ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:1

生成AIにも認知機能障害!?/BMJ

 主要な大規模言語モデル(LLM)の認知機能についてモントリオール認知評価(MoCA)テストなどを用いて評価した結果、ChatGPT-4oを除いたLLMで軽度認知機能障害の兆候が認められたことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのRoy Dayan氏らが報告した。人間と同様に年齢が認知機能低下の重要な決定要因であり、「高齢」すなわちバージョンが古いチャットボットはMoCAテストの成績が不良である傾向がみられたという。著者は、「これらの結果は、近くAIが人間の医師に取って代わるという想定に疑問を投げ掛けるものであり、主要なチャットボットの認知機能障害は医療診断の信頼性に影響を与え、患者の信頼を損なう可能性がある」と述べている。これまで複数の研究により、LLMはさまざまな診断において人間の医師よりも優れていることが示されているが、AI自体が認知機能低下を来すかどうかは評価されていなかった。BMJ誌2024年12月20日号掲載の報告。

外傷患者への早期の酸素投与、制限的vs.非制限的/JAMA

 成人外傷患者において、早期の制限的酸素療法は非制限的酸素療法と比較し、30日以内の死亡や重大な呼吸器合併症を減少しなかった。デンマーク・RigshospitaletのTobias Arleth氏らTRAUMOX2 Trial Groupが、デンマーク、オランダ、スイスの15の病院前救護拠点および重症外傷センター5施設で実施した無作為化非盲検評価者盲検比較試験「TRAUMOX2試験」の結果を報告した。すべての重症外傷患者に対して早期から酸素投与を行うことが推奨されているが、過度に酸素を投与することは死亡や呼吸器合併症のリスク増加と関連することが示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年12月10日号掲載の報告。

コロナ罹患後症状、研究指標をアップデート/JAMA

 米国・スタンフォード大学のLinda N. Geng氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環であるRECOVER-Adult studyにおいて、追加の参加者のデータを含めた最新解析を行い、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の持続的な症状であるLong COVID(LC)の研究指標を報告した。著者は、「LCの理解が進むに従って指標の継続的な改善が必要で、LC研究指標2023年版を更新した2024年版は、研究者がLCとその症状サブタイプを分類するのに役立つ」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年12月18日号掲載の報告。

外科医は器用?バズワイヤーゲームで評価/BMJ

 バズワイヤーゲーム(イライラ棒ゲーム)を用いた評価の結果、外科医は他の病院スタッフと比較して、手先が器用であったが不快な言葉を発する割合も高かった。一方、看護師および非臨床スタッフは、いら立ちの声を発する割合が高かった。英国・リーズ大学のTobin Joseph氏らが、前向き観察研究「Tremor研究」の結果を報告した。著者は、「病院スタッフの職種によって多様なスキルセットがあることが浮き彫りとなった。今後のトレーニングでは、器用さとストレス管理の両方を強化するためファミリーゲームを取り入れることが有用かもしれない。また、今後の募金活動では、外科医のswear jar(不快な言葉への罰金箱)の実施を検討すべきある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2024年12月20日号掲載の報告。

早期/局所進行TNBCの術前補助療法、camrelizumab追加でpCR改善/JAMA

 早期または局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術前補助療法において、化学療法単独と比較して化学療法に抗PD-1抗体camrelizumabを追加すると、病理学的完全奏効(pCR)の割合を有意に改善し、術前補助療法期に新たな安全性シグナルは発現しなかったことが、中国・復旦大学上海がんセンターのLi Chen氏らが実施した「CamRelief試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年12月13日号に掲載された。  CamRelief試験は、早期または局所進行TNBCの術前補助療法におけるcamrelizumab追加の有益性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年11月~2023年5月に中国の40病院で患者を登録した(Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

