医療一般|page:35

完全切除NSCLCへのデュルバルマブ、第III相試験結果(BR.31)/ESMO2024

 抗PD-L1抗体デュルバルマブは、切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法後の地固め療法、切除可能なStageII~IIIB期NSCLCの周術期治療において有効性が示されている。そこで、完全切除NSCLC患者の術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性を検討することを目的として、国際共同第III相無作為化比較試験「BR.31試験」が実施された。本試験の結果、完全切除NSCLCの術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性は示されなかった。本結果は、カナダ・オタワ大学のGlenwood Goss氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。

腎ドナーの死亡リスク、過去最低に

 腎臓提供者(ドナー)が死亡するリスクは、これまでになく低下していることが新たな研究で明らかになった。腎ドナーの死亡率はすでに10年前から低かったが、現在では、さらにその半分以下になっていることが示されたという。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部Center for Surgical and Transplant Applied Research Quantitative CoreのAllan Massie氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月28日掲載された。  臓器調達・移植ネットワークによれば、毎年およそ6,000人の米国人が腎臓の提供を志願している。Massie氏らは今回、1993年から2022年までの生体腎ドナーに関するデータを用いて、腎臓提供後90日以内のドナー死亡率を算出した。データは1993~2002年、2003~2012年、2013~2022年の3つの期間に分類して解析した。

転移を有する去勢抵抗性前立腺がんへのカボザンチニブ+アテゾリズマブ、OS最終結果(CONTACT-02)/ESMO2024

 新規ホルモン療法による1回の治療歴があり、転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対し、カボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法は、2剤目の新規ホルモン療法と比較して全生存期間(OS)について良好な傾向がみられたものの(ハザード比[HR]:0.89)、統計学的有意差は確認されなかった。米国・ユタ大学のNeeraj Agarwal氏が、日本を含む国際共同第III相CONTACT-02試験のOS最終解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。  本試験については、主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)について、2剤目の新規ホルモン療法群と比較してカボザンチニブ+アテゾリズマブ群で有意に延長したことがすでに報告されている(HR:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.84、p=0.0007)。

小児のPTSDに対する心理療法でトラウマの影響が軽減

 小児および青年における心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するトラウマ関連のネガティブな影響の評価の重要性が、これまでの研究で示唆されている。PTSDの認知モデルでは、治療メカニズムがこれらの評価の軽減に有用であるといわれている。英国・イースト・アングリア大学のCharlotte Smith氏らは、PTSDに対する心理療法が、小児および青年のトラウマ関連のネガティブな評価をどの程度軽減するかを調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Behaviour Research and Therapy誌2024年11月号の報告。  2022年12月11〜12日に、4つのデータベース(PsycINFO、Medline Complete、CINAHL Complete、PTSDpubs)より検索を行った。バイアスリスクを評価するため、ROB-2評価ツールを用いた。

T-DXdによる遅発期・延長期の悪心・嘔吐抑制にオランザピン6日間併用が有効(ERICA)/ESMO2024

 HER2陽性/低発現の転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)治療による遅発期および延長期の悪心・嘔吐を、オランザピン6日間投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの併用が抑制する可能性が、日本で実施された多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第II相比較試験(ERICA)で示唆された。昭和大学の酒井 瞳氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表し、Annals of Oncology誌オンライン版に同時掲載された。

EGFR陽性NSCLCへのamivantamab+lazertinib、耐性変異の内訳は?(MARIPOSA)/ESMO2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のlazertinibの併用療法は、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」で報告されている。EGFR-TKIに対する耐性変異の主なものは、EGFR遺伝子変異やMET遺伝子増幅であるが、amivantamab+lazertinibの耐性変異に関する詳細は明らかになっていなかった。そこで、MARIPOSA試験におけるamivantamab+lazertinibの耐性変異に関する解析が実施された。フランス・パリ・サクレー大学のBenjamin Besse氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で本結果を発表した。

週末の寝だめは心臓病リスクを低下させるか?

 ウィークデーの睡眠不足を週末に補う「キャッチアップ睡眠」は、心臓病のリスクを最大20%低下させる可能性のあることが、UKバイオバンク参加者9万人以上を対象にした研究で明らかになった。阜外病院(中国)の循環器専門家であるYanjun Song氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。  睡眠不足に悩まされている人は、休みの日の朝、普段より遅くまで寝て睡眠負債の影響を取り除こうとするものだ。しかし、このようなキャッチアップ睡眠が心臓の健康に役立つのかどうかについては明らかになっていない。

