医療一般|page:62

古代人のDNAから多発性硬化症の起源が明らかに

 英ケンブリッジ大学およびコペンハーゲン大学(デンマーク)教授のEske Willerslev氏を中心とする国際的な研究グループが、アジアと西ヨーロッパで見つかった中石器時代から青銅器時代までの古代人の遺物のDNA解析により、世界で最大規模の古代人の遺伝子バンクを構築。これを用いて、時代の流れの中で人々の移動とともに遺伝子の変異や疾患などがどのように伝播したのかを明らかにした。この研究結果は、1月10日付の「Nature」に4本の論文として掲載された。  このうち、ケンブリッジ大学動物学分野のWilliam Barrie氏が筆頭著者を務めた1本の論文では、中枢神経系の自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の有病率が、世界的に見て北欧で高い理由の説明となる結果が得られた。

自宅で受ける病院レベルの医療の安全性と有効性を確認

 自宅で病院レベルの医療を受けた人は、入院して治療を受けた人と同程度に良好な経過をたどる可能性のあることが、米ハーバード大学ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のDavid Michael Levine氏らによる研究から明らかになった。同研究では、自宅で病院レベルの医療を受けた人の死亡率は低く、すぐに救急外来受診を必要とする状態に陥る可能性も低いことが示されたという。詳細は、「Annals of Internal Medicine」に1月9日掲載された。  Levine氏は、「患者の自宅で提供される病院レベルの医療は非常に安全で質も高いようだ。本研究では、患者の生存期間が延び、再入院の頻度も抑えられることが示された」と話した上で、「もし、自分の母親や父親、きょうだいがこのような形で医療を受けるチャンスがあるならば、そうすべきだ」と付け加えている。

固形がん治療での制吐療法、オランザピン2.5mgが10mgに非劣性/Lancet Oncol

 オランザピンは効果的な制吐薬であるが、日中の傾眠を引き起こす。インド・Tata Memorial CentreのJyoti Bajpai氏らは、固形がん患者における催吐性の高い化学療法後の低用量オランザピン(2.5mg)と標準用量オランザピン(10mg)の有効性を比較することを目的に、単施設無作為化対照非盲検非劣性試験を実施。結果をLancet Oncology誌オンライン版2024年1月12日号に報告した。  本試験はインドの3次医療施設で実施され、固形がんに対しドキソルビシン+シクロホスファミドまたは高用量シスプラチン投与を受けているECOG PS 0~2の13~75歳が対象。患者はブロックランダム化法(ブロックサイズ2または4)により2.5mg群(1日1回2.5mgを4日間経口投与)または10mg群(1日1回10mgを4日間経口投与)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、性別、年齢(55歳以上または55歳未満)、および化学療法レジメンによって層別化された。研究スタッフは治療の割り当てを知らされていなかったが、患者は認識していた。

肺がんコンパクトパネルにBRAF、KRAS、RET追加

 DNAチップ研究所は2024年1月26日、次世代シークエンス技術による遺伝子パネル検査「肺がん コンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム」(肺がんコンパクトパネル)の承認事項一部変更を発表した。  同承認は2022年12月16日に開示した、従来の4遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、MET)に加え、3遺伝子(BRAF、KRAS、RET)を加えるための「肺がんコンパクトパネル(医療機器プログラム)の一部変更申請」が承認されたことになる。

双極性障害に対するリチウムの国際的な使用傾向と臨床的相関

 双極性障害治療において、リチウムによる治療は依然として重要な治療選択肢の1つである。シンガポール・Nanyang Technological UniversityのYao Kang Shuy氏らは、国際的なリチウム使用の薬理学的疫学的パターンを経時的に特徴づけ、双極性障害に関連する臨床的相関を解明するため、スコーピングレビューを実施した。Brain Sciences誌2024年1月20日号の報告。  Arksey and O'Malley(2005)による方法論的枠組みを用いて、スコーピングレビューを実施した。

GLP-1受容体作動薬、従来薬と比較して大腸がんリスク低下

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として日本をはじめ海外でも広く承認されている。GLP-1受容体作動薬には、血糖低下、体重減少、免疫機能調節などの作用があり、肥満・過体重は大腸がんの主要な危険因子である。GLP-1受容体作動薬が大腸がんリスク低下と関連するかどうかを調査した研究がJAMA Oncology誌2023年12月7日号オンライン版Research Letterに掲載された。  米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のLindsey Wang氏らの研究者は、TriNetXプラットフォームを用い、米国1億120万人の非識別化された電子カルテデータにアクセスした。GLP-1受容体作動薬と、インスリン、メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤(ただし、SGLT2阻害薬は2013年、DPP-4阻害薬は2006年が開始年)の7薬剤を比較する、全国規模の後ろ向きコホート研究を実施した。

インフルエンザウイルスを中和する新たな抗体を同定

 手ごわい敵との闘いで新たな武器の入手につながりそうな研究結果がこのほど明らかになった。米ピッツバーグ大学医学部のHolly Simmons氏らは、複数のインフルエンザウイルス株を中和できる可能性のある、これまで見つかっていなかったクラスの抗体を同定したことを発表した。この抗体は、現在よりも幅広いインフルエンザウイルス株に対して有効なワクチンの開発につながる可能性があるという。研究の詳細は、「PLOS Biology」に12月21日掲載された。

妊娠中期のEPA/DHA摂取量が少ないと低出生体重児の割合が高い

 日本人女性では、妊娠中期の食事やサプリメントから摂取するエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)といったn-3系脂肪酸の摂取量が少ないと、低出生体重(low birth weight;LBW)児の割合が高いという研究結果を、山形大学大学院看護学専攻の藤田愛氏、吉村桃果氏らの研究グループが「Nutrients」に11月18日発表した。妊娠中期までのn-3系脂肪酸の摂取不足は、LBWの危険因子の一つだとしている。  これまでの研究から、妊娠中の母親の栄養不足はLBWの危険因子であり、中でも食事中のEPAやDHA不足はLBWリスクの上昇と関連することが報告されている。ただし、これまでの解析では、EPA、DHAの摂取量は食事からのものに限られており、サプリメントによる摂取量は考慮されていなかった。そこで、研究グループは、The Japan Pregnancy Eating and Activity Cohort Study(J-PEACH Study、代表:春名めぐみ氏)の一環として、妊娠中期(妊娠14~27週)におけるEPA/DHAの摂取量とLBWとの関連を検討する前向きコホート研究を実施した。

CAR-T療法ide-cel、多発性骨髄腫の早期治療に承認の意義/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2023年12月に同社のCAR-T細胞療法イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-cel、商品名:アベクマ)が、再発または難治性の多発性骨髄腫の早期治療に承認されたことを受け、2024年1月31日にメディア向けプレスセミナーを開催した。セミナーでは日本赤十字社医療センター・血液内科の石田 禎夫氏が「早期ラインとしての CAR-T 細胞療法(アベクマ)が多発性骨髄腫 (MM) の治療にもたらすもの」と題した講演を行い、新たな承認が臨床に与える意味について解説した。  多発性骨髄腫は抗体を産生する形質細胞ががん化し、骨病変、腎障害、免疫不全などを引き起こす疾患。10万人当たり6.2人(2017年)が罹患。高齢者に多い疾患で、高齢化に伴い患者数は増加傾向にある。

統合失調症入院患者に対する長時間作用型注射剤や新規抗精神病薬治療が臨床アウトカムに及ぼす影響

 統合失調症治療に従事している医療関係者にとって、抗精神病薬のアドヒアランスや治療の中断は、依然として大きな課題となっている。米国・Johnson & Johnson Innovative MedicineのCharmi Patel氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬治療を開始、または入院後に新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者を対象に、臨床的質の尺度を用いて評価を行った。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2023年12月21日号の報告。  本研究は、PINC AITM Healthcare Databaseを用いたレトロスペクティブコホート研究であり、統合失調症患者を対象とした2つのコホートから、入院後の臨床的質と治療継続のエンドポイントの評価を行った。対象患者は、all-payer databaseを用いて、米国の病院を拠点とするリアルワールドデータベースより抽出した。2017年4月~2020年4月、初回入院時にLAI抗精神病薬を開始した統合失調症患者7,292例または新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者3万1,956例を分析対象に含めた。傾向スコアの重みづけは、2つのコホート間の患者、病院、臨床的特性の違いにより対応した。