高リスクくすぶり型多発性骨髄腫、ダラツムマブ単剤が有効/NEJM

 くすぶり型多発性骨髄腫は、活動性多発性骨髄腫の無症候性の前駆疾患であり、現在の標準治療は経過観察であるが、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高い患者では早期治療が有益な可能性があるとされる。ギリシャ・アテネ大学のMeletios A. DimopoulosらAQUILA Investigatorsは「AQUILA試験」において、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療では注意深い経過観察と比較して抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブ皮下注単剤療法が、活動性多発性骨髄腫への進行または死亡のリスクを有意に改善し、全生存率も良好で、予期せぬ安全性に関する懸念も認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年12月9日号で報告された。

医師の腺腫検出率改善が大腸がんリスク低下と関連/JAMA

 大腸がん検診プログラムで大腸内視鏡検査を受ける参加者において、医師の腺腫検出率(ADR)の改善が大腸がんリスク低下と統計学的に有意に関連することが示された。ただし関連が認められたのは、医師の改善前のADRが26%未満であった場合のみであった。ポーランド・Maria Sklodowska-Curie National Research Institute of OncologyのNastazja D. Pilonis氏らが、大腸がん検診プログラムのデータを用いた観察研究の結果を報告した。ADRの改善が大腸がん発生率の低下と関連しているかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年12月16日号掲載の報告。

急性呼吸不全、高流量経鼻酸素vs.非侵襲的人工換気/JAMA

 急性呼吸不全患者への呼吸支持療法として、高流量経鼻酸素療法(HFNO)は非侵襲的人工換気(NIV)に対して非劣性なのか。ブラジル・Hcor Research InstituteのAlexandre Biasi CavalcantiらRENOVATE Investigators and the BRICNet Authorsは、急性呼吸不全患者を原因で5群に層別化して、無作為化非劣性検証試験「RENOVATE試験」を行い、4群(免疫不全の低酸素血症、呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪、急性心原性肺水腫[ACPE]、低酸素血症を伴うCOVID-19)について非劣性が示されたことを報告した。ただし、サンプルサイズや感度分析の観点から結果は限定的であるとしている。急性呼吸不全患者の呼吸支持療法として、HFNOとNIVはいずれも一般的に用いられている。JAMA誌オンライン版2024年12月10日号掲載の報告。

英国の過去20年の新薬導入、公衆衛生への影響を評価/Lancet

 2000~20年における英国国民保健サービス(NHS)による新薬提供は、公衆衛生にもたらした利益より損失のほうが大きかった。英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのHuseyin Naci氏らが、後ろ向き研究の結果を報告した。英国では、国立医療技術評価機構(NICE)による新薬に関する推奨は、健康増進をもたらす可能性がある一方で、その資金を代替治療やサービスに利用できなくなるため、犠牲となる健康が生じる可能性がある。著者は、「今回の結果は、新薬から直接的な恩恵を受ける人々と、新薬への資源の再配分により健康を諦めることになる人々との間に、トレードオフが存在することを浮き彫りにしている」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。

中等症~重症の潰瘍性大腸炎、グセルクマブは有効かつ安全/Lancet

 グセルクマブは、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎(UC)に対する導入療法および維持療法として有効かつ安全であることが、32ヵ国254施設で実施された第IIb/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「QUASAR試験」において示された。米国・シカゴ大学のDavid T. Rubin氏らQUASAR Study Groupが、第III相導入試験および維持試験の結果を報告した。グセルクマブは、インターロイキン(IL)-23を阻害するとともに、CD64にも結合する二重作用のヒト型ヒト抗IL-23p19モノクローナル抗体製剤で、IL-23の阻害がUCの治療に有望であることが示唆されていた。本邦ではUCへの適応は承認申請中。Lancet誌オンライン版2024年12月17日号掲載の報告。

リンパ節転移陰性の浸潤性乳がん、腋窩手術省略vs.センチネルリンパ節生検/NEJM

 リンパ節転移陰性のcT1またはcT2浸潤性乳がん患者では、腋窩郭清術を省略してもセンチネルリンパ節生検に対して非劣性であった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏らがドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」の追跡期間中央値6年の解析結果を報告した。乳房温存療法の一環として、生存率を損なうことなく腋窩手術を省略できるかどうかは不明のままであった。NEJM誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。

