医療一般|page:116

中高年の睡眠時間とうつ病リスクとの関係~用量反応メタ解析

 中国・北京中医薬大学のXin-Lin Li氏らは、中年および高齢者における夜間の睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を調査するため、本研究を実施した。その結果、中高年のうつ病リスクが最も低い夜間の睡眠時間は7時間であり、睡眠時間がそれより長くても短くても、うつ病リスクが高まる可能性が示唆された。Frontiers in Physiology誌2023年3月2日号の報告。  2022年7月31日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、CNKI、VIP、Wanfangデータナレッジサービスプラットフォームより検索した。対象には、夜間の睡眠時間とうつ病との関連を評価したコホート研究およびケースコントロール研究を含めた。研究の質の評価には、Newcastle-Ottawa scaleを用いた。2人の研究者により、データ抽出と品質評価を行った。睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を評価するため、制限付き3次スプライン(RCS)および一般化最小二乗法(GLS)を用いた。推定エフェクトサイズを分析するため、Stata 12.0を用いて、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

HER2低発現進行乳がんへのT-DXd、ER低発現でもPFS・OS延長(DESTINY-Breast04)/ESMO BREAST 2023

 第III相DESTINY-Breast04試験のサブグループ解析の結果、HER2低発現で、エストロゲン受容体(ER)低発現の切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が医師選択化学療法(TPC)よりも無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、その結果はER陰性患者でも同様であったことを、英国・エディンバラ大学のDavid A. Cameron氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法が単剤と比べてPFS延長(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは、2023年5月18日付のプレスリリースにおいて、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の国際共同第III相無作為化比較試験(FLAURA2試験)の結果を発表した。EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブと化学療法の併用は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。

コロナ禍のリモートワーク、医師からは「非効率」の声が多数

 新型コロナウイルス感染症の流行により、世界中の医療機関で急速にリモートワークが導入された。それは医療現場の生産性、スタッフの健康、コミュニケーションにどのような影響をもたらしたのか。カナダ・トロント大学医療政策管理評価研究所のChristopher McChesney氏らによる研究結果が、JCO oncology practice誌オンライン版2023年2月22日号に掲載された。  研究者らは2021年6月~8月、トロントの大規模がんセンターであるPrincess Margaret Cancer Centreにおいて、COVID-19パンデミック時に1回でもリモートワークを行ったスタッフに対してメールで調査票を配布し、匿名で回答を得た。

電気自動車の高出力充電も心臓デバイスに影響なし

 近年、電気自動車が急速に普及し、その充電所要時間を短縮するために高出力充電器が普及してきているが、それらは心臓デバイスが埋め込まれている患者にとって、安全なのだろうか? この疑問に対する一つの答えが、欧州不整脈協会年次総会(EHRA2023、4月16~18日、スペイン・バルセロナ)で報告されるとともに、欧州心臓病学会(ESC)発行の「EP Europace」に論文が掲載された。ペースメーカーや除細動器を使用している人に対しても、高出力充電器の安全性は高いという。ただし、念のために、充電ケーブルを心臓デバイスの位置に密着させない方が良いとのことだ。

早期TN乳がん、術前後のアテゾリズマブ追加でEFS・DFS・OS改善(IMpassion031)/ESMO BREAST 2023

 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおける術前化学療法へのアテゾリズマブ追加および術後のアテゾリズマブ投与の有用性を検討した第III相IMpassion031試験の最終解析で、副次評価項目である無イベント生存期間(EFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の改善が示された。また探索的解析から、手術時に病理学的完全奏効(pCR)が得られた患者は予後良好なこと、pCRが得られず血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が残存していた患者は予後不良なことが示された。ブラジル・Hospital São Lucas da PUCRSのCarlos H. Barrios氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

男性の平均寿命、市区町村で10年以上の差/厚労省

 厚生労働省は5月12日、「令和2年市区町村別生命表」を発表した。市区町村別生命表は、死亡状況を市区町村単位で比較分析するため、国勢調査による日本人人口(確定数)と人口動態統計(確定数)による日本における日本人の死亡数、出生数を基に、2000年(平成12年)から5年(国勢調査年)ごとに作成し、今回が5回目となる。本結果によると、平均寿命が最も長い市区町村は、男女ともに神奈川県川崎市麻生区で、男性84.0年、女性89.2年であった。一方、平均寿命が最も短かったのは、男女ともに大阪府大阪市西成区で、男性73.2年、女性84.9年であった。平均寿命の最も長い市区町村と最も短い市区町村との差は、男性10.8年、女性4.2年であった。

新型コロナとがん併発、死亡リスクに性差はあるか

 がん患者と非がん患者のCOVID-19による死亡リスクを比較した研究はあるが、そこに性差はあるのか。米国・南カリフォルニア大学・産婦人科腫瘍部門の松尾 高司氏らによる大規模コホート研究の結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2023年4月27日号に掲載された。  研究者らは48州およびコロンビア特別区の参加病院によるHealthcare Cost and Utilization ProjectのNational Inpatient Sample(米国人口の95%以上の退院データをカバー)を用い、2020年4月~12月にCOVID-19感染の診断を受けて入院した患者を、世界保健機関(WHO)の分類コードによって特定した。データ解析は2022年11月~2023年1月にかけて行い、人口特性、併存疾患、および病院パラメータで層別化したうえで性別、がん種別にCOVID-19院内症例の死亡率を評価した。

リアルワールドにおけるフレマネズマブの長期有用性~FRIEND2試験

 イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、高頻度の反復性片頭痛(HFEM:1ヵ月当たりの片頭痛日数8日以上)または慢性片頭痛(CM:1ヵ月当たりの頭痛日数15日以上)患者を対象に、フレマネズマブの長期(24週間)有効性、安全性、忍容性の評価を実施した。その結果、フレマネズマブは、過去に複数の片頭痛の予防的治療に奏効しなかったHFEMおよびCM患者に対し早期かつ持続的な有効性を示し、安全性および忍容性プロファイルも良好であることが確認された。The Journal of Headache and Pain誌2023年3月23日号の報告。

ユニバーサルインフルエンザワクチンの開発に向けて一歩前進

 あらゆるインフルエンザウイルスに有効な「ユニバーサルインフルエンザワクチン」の開発に向けて、研究が前進している。ユニバーサルインフルエンザワクチンは、将来のインフルエンザのパンデミックと戦う武器になる可能性を秘めている。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)ワクチン研究センターのSarah Andrews氏らは、第1相臨床試験において、実験段階にあるインフルエンザワクチンによってさまざまな種類のA型インフルエンザウイルス株に対して交差反応性を示す抗体が誘導されたことを確認。その詳細を、「Science Translational Medicine」4月19日号に発表した。

コロナワクチンの有効性、40試験のメタ解析結果

 将来の第9波到来を見越した新型コロナ対策として、これまでのブースター接種のタイミングや接種用量などを評価しておく必要がある。伊・Fondazione Bruno Kessler(FBK)のFrancesco Menegale氏らはワクチンの有効性(VE)の経時的変化を数学的に説明できれば、流行時に応用できる可能性があると考え、新型コロナウイルスのデルタ株およびオミクロン株に対するVEとして、VEの半減期や効果減退率に関する調査を実施した。その結果、ワクチン初回接種とブースター接種後の時間経過とともにVEが急速に低下することを示唆した。JAMA Network Open誌2023年5月3日号掲載の報告。

間質性肺炎合併肺癌の薬物療法、改訂GLの推奨は?/日本呼吸器学会

 間質性肺炎(IP)には肺癌が合併することが多く、IP合併肺癌に対する治療は急性増悪を引き起こすことが問題になる。近年、肺癌の薬物療法は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が主流となり、IP合併肺癌に対する薬物療法について、さまざまな検討がなされている。2023年4月に改訂された特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)では、これらのエビデンスを基に、合併肺癌に関して新たに3つのCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、合計6つとなった。合併肺癌に関するCQと関連するエビデンスについて、岸 一馬氏(東邦大学医学部内科学講座 呼吸器内科学分野 教授)が第63回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。

アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤の安全性~ピボタル試験

 アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤960mg(Ari 2MRTU 960)は、2ヵ月ごとに臀部筋投与を行う新たな長時間作用型注射剤の抗精神病薬であり、現在、統合失調症および双極I型障害の治療に対する研究が実施されている。米国・大塚ファーマシューティカル D&CのMatthew Harlin氏らは、統合失調症または双極I型障害の成人患者に対するAri 2MRTU 960の安全性および忍容性を評価し、同薬剤とアリピプラゾール月1回製剤400mg(AOM 400)の血中濃度の類似性を調査した。その結果、統合失調症または双極I型障害の成人患者において、Ari 2MRTU 960は良好な忍容性が認められ、AOM 400と同等の安全性プロファイルを有していることが確認された。CNS Drugs誌2023年4月号の報告。

