医療一般|page:103

肺炎への抗菌薬、静注から経口に早期切り替えで入院期間短縮か

 肺炎により入院した患者は、通常、状態が安定するまで静脈注射(IV)用の抗菌薬(以下、IV抗菌薬)を投与される。しかし、市中肺炎に罹患した患者の多くでは、もっと早い段階でIV抗菌薬から経口抗菌薬に切り替えた方が早期退院につながる可能性のあることが新たな研究で示された。米クリーブランドクリニック・コミュニティーケアのAbhishek Deshpande氏らによるこの研究結果は、「Clinical Infectious Diseases」に4月3日掲載された。

女性の腰痛にはストレスから来る“冷え”が関与?―日本人対象横断研究

 女性の腰痛に関連のある因子をWeb調査で検討した結果が報告された。敦賀市立看護大学の萬代望氏と関西医療大学の渡邉真弓氏、武田時昌氏、新潟大学の富山智香子氏、福島県立医科大学の二階堂琢也氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Research Notes」に1月30日掲載された。“冷え”を訴え、実際に体温が低い人に腰痛が多く、その背後には精神的ストレスが関係している可能性が想定されるという。  腰痛は、日本人女性が訴える慢性症状として肩こりに次いで2番目に多いと報告されている。整形外科的疾患の症状として腰痛が現れることもあるが、詳しい検査をしても原因が見つからない「非特異的腰痛」が少なくない。非特異的腰痛の予防・改善には、その発症に関連のある因子を特定することが求められる。

日本における睡眠薬の使用パターン~レセプトデータ分析

 不眠症の最適な治療法に関するコンセンサスは、限られている。近年、オレキシン受容体拮抗薬の導入により、利用可能な治療選択肢が増加してきたが、日本における睡眠薬使用パターンを包括的に評価した報告は、行われていなかった。MSDの奥田 尚紀氏らは、日本の不眠症治療における睡眠薬のリアルワールドでの使用パターンを調査するため、レセプトデータベースの分析を行った。その結果、日本における睡眠薬の新規使用患者および長期使用患者では、明確な使用パターンおよび傾向が認められた。著者らは、睡眠薬のリスクとベネフィットに関するエビデンスを蓄積し、不眠症に対する治療選択肢をさらに理解することは、リアルワールドにおいて睡眠薬を使用する医師にとって有益であろうとしている。BMC Psychiatry誌2023年4月20日号の報告。

「日本版CDC」2025年度創設へ、参議院で可決

 今後の感染症流行に備え、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たに「国立健康危機管理研究機構」を設立するための法律が、5月31日の参議院本会議で可決、成立した。米国疾病管理予防センター(CDC)をモデルとして、2025年度に国立健康危機管理研究機構が創設される予定。感染症その他の疾患に関し、調査研究、医療の提供、人材の養成等を行うとともに、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある感染症の発生および蔓延時において、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し科学的知見を提供できる体制の強化を図る。

大腸がんを予防するコーヒーの摂取量は?~アンブレラレビュー

 1日5杯以上のコーヒー摂取により、大腸がんのリスクが有意に低減することが、米国・Cleveland Clinic FloridaのSameh Hany Emile氏らのアンブレラレビューによって明らかになった。Techniques in Coloproctology誌オンライン版2023年5月2日掲載の報告。  コーヒーの摂取によって、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低減が報告されている。また、大腸がんや一部のがん種を予防する可能性も示唆されている。しかし、コーヒー摂取が大腸がんのリスク低減と関連するエビデンスは十分ではない。

アスリートの睡眠習慣は食事に左右される?