フレイル女性では台所で過ごす時間が長いほど食生活が健康的

 高齢の日本人女性を対象に行われた研究から、台所で過ごす時間が長いほど健康的な食生活を送っていて、この関連はフレイルの場合により顕著であることが分かった。高崎健康福祉大学、および、お茶の水女子大学に所属する佐藤清香氏らが行った横断研究の結果であり、詳細は「Journal of Nutrition Education and Behavior」に7月20日掲載された。  フレイルは、「加齢により心身が老い衰えた状態」であり、健康な状態と要介護状態の中間のこと。フレイルを早期に発見して栄養不良や運動不足に気を付けることで、フレイルが改善される可能性がある。フレイルの初期には、台所で行われる調理作業の支障の発生という変化が生じやすいことが報告されており、調理に手を掛けられなくなることは栄養の偏りにつながる可能性がある。また、台所での作業は身体活動の良い機会でもある。そのため、台所で過ごす時間の減少を見いだすことは、フレイルの進行抑止につながる可能性がある。これらを背景として佐藤氏らは、高齢女性が台所で過ごす時間と健康的な食事を取る頻度との関係を調査し、その関係にフレイルが及ぼす影響を検討した。

不眠症と心血管リスクとの関連~メタ解析

 不眠症と心血管疾患(CVD)との関連性は、観察研究により示唆されているが、その原因やメカニズムは明らかになっていない。中国・The First Affiliated Hospital of Xinxiang Medical UniversityのXuejiao Zhang氏らは、不眠症とCVDの潜在的な因果関係を調査するため、システマティックメタレビューおよび観察研究のメタ解析とメンデルランダム化(MR)研究を組み合わせて分析を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2024年8月21日号の報告。  2023年7月11日までに公表された英語論文をPubMed、Web of Science、Embaseより検索した。独立した2人の査読者により論文をスクリーニングし、潜在的なバイアスを最小限に抑えた。観察研究のメタ解析とMR研究により、不眠症と冠動脈疾患(CAD)、心房細動(AF)、心不全(HF)、心筋梗塞(MI)、高血圧(HTN)、脳卒中との関連性を評価した現在のエビデンスをまとめた。

ALK陽性NSCLCにおける術後アレクチニブ、安全性の評価は?(ALINA)/WCLC2024

 切除可能なALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相試験「ALINA試験」では、術後補助療法としてアレクチニブを用いた場合、プラチナベースの化学療法を用いた場合と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善したことが報告されている。この結果を基に、本邦でもアレクチニブの術後補助療法での使用が承認されているが、ALINA試験におけるアレクチニブの用量は600mg×2/日であり、本邦における進行・再発時の使用および術後補助療法の承認用量とは異なっている。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)がALINA試験の安全性について詳細データを発表した。

体重増加による血管への悪影響、年齢で異なる

 歳とともに体重が増えることによる血管への悪影響は60歳未満で顕著であり、60歳を超えると有意なリスク因子でなくなる可能性を示唆するデータが報告された。名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科の田野翔氏、小谷友美氏らの研究結果であり、詳細は「Preventive Medicine Reports」7月号に掲載された。  BMIで評価される体重の増加が、動脈硬化性疾患のリスク因子であることは広く知られている。しかし、体重増加の影響力は人によって異なり、体重管理により大きなメリットを得られる集団の特徴は明らかでない。田野氏らは、動脈硬化の指標である心臓足首血管指数(CAVI)とBMIの変化との関連を検討することで、体重増加の影響が大きい集団の特定を試みた。

子どもの成績向上には知能だけでなく非認知能力も必要

 子どもが学業で良い成績を収めるために重要なのは知能だけではないことが、英ロンドン大学クイーン・メアリー校心理学分野のMargherita Malanchini氏らの研究で示された。良い成績を収めるためには、知能に加えて意欲や自己管理能力などの非認知能力も知能と同じくらい重要であることが、遺伝的データで示されたという。この研究結果は、「Nature Human Behaviour」に8月26日掲載された。  Malanchini氏は、「われわれの研究は、知能こそが優れた学業成績の主な要因であるとする長年の仮説に疑問を投げかけるものだ」と言う。その上で、「われわれは、根性や忍耐力、学問への関心、学ぶことに対する価値観などの非認知能力が優れた学業成績を予測する重要な因子であること、さらに、その影響力は、時の経過とともに徐々に強くなることを示す説得力のあるエビデンスを得た」と付け加えている。

片頭痛は最初の兆候が現れたときのケアで抑制可能か

 片頭痛が始まる前の最初の兆候(プロドローム)が現れた時点で治療薬のubrogepantを使用すると、患者はほとんど症状を感じることなく普段通りの生活を送れる可能性のあることが、新たな臨床試験で明らかになった。Ubrogepantは、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide;CGRP)受容体に結合し、痛みの伝達に重要な役割を果たしているCGRPを遮断することにより効果を発揮する。米アルバート・アインシュタイン医科大学のRichard Lipton氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月28日掲載された。

騒音曝露は心臓の健康に影響を及ぼし心筋梗塞後のMACEリスクを高める

 ドイツとフランスの住民を対象にした2件の研究から、都会の騒音は心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性のあることが明らかになった。これらの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。  1件目の研究は、ブレーメン心臓血管研究所(ドイツ)のHatim Kerniss氏らが、急性心筋梗塞(MI)によりブレーメン市の心臓センターに入院した50歳以下の患者430人を対象に実施したもの。研究グループが対象者の居住地の騒音レベルを調べたところ、これらの対象者は、同じ地域に居住する一般住民よりも高いレベルの騒音に曝露していることが判明した。また、糖尿病や喫煙などの従来の心血管疾患(CVD)リスク因子に関する評価指標(LIFE-CVD)のスコアから低リスクと判定されるMI患者では、スコアが高い人に比べて騒音レベルが有意に高いことも示された。

HPV感染は男性の生殖機能を損なう可能性

 HPV(ヒトパピローマウイルス)は、ほぼ全例(95%)の子宮頸がんの原因であることから、これまで女性の健康問題と考えられてきた。しかし、男性にもHPVを恐れる理由と予防接種を受けるべき理由のあることが新たな研究で明らかになった。男性が高リスク型のHPVに感染すると、生殖機能が障害される可能性のあることが示されたのだ。国立コルドバ大学(アルゼンチン)化学学部教授のVirginia Rivero氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Cellular and Infection Microbiology」に8月23日掲載された。

人間なら死んでしまうほどの高血糖にコウモリはどう対応している?

 コウモリの中には、人間なら死に至るほどの高血糖状態で生存している種がいる。これは、コウモリがどんな環境でも生き延びられるように適応してきた結果と考えられ、このような変化は糖尿病治療に役立つ可能性があるという。米ストワーズ医学研究所のJasmin Camacho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nature Ecology & Evolution」に8月28日掲載された。同氏は、「ある種のコウモリの血糖値が、自然界でこれまで見られた中で最も高いことが分かった。その血糖値は哺乳類にとっては致命的で昏睡を引き起こすレベルだ。われわれは、これまであり得るとは思いもよらなかった事実を目にしている」と語っている。

日本人の高リスクStage I NSCLCへの術前ニボルマブ(POTENTIAL)/ESMO2024

 Stage Iの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性に関するエビデンスは乏しい。そこで、再発リスクの高いStage IのNSCLC患者を対象として、ニボルマブ単剤による術前補助療法の有用性を検討する国内第II相試験「POTENTIAL試験」が実施された。津谷 康大氏(近畿大学医学部 外科学教室 呼吸器外科部門 主任教授)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本試験の結果を発表した。 ・試験デザイン:多施設共同国内第II相試験 ・対象:再発リスクの高いStage I(充実型または充実成分径2~4cm)の日本人NSCLC患者52例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子はいずれも陰性) ・治療方法:ニボルマブ(240mg、2週ごと3サイクル)→肺葉切除+ND2a-1またはND 2a-2郭清を術前補助療法最終投与日から10週以内に施行

高悪性度のHR+/HER2-進行乳がん1次治療、化学療法と比べアベマシクリブ+ETが早期ORR良好(ABIGAIL)/ESMO2024

 予後不良の関連因子を有する、悪性度の高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、化学療法に続いて同併用療法を実施する場合と比較して早期の奏効率(ORR)が高いことが示された。スペイン・Hospital San Juan de Dios de CordobaのJuan De la Haba Rodriguez氏は、非盲検無作為化多施設共同非劣性試験である第II相ABIGAIL試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

レビー小体型認知症に対する抗認知症薬の10年間フォローアップ調査

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のHong Xu氏らは、レビー小体型認知症(DLB)に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)とメマンチンの使用が、認知機能、主要心血管イベント、死亡率に及ぼす影響を評価した。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2024年8月23日号の報告。  対象は、スウェーデンの認知症レジストリより抽出したDLB患者1,095例。DLB診断90日以内にChEIまたはメマンチンを開始した場合と抗認知症薬を使用しない場合の認知機能の軌跡、主要心血管イベント、死亡リスクに及ぼす影響を評価した。分析には、治療確率逆重み付けを用いた。

インフルワクチン接種と急性腎障害の関連~高齢者での検討

 インフルエンザワクチン接種後に急性腎障害(AKI)を発症した症例が報告されているが、その関連を示す集団レベルのエビデンスはない。韓国・Ewha Womans UniversityのHaerin Cho氏らによる大規模データベースを用いた自己対照ケースシリーズ研究の結果、インフルエンザワクチンの接種は65歳以上の高齢者のAKIリスク低下と関連することが明らかになった。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌2024年9月号掲載の報告より。  本研究では、韓国疾病管理庁の予防接種登録データと国民健康保険サービスの請求データを組み合わせた大規模データベースが使用された。ワクチン接種時に65歳以上で、2018~19年または2019~20年インフルエンザシーズン(それぞれ9月1日~翌4月30日まで)に、インフルエンザワクチンを1回以上接種し、接種後にAKIで入院した患者が対象。腎疾患の既往がある症例は除外された。