ネグレクトは子どもの発達にダメージを与え得る

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/02/03

 

 ネグレクトは身体的虐待や性的虐待、感情的虐待と同様に子どもの社会的発達にダメージを与え得ることを示した研究結果が明らかになった。基本的な欲求が満たされない子どもは、友人関係や恋愛関係を築く能力が生涯にわたって損なわれる可能性があるという。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校社会学分野のChristina Kamis氏と米ノートルダム大学社会学分野のMolly Copeland氏による研究で、詳細は「Child Abuse and Neglect」2024年12月号に掲載された。

 Kamis氏らは、思春期の子どもの健康状態を成人期まで追跡調査している米連邦政府の長期研究(National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health;Add Health)調査参加者9,154人のデータを分析し、マルトリートメント(ネグレクトや虐待などの不適切な養育)が参加者の社会性や仲間からの人気度、社会と強固なつながりを築く能力に及ぼす影響について調べた。参加者は、7~12年生時(1994〜1995年)に初回の調査を受け、その後、第3次調査(2001〜2002年)および第4次調査(2008〜2009年)も受けていた。

 参加者の40.86%が12歳あるいは6年生(12歳)になるまでに、身体的虐待や性的虐待など何らかのマルトリートメントを受けた経験があると報告していた。そのうちの10.29%は、養育者が住居、食事、衣服、教育、医療へのアクセスや精神的サポートを与えないことで子どもを危険な状態に置くことを意味する身体的ネグレクトであった。参加者には、在学時に実施した調査で、参加者に最も親しい男女の友人を5人まで挙げるよう求めた。社会性は当時の友人の数に基づき測定した。一方、人気度は、その参加者の名前を友人の1人として挙げた仲間の数に基づき測定した。社会的つながりの強さは友人グループのネットワークに基づき測定した。

 子どもが友人として挙げた仲間の数は平均で4.49人であり、1人につき平均4.54人がその子どもを友人として挙げていた。しかし、虐待やネグレクトを経験した子どもは、友人として挙げる仲間の数や、その子どもを友人として挙げる仲間の数が統計学的に有意に少ないことが示された。また、種類にかかわらず、マルトリートメントは子どもの社会性の発達に有害な影響を与えることも示された。例えば、性的虐待の経験は子どもを仲間から孤立させやすくする。一方、感情的虐待や身体的虐待の経験は、子どもの人気度を低下させたり、社会的なつながりを弱めたりする可能性のあることが明らかになった。ただし、これら3つの要素の全てに支障をもたらすのは身体的ネグレクトのみであった。

 Kamis氏は、「マルトリートメントを受けた子どもは、しばしば羞恥心を感じ、それが自尊心や帰属意識を低下させ、結果的に仲間から孤立しやすくなる可能性がある。また、そうした経験から、仲間から拒絶されたり危害を加えられたりするのではないかと考えるようになり、他者との関わりを持とうとしなくなる可能性も考えられる」とイリノイ大学のニュースリリースの中で述べている。

 Kamis氏らは、ネグレクトの経験がある子どもを友人として挙げる仲間が少ないという事実は、同級生がそうした子どもを避けたがっていたことを示唆していると考察している。Kamis氏は、「マルトリートメントそのものが偏見の対象となり、その経験の痕跡が目に見える形で残っていたり仲間に知られたりすると、仲間はその子どもを避けるようになる可能性がある」と説明している。また同氏は、「マルトリートメントによって感情のコントロールが難しくなったり、攻撃性が増したり、社会性に乏しい行動が見られたりすることで、友人としての望ましさを損なう行動が多くなる可能性もある」と述べている。

 こうしたことを踏まえてKamis氏は、医師や教師が子どもに虐待やネグレクトの兆候がないか注意を払い、子どもたちにサポートを提供する準備をしておくことを勧めている。同氏は、「こうした子どもにとって、学校は厳しい場所となっている可能性がある。子どもが友人関係を築き、仲間との間の壁を取り払うためには、さらなるサポートが必要であることを認識することが重要だ」と結論付けている。

[2025年1月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら