何世紀にもわたり、運動と健康の間にはU字型の関係があると考えられてきた。つまり、運動量は少な過ぎても多過ぎても健康を損なうという考え方だ。しかし、最大限のパフォーマンスに自分を追い込むアスリートは、長寿に関しては代償を払う必要はないようだ。1マイル(約1.6km)を4分以内で走り切った最初の200人のアスリートは、一般的な人よりも平均5年近く長生きする可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。アルバータ大学(カナダ)のMark Haykowsky氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に5月10日掲載された。
この研究は、英国の神経学者にしてアスリートであったRoger Bannister氏が、1954年5月、25歳のときに、人類で初めて1マイルを4分以内に走り切ること(以下、「1マイル4分」)を達成してから70周年に当たる年(2024年)に実施された。Bannister氏は2018年に88歳で亡くなった。
研究グループは今回、「1マイル4分」を達成した最初の200人を対象に、「1マイル4分」が寿命に与える影響を、その人の出身国での平均寿命との比較で検討した。対象とされた200人は、1928年から1955年の間に28カ国で生まれた男性で、1954年から1974年の間に「1マイル4分」の記録を達成していた。記録達成時の平均年齢は23歳だった。
200人のうち60人(30%)は本研究の解析時にすでに死亡していたが、残りの140人は生存していた。解析の結果、「1マイル4分」を達成した人は、予測される平均寿命よりも平均で4.7歳長く生きる可能性のあることが示された。「1マイル4分」を達成した年代(1950年代、1960年代、1970年代)を考慮して解析すると、これらの人では、平均寿命が年代ごとにそれぞれ、9.2年、5.5年、2.9年延長するという結果になった。
Haykowsky氏は、「これらは、極端な持久運動が長寿に有害だとする考え方を覆す結果であり、トップレベルのパフォーマンスに必要なトレーニングレベルであっても、運動が寿命にとって有益であることが再確認された」と結論付けている。
研究グループは、年代を追うごとに「1マイル4分」が走者の寿命にもたらすベネフィットが低下していたのは、人口全体での平均寿命の向上により説明できる可能性があると述べている。つまり、主要疾患の診断、治療、予防の進歩により一般の人が長生きするようになったのであり、アスリートが早死にするようになったわけではないということだ。
一方、アスリートが一般の人より全体的に長寿であるのは、持久運動が健康に寄与している可能性があるとの見方を研究グループは示している。また、「1マイル4分」を達成した最初の200人の中に6組の双子を含む20組のきょうだいや、親子の組み合わせも含まれていたことに注目し、健康的なライフスタイルや遺伝も長寿に一役買っている可能性があると述べている。
[2024年5月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら