRNATY Omicron XBB.1.5」について、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、5歳以上に対して、過去の新型コロナワクチンの接種歴の有無にかかわらず単回投与すること、および生後6ヵ月~4歳の小児に対して、過去の接種回数に応じて投与することを推奨したことを発表した。欧州委員会(EC)は本推奨を検討のうえ、承認について近く最終決定を下す予定。

がん患者の血栓症再発、エドキサバン12ヵ月投与が有効(ONCO DVT)/ESC2023

 京都大学の山下 侑吾氏らは、下腿限局型静脈血栓症(DVT)を有するがん患者に対してエドキサバンによる治療を行った場合、症候性の静脈血栓塞栓症(VTE)の再発またはVTE関連死の複合エンドポイントに関して、12ヵ月投与のほうが3ヵ月投与よりも優れていたことを明らかにした。本結果はオランダ・アムステルダムで8月25~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology(ESC、欧州心臓学会)のHot Line Sessionで報告され、Circulation誌オンライン版2023年8月28日号に同時掲載された。

コロナ後遺症、1年後は約半数、急性期から持続は16%/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関する多施設共同研究において、COVID-19に罹患した人の約16%が、感染から12ヵ月後も何らかの症状が持続していると報告した。また、感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人を含めると、感染から12ヵ月時点での有病率は約半数にも上った。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年8月11日号に掲載された。

退院後の統合失調症患者における経口剤と持効性注射剤の治療継続率

 退院後の統合失調症患者におけるその後の治療継続は、患者および医療関係者、医療システムにとって問題である。これまでの報告では、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)は、経口非定型抗精神病薬(OAA)と比較し、治療アドヒアランスの改善や再入院リスクの軽減に有効である可能性が示唆されている。米国・Janssen Scientific AffairsのCharmi Patel氏らは、米国におけるSGA-LAIとOAAで治療を開始した統合失調症患者における、アドヒアランスと再入院リスクの比較検討を行った。

50歳未満のがん、この10年で急速に増加したがんは?

 1990年代以降、世界の多くの地域において50歳未満で発症する早期発症がんが増加して世界的な問題となっているが、特定のがん種に限定されない早期発症がんの新たなデータは限られている。そこで、シンガポール・シンガポール国立大学のBenjamin Koh氏らによる米国の住民ベースのコホート研究の結果、2010年から2019年にかけて早期発症がんの罹患率は有意に増加し、とくに消化器がんは最も急速に増加していたことが明らかになった。JAMA Oncology誌2023年8月16日号掲載の報告。  研究グループは、米国における早期発症がんの変化を明らかにし、罹患率が急増しているがん種を調査するために住民ベースのコホート研究を行った。解析には、2010年1月1日~2019年12月31日の米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の17レジストリのデータを用い、人口10万人当たりの年齢標準化罹患率を算出した。年齢標準化罹患率の年間変化率(APC)はjoinpoint回帰法を用いて推定した。データ解析は2022年10月16日~2023年5月23日に行われた。

セファゾリンやダビガトラン、重大な副作用追加などで添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は8月29日、セファゾリンやダビガトランなど6つの医薬品の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  セファゾリンNa水和物(商品名:セファメジンα筋注用0.25g ほか)とセファゾリンNa(同:セファゾリンNa点滴静注用1gバッグ「オーツカ」 ほか)において、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の国内症例(7例[死亡0例])を評価した結果、本剤とアレルギー反応に伴う急性冠症候群との因果関係の否定できない国内症例が集積したことから、副作用の項に『重大な副作用』を新設した。

高齢がん患者、米国における診療の工夫

 マサチューセッツ総合病院緩和老年医療科の樋口 雅也氏がナビゲーターとなり、医師、薬剤師、看護師などさまざまな職種と意見交換をしながら臨床に直結する高齢者診療の知識を学べる「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」。がんと老年医学をテーマにした回では、ゲストとしてダートマス大学腫瘍内科の白井 敬祐氏が参加し、米国における高齢者のがん診療の実際について紹介した。

統合失調症患者の認知機能を含む症状に対するメトホルミンの影響~メタ解析

 統合失調症または統合失調感情障害患者の抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム(MetS)のマネジメントに対し、メトホルミンは優れた有効性を示す薬剤である。メトホルミンによる抗うつ効果や認知機能改善への影響も検討されているものの、これらの情報はシステマティックに評価されていなかった。イタリア・ミラノ大学のVera Battini氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における認知機能およびその他の症状に対するメトホルミンの影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症の認知機能やその他の症状に対し、メトホルミンのある程度の効果が確認された。メトホルミンの潜在的な薬理学的効果を明らかにするためには、適切な尺度を用いた長期にわたる研究が必要であるとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年7月12日号の報告。

にきびに対して最も効果的な治療法とは?

 生活の質(QOL)に大きな影響を与えかねないにきび(ざ瘡)に対する最も効果的な治療法は何なのだろうか。台大病院(台湾)のChung-Yen Huang氏らによる200件以上の研究を対象にしたレビューから、その答えは、経口イソトレチノイン(商品名アキュテイン)であることが明らかになった。この研究結果は、「Annals of Family Medicine」7/8月号に掲載された。  Huang氏らは、にきびに対する薬物療法に関する包括的な比較を行うために、論文データベースを用いて2022年2月までに発表された関連論文を検索し、221件の臨床試験を含む210件の研究論文(対象者の総計6万5,601人、平均年齢20.4歳)をレビュー対象として抽出。これらの研究で検討されていた37種類のにきび治療法を、総皮疹数、炎症性皮疹数、非炎症性皮疹数の減少率に基づき比較した。対象とした37種類のにきび治療法には、外用と経口の抗菌薬、外用レチノイド、経口イソトレチノイン、過酸化ベンゾイル(BPO)、アゼライン酸、ホルモン治療薬の単剤療法と併用療法が含まれていた。治療期間中央値は12週間だった。

コロナ禍の大学生のメンタルへの影響は2021年時点の4年生が最大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの大学生のメンタルヘルスへの影響を、学年別に検討した結果が報告された。2021年時点の4年生に、メンタルヘルスへの影響が最も強く現れていたという。岐阜大学保健管理センターの堀田亮氏らの研究によるもので、詳細は「Psychiatry Research」7月号に掲載された。  日常生活を急変させたCOVID-19パンデミックが、人々のメンタルヘルスに大きな影響を与えたことについて、多くの研究報告がなされている。ただし、大学生のメンタルヘルスへの影響を経時的かつ学年別に比較検討した研究は見られない。一方、岐阜大学では毎年、全学生を対象に健康状態のオンライン調査を実施している。堀田氏らは今回そのデータを用いて、大学2~4年生のパンデミックによるメンタルヘルスへの影響を詳細に検討した。

ソリリス、小児の全身型重症筋無力症患者に対する追加承認を取得/アレクシオン

 アレクシオンファーマは、ソリリス点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ[遺伝子組換え]、以下「ソリリス」)が日本において、免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)または血液浄化療法(PLEX)による症状の管理が困難な抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の全身型重症筋無力症(gMG)の小児患者の治療に対する用法および用量の追加承認を、8月23日付で取得したと発表した。  gMGは、筋機能および重度の筋力の低下を特徴とする希少な自己免疫疾患である。gMG患者の80%は抗AChR抗体陽性であり、神経細胞と筋肉の接着部である神経筋接合部(NMJ)のシグナル受容体に特異的に結合する自己抗体(抗AChR抗体)を産生する。この結合は、感染に対する身体の防御に不可欠な補体系を活性化し、免疫システムによるNMJの破壊が引き起こされる。これにより炎症が起こり、脳と筋肉との情報伝達の遮断につながる。gMGはどの年齢でも起こりえるが、最も一般的には40歳以下の女性および60歳以上の男性にみられる。初期症状には、構音障害、複視、眼瞼下垂、バランスの喪失などがあり、病気が進行すると、嚥下障害、息苦しさ、極度の疲労、呼吸不全など、より重篤な症状につながる可能性がある。

オラパリブ、アビラテロンとの併用で、BRCA変異陽性去勢抵抗性前立腺がんに承認/AZ・MSD

 アストラゼネカとMSDは2023年8月23日、「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」の適応症において、オラパリブ(商品名:リムパーザ)とアビラテロンおよびプレドニゾロンとの併用療法が承認されたことを発表した。  この承認は、BRCA遺伝子変異(BRCAm)を有する去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者において、オラパリブとアビラテロンの併用療法が、アビラテロン単独療法と比較して、画像診断による無増悪生存期間(ハザード比[HR]:0.23、95%信頼区間[CI]:0.12~0.43)および全生存期間(HR:0.39、95%CI:0.16~0.86)のいずれにおいても臨床的に意義のある延長を示した第III相PROpel試験のサブグループ解析に基づくもの。

日本人成人強迫症患者におけるADHD併発の影響

 これまでの研究において、小児および青年における強迫症と注意欠如多動症(ADHD)との関連が報告されている。しかし、成人における強迫症とADHDとの生涯併発率との関連を調査した研究は、ほとんどなかった。兵庫医科大学の宮内 雅弘氏らは、日本人成人強迫症患者におけるADHDの併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した。Comprehensive Psychiatry誌2023年8月号の報告

中等症~重症の尋常性乾癬へのリサンキズマブ、5年追跡結果

 中等症~重症の尋常性乾癬患者に対するリサンキズマブ治療の長期安全性と有効性が報告された。最長5年の継続投与の忍容性は良好であり、持続的かつ高い有効性が示された。ベルギー・Alliance Clinical Research and Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らが、進行中の第III相非盲検延長試験「LIMMitless試験」の中間解析の結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2023年8月6日号で報告した。乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患で、長期にわたる治療が必要になることが多い。リサンキズマブはヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤で、IL-23のp19サブユニットに結合し、IL-23の作用を中和することで乾癬による皮膚症状や関節炎などを改善する。

ファイザーとモデルナ、高齢者により安全なワクチンはどっち?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチンの安全性と有効性は、モデルナ社製ワクチンでもファイザー社製ワクチンでも高いとされている。しかし、高齢者におけるワクチン接種後の有害事象の発生という点では、軍配はモデルナ社製ワクチンに上がるとする研究結果が報告された。米ブラウン大学公衆衛生大学院、老年学・ヘルスケア研究センターのDaniel Harris氏らが米国立老化研究所の資金提供を受けて実施した研究で、詳細は、「JAMA Network Open」に8月2日掲載された。  Harris氏は、「COVID-19にまつわる有害事象の発生リスクは、新型コロナウイルスに自然感染した場合の方が、mRNAワクチンを接種した場合よりもはるかに高い。しかし、世界人口の70%以上が何らかのCOVID-19ワクチンを接種した今となっては、ワクチンの供給についてさほど心配する必要はない」と説明する。そして、現時点で必要とされているのは、どのワクチンを接種するかを決める際の判断材料となる、ワクチンの安全性と有効性に関する詳細な情報だと強調する。

心房・心室の期外収縮は心血管イベントと関連

 心血管疾患を発症していなくても、ウェアラブル心電計で心室性期外収縮(PVC)または心房性期外収縮(PAC)が検出された人では、心房細動および心不全のリスクが高いという研究結果が、「European Heart Journal - Digital Health」3月号に掲載された論文で明らかにされた。  英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichele Orini氏らは、心血管疾患のないUKバイオバンクの参加者5万4,016例〔UKB-1コホート、年齢中央値58歳(四分位範囲50~63)、女性54%〕を対象に、PVCまたはPACと心血管アウトカムとの関連を検討する研究を実施した。