枕が高いと脳卒中に?/国立循環器病研究センター

 脳卒中は高齢者で多いが、若年~中年者でも特殊な原因で起こることがある。その原因の1つである特発性椎骨動脈解離の発症と枕の高さの関連を、国立循環器病研究センターの江頭 柊平氏らが症例対照研究で検討したところ、枕が高いほど特発性椎骨動脈解離の発症割合が高く、また枕が硬いほど関連が顕著であることが示された。著者らは殿様枕症候群(Shogun pillow syndrome)という新たな疾患概念を提唱している。European Stroke Journal誌オンライン版2024年1月29日号に掲載。

糖尿病患者、カルシウムサプリ常用でCVDリスク増

 カルシウムは、骨の組成に重要であり、カルシウム補助食品やサプリメントは骨粗鬆症性骨折予防などに広く用いられている。一方で、カルシウムサプリ摂取が血中カルシウム濃度を急激に上昇させ、心血管系に有害となる可能性がある。とくに心血管疾患(CVD)のリスクが高く、カルシウム代謝が低下していることが多い糖尿病患者における安全性の懸念が提起されている。中国・武漢のTongji Medical CollegeのZixin Qiu氏らによる、糖尿病患者におけるカルシウムサプリ摂取の安全性をみた研究結果がDiabetes Care誌2024年2月号に掲載された。

女性の涙のにおいは男性の攻撃性を抑制する?

 泣き始めた女性の姿に弱り果て、泣きやませるためにあの手この手を尽くす男性の姿は、昔からテレビや映画でよく見かけるが、生化学的な観点からこのような男性の反応を説明できるらしい。ワイツマン科学研究所(イスラエル)脳科学部のShani Agron氏らによる研究で、女性の涙には男性の攻撃性を40%以上も抑制する化学物質が含まれていることが示された。この研究の詳細は、「PLOS Biology」に12月21日掲載された。  雌のげっ歯類の涙には、雄の攻撃性を抑制するなどさまざまな効果を持つ社会的化学信号が含まれていることが報告されている。女性の涙にも男性ホルモンであるテストステロンを低下させる化学信号が含まれているが、それが行動に与える影響については明らかにされていない。Agron氏らは、テストステロンの低下は攻撃性の低下と関連しているため、女性の涙もげっ歯類の涙と同様に、男性の攻撃性を抑制する作用があるとの仮説を立て、それを検証する実験を行った。

ペットを飼うことが1人暮らしの人の認知症予防に?

 米国では、1人暮らしのシニア世代が増えているが、犬や猫などのペットを飼うことが認知機能の維持に役立つようだ。平均年齢66歳の7,900人以上を対象とした研究で、1人暮らしの人でも、ペットを飼っていれば記憶力や思考力の低下を抑えられる可能性のあることが明らかになった。中山大学(中国)のCiyong Lu氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に12月26日掲載された。  2021年のデータに基づくと、米国では人口の28.5%が単身世帯である。Lu氏らは、1人暮らしの年配者は認知症の発症リスクが高いことが多くの研究で明らかになっていると指摘する。

アルツハイマー病治療薬aducanumabの開発・販売を終了/バイオジェン

 米国・バイオジェンは2024年1月31日付のプレスリリースにて、同社とエーザイが共同開発したアルツハイマー型認知症治療薬aducanumabの開発および販売を終了することを発表した。本剤は、米国食品医薬品局(FDA)から2021年6月8日に迅速承認を受けていた。迅速承認の条件として第IV相市販後検証試験であるENVISION試験を実施していたが、本試験を終了する。

能登半島地震に対するJMATの対応/日医

 日本医師会常任理事の細川 秀一氏が、2024年1月31日の定例記者会見で、1月1日に発生した能登半島地震に対する日本医師会の最新の対応状況を報告した。  日本医師会は、1月30日はJMATととして金沢市に6チーム、七尾市に2チーム、穴水町に6チーム、志賀町に3チーム、能登町に3チーム、輪島市に3チーム、珠洲市に4チーム、金沢以南に11チーム、その他地域に2チームを派遣していて、これまでの延べ人数は3,490人にのぼるという。これらの人数には、統括やロジスティクスを担うチーム、深部静脈血栓症などの治療を行う専門チームも含まれている。

TN乳がんの治療薬SG、日本での製造販売承認を申請/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは、2024年1月30日付のプレスリリースで、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(HR-/HER2-)乳がん治療薬として開発を進めている抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecan(SG)について、同日に日本における製造販売承認申請を行ったと発表した。  HR-/HER2-(IHCスコア0、IHCスコア1+またはIHCスコア2+/ISH陰性)乳がん(トリプルネガティブ乳がん)は、最も悪性度の高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約10%を占めるといわれている。HR-/HER2-乳がんの細胞は、エストロゲンとプロゲステロンの受容体の発現がなく、HER2の発現も限定的もしくはまったく認められない。HR-/HER2-乳がんはその性質上、他の乳がんに比べて有効な治療法がきわめて限られており、再発や転移の可能性が高く、他の乳がんにおける転移・再発までの平均期間が5年であるのに対し、HR-/HER2-乳がんでは約2.6年、5年生存率は、一般的な再発乳がんの女性においては28%、HR-/HER2-再発乳がんにおいては12%とされている。

中年期のタンパク質摂取が多いほど、健康寿命が延びる

 世界中で高齢化が進む中、健康寿命を延ばすことが求められており、栄養はその中の重要な要素である。中でもタンパク質は身体の健康維持に大きな役割を果たしているが、中年期にタンパク質を多く摂取した人ほど、疾病なく健康的に加齢する可能性があることが新たな研究でわかった。米国・タフツ大学のAndres V. Ardisson Korat氏らによる本研究の結果はThe American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年1月17日号に掲載された。

肥満の変形性関節症患者での減量は「ゆるやかに」が重要

 肥満症治療薬を使って体重を徐々に落とすことは変形性関節症(osteoarthritis;OA)患者の延命に役立つことが、新たな研究で明らかになった。ただし、急速な減量は、生存率の改善には寄与しないばかりか、場合によっては心血管疾患のリスクをわずかに上昇させる可能性も示された。中南大学(中国)のJie Wei氏らによるこの研究の詳細は、「Arthritis & Rheumatology」に12月6日掲載された。  肥満は関節炎の悪化要因である上に、早期死亡のリスク因子でもある。現行のガイドラインでは、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症の患者に対しては減量が推奨されているが、OA患者での減量と死亡との関連に関するデータは少ない。

強迫症と双極性障害を合併した患者の臨床的特徴~レビューとメタ解析

 強迫症は、さまざまな精神疾患を併発することが多く、双極性障害と診断された患者の約20%に影響を及ぼす可能性がある。強迫症と双極性障害の合併に関するエビデンスは増加しているが、併発を定義する強迫症状の明確な特徴に関する包括的なデータは、著しく不足している。このようなギャップを埋めるため、スペイン・バルセロナ大学のMichele De Prisco氏らは、強迫症と双極性障害の合併に関するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2023年12月20日号の報告。  2023年8月7日までに公表された文献をPubMed、MEDLINE、Scopus、EMBASE、PsycINFOよりシステマティックに検索した。強迫症の症状、強迫観念、特定のカテゴリの観点から、強迫症と双極性障害を合併した患者と強迫症患者を比較するため、ランダム効果メタ解析を実施した。