 早寝早起きの生活にしたいのなら、食べ物をアレンジしてみると良いかもしれない。新たに報告された研究によると、何を食べるかによって、睡眠パターンが異なる可能性があるという。米ウエストバージニア大学のLauren Rentz氏らが、大学生アスリートを対象に行った小規模な研究の結果であり、米国生理学会(APS2023、4月20~23日、米国・ロングビーチ)で発表された。  Rentz氏によると、「アスリートの成功にとって、試合時に自分のパフォーマンスを最大化して発揮することだけでなく、試合やトレーニングの後の迅速な回復も重要。良い睡眠習慣が日々の身体的・精神的ストレスからの回復を促し、将来のパフォーマンスに好影響を与える」とのことだ。ただし、「常に強いストレスにさらされているアスリートの回復戦略における、睡眠と栄養素摂取の関係はまだほとんど知られていない」と、同氏は研究の背景を語っている。

抑うつ症状の強い女性には下部尿路症状が多い――国内ネット調査

 日本人女性では、頻尿や尿失禁などの下部尿路症状と抑うつ症状との間に有意な関連のあることが明らかになった。特に若年女性で、より強固な関連が認められたという。横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科の河原崇司氏らが行ったインターネット調査の結果であり、詳細は「Lower Urinary Tract Symptoms」に3月30日掲載された。  頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿後の尿漏れといった下部尿路症状(LUTS)は加齢とともに増え、特に女性では尿失禁や尿漏れが男性に比べて起こりやすい。LUTSは命にかかわるものではないものの、生活の質(QOL)を大きく低下させる。一方、うつ病も女性に多い疾患であり、かつ、うつ病は時に命にかかわることがある。これまで海外からは、女性のLUTSがうつ病リスクに関連していることを示す研究結果が報告されている。ただし、それを否定する研究もあり、また日本人女性対象の研究報告はまだない。河原氏らの研究は以上を背景として行われた。

境界性パーソナリティ障害に有効な治療は~リアルワールドデータより

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者の多くは精神薬理学的治療を受けているが、BPDに関する臨床ガイドラインには、薬物療法の役割についてのコンセンサスはない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、BPDに対する薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、注意欠如多動症(ADHD)の治療薬が、BPD患者の精神科再入院、すべての原因による入院または死亡のリスク低下と関連していることが示唆された。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年4月24日号の報告。

米CDCが今夏のサル痘再流行の可能性について警告

 米疾病対策センター(CDC)は5月15日、ヘルス・アラート・ネットワークを通して、サル痘ウイルスに感染するリスクのある人にワクチンを接種するよう呼びかけた。背景には、2022年夏にピークに達して以降、徐々に減少していたサル痘(2023年2月にエムポックスに名称変更)の罹患者数が再び増加に転じる可能性に対する危惧がある。CDCは、「人々が集うフェスティバルやその他のイベントを通して、2023年の春から夏にかけてサル痘が再び流行する可能性がある」と述べている。

クランベリーの尿路感染症予防効果、新たなデータで示される

 クランベリー製品の摂取が尿路感染症(UTI)の予防に役立つという説は何十年も前から唱えられているが、50件の研究のレビューから、その説を支持する結果が得られたことが報告された。フリンダース大学(オーストラリア)医学・公衆衛生学部公衆衛生学科のJacqueline Stephens氏らによるこの研究結果は、「Cochrane Library」に4月17日掲載された。Stephens氏は、「濃縮液や錠剤・カプセル状のクランベリー製品の摂取が、UTI再発患者や小児など一部の人に有効であることについて、初めて合意を得ることができた」と話している。

睡眠薬にアルツハイマー病の予防効果か

 スボレキサント(商品名ベルソムラ)と呼ばれる睡眠薬が、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の予防に有用である可能性を示唆する予備的な臨床試験の結果がこのほど明らかになった。スボレキサントを就寝前に服用した参加者では、アルツハイマー病に関わる重要なタンパク質であるアミロイドβやタウのリン酸化レベルが低下することが示されたという。米ワシントン大学セントルイス睡眠医学センター所長のBrendan P. Lucey氏らが実施したこの研究の詳細は、「Annals of Neurology」に3月10日掲載された。

真性多血症治療薬ロペグインターフェロン発売/ファーマエッセンシアジャパン

 ファーマエッセンシアジャパンは、抗悪性腫瘍剤/真性多血症治療薬のロペグインターフェロン アルファ-2b(商品名:ベスレミ)の皮下注250µgシリンジと500µgシリンジを6月1日に発売した(薬価収載は5月24日)。適応は真性多血症で既存治療が効果不十分または不適当な場合に限るとされている。  真性多血症(PV)は、骨髄増殖性腫瘍の一種で、骨髄の造血幹細胞の異常により、赤血球が過剰に産生される血液の希少疾病。PVは、遺伝子変異によって発症すると推定され、ほぼすべてのPV患者で造血幹細胞中のヤヌスキナーゼ2(JAK2)遺伝子に主に「JAK2 V617F」と称される変異が生じ、著しい赤血球の増加を来たす。

抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加

 近年の研究で、抗菌薬によるマイクロバイオーム異常および腸と肺の相互作用が肺がん発症の引き金になる可能性が指摘されている。今回、韓国・ソウル国立大学のMinseo Kim氏らが抗菌薬の長期使用と肺がんリスクの関連を調べたところ、抗菌薬の累積使用日数および種類の数が肺がんリスク増加と関連することが示された。Journal of Infection and Public Health誌2023年7月号に掲載。

抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン使用の世界的な傾向~64ヵ国横断的分析

 米国・ピッツバーグ大学のOrges Alabaku氏らは、高所得国、中所得国、低所得国における抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン(BZD)使用の世界的な傾向を調査した。その結果、高所得国は中・低所得国と比較し向精神薬の治療利用率が高いことを報告した。PLOS ONE誌2023年4月26日号の報告。  IQVIAのMIDASデータベースを用いて、2014年7月~2019年12月までの国別横断的時系列分析を行った。人口で調整された使用率は、人口規模ごとに、薬剤クラス別の薬剤標準単位数で算出した。高所得国、中所得国、低所得国の分類には、国連の「2020年世界経済状況・予測」を用いた。薬剤クラス別の使用率の変化は、2014年7月~2019年7月の期間で算出した。経済状況を予測変数として用い、各国の薬剤クラス別の使用率について、ベースラインからの変化の予測可能性を評価するため線形回帰分析を実施した。

頭の中の思考を文章化する新たなデコーダーを開発

 何らかの話を頭の中で想像したり聞いたりしている人の脳の機能的MRI(fMRI)のデータから、その人が考えている内容を文章に置き換えることができるデコーダーの開発に成功したことを、米テキサス大学オースティン校のJerry Tang氏らが報告した。研究グループは、このシステムが、脳卒中などで意識はあるものの話すための身体的な能力を失った人に有益な可能性があると見ている。研究の詳細は、「Nature Neuroscience」に5月1日掲載された。  Tang氏らが開発した新しいデコーダーは、脳に電極を埋め込む必要がない、非侵襲的なアプローチを採用している点で、これまでのシステムとは異なる。デコーダーの開発ではまず、3人の試験参加者に16時間にわたってさまざまな話を聞かせ、その間の脳のfMRIデータを取得。このデータを用いて、単語の連なりに対する脳の反応を予測するためのエンコーディングモデルのトレーニングを行った。次いで、このエンコーディングモデルが予測した脳の反応を基に、ニューラルネットワーク言語モデルと探索アルゴリズムを用いたデコーダーが、最適な単語の連なりを生成するようにした。

富士登山で高山病になる人とならない人の違い

 毎年20万人前後が富士登山に訪れ、その約3割が高山病を発症すると報告されている。高山病は一般に標高2,500mを超える辺りから発症し、主な症状は吐き気や頭痛、疲労など。多くの場合、高地での最初の睡眠の後に悪化するものの、1~2日の滞在または下山により改善するが、まれに脳浮腫や肺水腫などが起きて致命的となる。  高山病のリスク因子として、これまでの研究では到達高度と登山のスピードの速さが指摘されている一方、年齢や性別については関連を否定するデータが報告されている。また、心拍数や呼吸数の変化、心拍出量(1分間に心臓が全身に送り出す血液量)も、高山病のリスクと関連があると考えられている。