手OAに電熱手袋は有効か?/BMJ

 バッテリー駆動型電熱線が内蔵され手指全体を温められるミトンタイプの手袋(電熱グローブ)は、手の変形性関節症(OA)患者の痛みや機能の改善に効果があるのか。デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのCecilie Bartholdy氏らは無作為化対照試験を行い、6週間にわたる電熱グローブ使用は対照グローブ(温熱なし)使用と比較して、身体面および機能面に好ましい変化は認められなかったことを報告した。著者は「電熱グローブは、手OAに関連した問題や握力の評価に追加のベネフィットをもたらさなかった。手の痛みについてはわずかなベネフィットが検出されたが、過大評価されている可能性があった」と述べている。手OAはありふれた疾患で痛みや機能低下を引き起こす。既治療法の効果はわずか~中程度であり、米国リウマチ学会2020ガイドラインで「温めること」が症状緩和法として推奨されているが、その効果を裏付けるエビデンスの質は低かった。BMJ誌2024年12月17日号クリスマス特集号「SEASONS OF LOVE」掲載の報告。

タクシーと救急車の運転手、アルツハイマー病による死亡率低い/BMJ

 タクシーと救急車の運転手は、アルツハイマー病による死亡率がすべての職業の中で最も低いことが、米国・ハーバード医学大学院・ブリガム&ウィメンズ病院のVishal R. Patel氏らによる住民ベースの横断研究で示された。アルツハイマー病で最初に萎縮がみられる脳領域の1つに海馬がある。海馬は空間記憶とナビゲーションに使用される脳領域で、研究グループは、空間処理とナビゲーション処理を頻繁に必要とする職業のタクシーと救急車の運転手について、アルツハイマー病による死亡率を他職業と比較し分析した。先行研究で、タクシー運転手は一般集団と比較して、海馬の機能が強化されていることが示されていた。BMJ誌2024年12月17日号クリスマス特集号「Death is Just Around the Corner」掲載の報告。

低リスクDCIS、積極的モニタリングvs.標準治療/JAMA

 低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する積極的モニタリング(6ヵ月ごとに乳房画像検査と身体検査を実施)は、ガイドラインに準拠した治療(手術±放射線治療)と比較して、追跡2年時点の同側乳房浸潤がんの発生率を上昇せず、積極的モニタリングの標準治療に対する非劣性が示された。米国・デューク大学のE. Shelley Hwang氏らCOMET Study Investigatorsが前向き無作為化非劣性試験「COMET試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。  研究グループは、2017~23年にUS Alliance Cancer Cooperative Groupのクリニック試験地100ヵ所で、ホルモン受容体陽性(HR+)グレード1/2のDCISと新規診断された40歳以上の女性995例を登録して試験を行った。

中等~重度の椎骨脳底動脈閉塞、血管内治療vs.内科的治療/Lancet

 中等度~重度の症状を呈する椎骨脳底動脈閉塞患者において、標準的な内科的治療と比較して血管内治療は強固な有益性を示し、良好な機能的アウトカムの達成の可能性が高く、症候性頭蓋内出血のリスクは有意に増加するものの、全体的な機能障害および死亡率の有意な減少と関連することが、米国・ピッツバーグ大学のRaul G. Nogueira氏らが実施した「VERITAS研究」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年12月11日号で報告された。  研究グループは、急性椎骨脳底動脈閉塞患者における血管内治療の安全性と有効性を評価するために、標準的な内科的治療(対照)と比較した無作為化試験の系統的レビューを行い、患者レベルのデータを統合したメタ解析により、事前に規定したサブグループにおける有益性を検討した(特定の研究助成は受けていない)。