4つの症状に要注意!50歳未満の大腸がんの初期症状

 近年、50歳未満で発症する大腸がん(早期発症大腸がん)が世界的に急増している。また、早期発症大腸がんは診断が遅れることが多く、診断時には進行していることも多い。そこで、米国・ワシントン大学セントルイス校のCassandra D. L. Fritz氏らは、ケースコントロール研究を実施し、早期発症大腸がんに関連する徴候・症状を検討した。その結果、直腸出血、鉄欠乏性貧血、下痢、腹痛を早期に発見することで、早期発症大腸がんの早期発見と適時診断につながる可能性が示された。本研究結果は、Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2023年5月4日号で報告された。

補完代替医療を利用している2型糖尿病患者は健康関連QOLが低い

 通院中の2型糖尿病患者の4割弱が何らかの補完代替医療を利用しており、利用者は非利用者に比べて健康関連QOLが有意に低いという調査結果が報告された。香川大学医学部衛生学教室の森喜郎氏らの研究によるもので、詳細は「Epidemiologia」に1月20日掲載された。  補完代替医療(complementary and alternative medicine;CAM)は、標準的な現代医療と合わせて、または単独で実施される、非標準的な医療のこと。具体的には、健康食品やサプリメント、マッサージ、アロマセラピー、ヨガ、処方によらない漢方、鍼灸、温熱療法、音楽療法、森林療法などが該当し、一般的に医師の判断ではなく患者自身の意思によって利用される。

進行TN乳がんへのペムブロリズマブ+化療、臨床的有用性が得られ化療中止した例やimAE発現例でも有効(KEYNOTE-355)/ESMO BREAST 2023

 手術不能な局所再発または転移・再発トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療においてペムブロリズマブ+化学療法をプラセボ+化学療法と比較した第III相KEYNOTE-355試験の探索的解析の結果、ペムブロリズマブ+化学療法により臨床的有用性が得られた患者でペムブロリズマブの最終投与前に化学療法を中止した患者、また免疫介在性有害事象(imAE)発現患者において、CPSにかかわらず、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善したことが示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center のHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

FDA、AD型認知症に伴う行動障害へのブレクスピプラゾールを承認/大塚

 大塚製薬とH.ルンドベックA/Sは5月11日、同社の抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)のアルツハイマー(AD)型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の治療における効能追加の承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得したことを発表した。今回の承認により、本剤は米国において本適応を有する初めての抗精神病薬となる。なお本剤について、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)による優先審査が認められていた。  ブレクスピプラゾールは、2015年にFDAが「成人の大うつ病補助療法」および「成人の統合失調症」の2つの効能で承認し、現在、統合失調症治療薬として約60の国と地域で使用されている。

コロナ罹患の医療者、療養期間5日では短過ぎる?/感染症学会・化学療法学会

 5月8日の新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、罹患者の療養期間について、これまで有症状者は発症日から7日間経過し、症状が軽快し24時間経過した場合に解除可能であったものが、5日間まで短縮された。しかし、とくに免疫不全者のいる医療機関では院内感染予防のため、罹患した職員の就業可能日について慎重な検討が行われている。大阪医科薬科大学病院感染対策室の浮村 聡氏らの研究チームは、新型コロナに罹患した医療従事者を対象に、発症もしくは検査陽性から7日目に定量PCR検査を実施し、Ct値でウイルスの感染力を評価し、自宅療養期間の妥当性を検証した。4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて浮村氏が発表した。

夜勤と認知症リスク~UK Biobankの縦断的研究

 中国・Jinan University First Affiliated HospitalのYitong Ling氏らは、夜勤労働とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症との関連性を調査し、夜勤労働の影響およびアルツハイマー病に対する遺伝的感受性を評価した。その結果、常に夜勤をしている労働者では、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症リスクが高いことが示唆された。また、アルツハイマー病の発症リスクは、アルツハイマー病の遺伝的リスクスコア(GRS)の違いにかかわらず、常に夜勤をしている労働者で高いことが報告された。Journal of Neurology誌オンライン版2023年4月6日号の報告。

術後せん妄予防にメラトニン投与が有望~メタ解析

 術後せん妄は、死亡率に影響を及ぼす問題である。その多くは予防可能であり、予防薬としてメラトニン投与が有望であるといわれている。英国・Bristol Royal InfirmaryのJonathan Barnes氏らは、術後せん妄の予防におけるメラトニンの有効性に関する最新のエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、メラトニンは、成人の術後せん妄発生率を低下させる可能性が示唆された。BMJ Open誌2023年3月29日号の報告。