統合失調症患者におけるLAI抗精神病薬の導入成功パターンは

 統合失調症の再発予防に長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は効果的であるが、いまだ十分に利用されているとはいえない。米国・ザッカーヒルサイド病院のJohn M. Kane氏らは、米国の民間保険加入患者を含む大規模データセットを用いて、統合失調症診断後のLAI抗精神病薬治療の成功パターンを特定するため、本検討を行った。その結果、主に民間保険加入患者である本データセットでは、初期段階でのLAI抗精神病薬の使用率は非常に低かったが、正常に同薬剤が導入された患者の多くは、最初の導入で90日以上の治療を達成していた。しかし、初期段階でLAI抗精神病薬が使用された場合でも、多くの患者は過去に経口抗精神病薬治療を受けており、統合失調症の初回治療としてLAI抗精神病薬はいまだ一般的ではないことが示された。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年4月19日号の報告。  ICD-9またはICD-10基準で新たに統合失調症と診断された18~40歳の患者のうち、第2世代のLAI抗精神病薬の導入成功(90日以上の使用と定義)、1つ以上の第2世代の経口抗精神病薬使用のデータを、2012~19年のIBM MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータベースより特定した。アウトカムは、記述的に測定した。 主な結果は以下のとおり。 ・適格基準を満たした患者は、新規に統合失調症と診断された患者4万1,391例のうち、LAI抗精神病薬を1回以上使用した患者1,836例(4%)、1回以上の第2世代経口抗精神病薬治療後にLAI抗精神病薬の導入に成功した患者202例(1%未満)。 ・診断から最初のLAI抗精神病薬開始までの期間(中央値)は289.5日(範囲:0~2,171日)、LAI抗精神病薬開始から導入成功までの期間は90.0日(同:90~1,061日)、導入成功後のLAI抗精神病薬中止までの期間は166.5日(同:91~799日)であった。 ・LAI抗精神病薬開始前、2つ以上の経口抗精神病薬による治療を行っていた患者は58%であった。 ・LAI抗精神病薬の導入が成功した患者の86%は、最初のLAI抗精神病薬で達成が得られていた。

学校でのコロナ感染対策、マスクの効果が明らかに

 本邦では、2023年5月8日に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症法上の分類が5類に引き下げられ、文部科学省は、5類移行後の学校でのマスクの着用や検温報告を原則不要とする方針を、各教育委員会に通知している。しかし、スイスの中学校で実施された研究において、マスク着用の義務化はウイルス感染に重要な役割を果たすとされるエアロゾルの濃度を低下させ、SARS-CoV-2感染リスクを大幅に低減させたことが報告された。本研究結果は、スイス・ベルン大学のNicolas Banholzer氏らによってPLOS Medicine誌2023年5月18日号で報告された。

世界初となる子宮内の胎児の脳外科手術に成功

 世界で初めて、胎児の脳の血管奇形であるガレン静脈奇形(vein of Galen malformation;VOGM)に対する手術が子宮内で行われ、成功したことが明らかになった。VOGMを持って生まれた新生児は、死に至る危険性もある。専門家らは、今回の手術成功を賞賛するも、まだ成功例は一例のみであり、胎児の脳外科手術が良い治療戦略なのかどうかについては、さらなる研究が必要としている。米ボストン小児病院脳血管外科インターベンションセンターのDarren Orbach氏らによるこの研究の詳細は、「Stroke」に5月4日掲載された。

ChatGPTは患者への説明が医師よりも上手

 人工知能(AI)を用いた自動会話(チャットボット)である「ChatGPT」は、登場してまだわずか数カ月しかたっていないが、患者に対する説明を人間の医師よりも分かりやすく、親切に伝える能力を既に備えていることが報告された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のJohn Ayers氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に4月28日掲載された。  この研究では、195種類の医学的質問に対する医師とChatGPTの回答のどちらが優れているかを、医療専門家のチームが判定した。医師の回答は、医療に関するソーシャルメディアのプラットフォーム「AskDocs」に、過去に投稿されたものから無作為に抽出した。585件の回答を比較したところ、その78.6%はChatGPTの回答の方が正確かつ詳細で質が高いと判定された。また、内容が「共感的」または「非常に共感的」と評価された割合は、医師の場合は4.6%に過ぎなかったが、ChatGPTでは45.1%を占めた。Ayers氏は、「検討の結果はチャットボットが圧勝だった。ただしこれは、AIが医師に取って代わるという意味ではなく、医師がAIを活用することでより質の高い患者対応が可能になることを意味している」と話す。