重症血友病A、新たな第VIII因子発現遺伝子治療が有望/NEJM

 第VIII因子インヒビターのない重症血友病A患者において、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した自己造血幹細胞(HSC)による遺伝子治療は、安定した第VIII因子発現が得られ、第VIII因子活性は末梢血中のベクターのコピー数と相関することが、インド・Christian Medical College VelloreのAlok Srivastava氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2024年12月9日号に掲載された。  研究グループは、第VIII因子インヒビターのない重症血友病Aにおけるレンチウイルスベクターを用いた自己CD34陽性HSCによる第VIII因子発現遺伝子治療の安全性と有効性の評価を目的に、インドの単施設において第I相試験を行った(インド政府科学技術省などの助成を受けた)。

敗血症疑い患者の抗菌薬の期間短縮、PCTガイド下vs.CRPガイド下/JAMA

 敗血症が疑われる重篤な入院成人患者において、バイオマーカー(プロカルシトニン[PCT]とC反応性タンパク質[CRP])のモニタリングプロトコールによる抗菌薬投与期間の決定について、標準治療と比較してPCTガイド下では、安全に投与期間を短縮でき全死因死亡も有意に改善したが、CRPガイド下では投与期間について有意な差は示されず、全死因死亡は明らかな改善を確認することはできなかった。英国・マンチェスター大学のPaul Dark氏らADAPT-Sepsis Collaboratorsが、多施設共同介入隠蔽(intervention-concealed)無作為化試験「ADAPT-Sepsis試験」の結果を報告した。敗血症に対する抗菌薬投与の最適期間は不明確であり、投与中止の判断はバイオマーカー値に基づいて行われているが、その有効性および安全性の根拠は不明確なままであった。JAMA誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。

貧血を伴う動脈瘤性くも膜下出血の輸血、非制限戦略vs.制限戦略/NEJM

 動脈瘤性くも膜下出血で貧血を伴う患者において、非制限輸血戦略は制限輸血戦略と比較して12ヵ月後の神経学的アウトカム不良のリスクを改善しなかった。カナダ・オタワ大学のShane W. English氏らが、カナダ、オーストラリアおよび米国の計23施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「Subarachnoid Hemorrhage Red Cell Transfusion Strategies and Outcome:SAHARA試験」の結果を報告した。動脈瘤性くも膜下出血後の集中治療管理中の患者において、制限輸血戦略と比較した非制限輸血戦略の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。

ATTR型心アミロイドーシス、CRISPR-Cas9遺伝子編集療法が有望/NEJM

 心筋症を伴うトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者において、nexiguran ziclumeran(nex-z)の単回投与は、血清TTR値を迅速かつ持続的に減少したことが示された。nex-zと関連がある有害事象としては一過性の注入に伴う反応が認められた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMarianna Fontana氏らが、トランスサイレチン(TTR)遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9を用いた遺伝子編集療法nex-zの、安全性および有効性を評価した第I相非盲検試験の結果を報告した。ATTR-CMは進行性の致死的疾患であるが、nex-zはポリニューロパチーを伴う遺伝性ATTRアミロイドーシス患者において血清TTR値を減少させたことが報告されていた。NEJM誌2024年12月12日号掲載の報告。

更年期のホルモン補充療法、心血管疾患のリスクは?/BMJ

 経口エストロゲン・プロゲスチン療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスク増加と関連していた。一方、tiboloneは、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞のリスク増加と関連していたが、静脈血栓塞栓症とは関連していなかった。スウェーデン・ウプサラ大学のTherese Johansson氏らが、スウェーデン統計局、ならびに保健福祉庁の処方薬登録、全国患者登録、がん登録および死因登録のデータを用いて行った、無作為化比較試験(RCT)を模倣するtarget trialの結果を報告した。閉経後10年以上経過後または60歳を超えてからの経口エストロゲン・プロゲスチン療法開始は、心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症のリスクが増加する可能性が示唆されているが、現行更年期ホルモン補充療法の心血管疾患リスクに関する研究は不足していた。BMJ誌2024年11月27日号掲載の報告。