ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:1

タクシーと救急車の運転手、アルツハイマー病による死亡率低い/BMJ

 タクシーと救急車の運転手は、アルツハイマー病による死亡率がすべての職業の中で最も低いことが、米国・ハーバード医学大学院・ブリガム&ウィメンズ病院のVishal R. Patel氏らによる住民ベースの横断研究で示された。アルツハイマー病で最初に萎縮がみられる脳領域の1つに海馬がある。海馬は空間記憶とナビゲーションに使用される脳領域で、研究グループは、空間処理とナビゲーション処理を頻繁に必要とする職業のタクシーと救急車の運転手について、アルツハイマー病による死亡率を他職業と比較し分析した。先行研究で、タクシー運転手は一般集団と比較して、海馬の機能が強化されていることが示されていた。BMJ誌2024年12月17日号クリスマス特集号「Death is Just Around the Corner」掲載の報告。

低リスクDCIS、積極的モニタリングvs.標準治療/JAMA

 低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する積極的モニタリング(6ヵ月ごとに乳房画像検査と身体検査を実施)は、ガイドラインに準拠した治療(手術±放射線治療)と比較して、追跡2年時点の同側乳房浸潤がんの発生率を上昇せず、積極的モニタリングの標準治療に対する非劣性が示された。米国・デューク大学のE. Shelley Hwang氏らCOMET Study Investigatorsが前向き無作為化非劣性試験「COMET試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。  研究グループは、2017~23年にUS Alliance Cancer Cooperative Groupのクリニック試験地100ヵ所で、ホルモン受容体陽性(HR+)グレード1/2のDCISと新規診断された40歳以上の女性995例を登録して試験を行った。

中等~重度の椎骨脳底動脈閉塞、血管内治療vs.内科的治療/Lancet

 中等度~重度の症状を呈する椎骨脳底動脈閉塞患者において、標準的な内科的治療と比較して血管内治療は強固な有益性を示し、良好な機能的アウトカムの達成の可能性が高く、症候性頭蓋内出血のリスクは有意に増加するものの、全体的な機能障害および死亡率の有意な減少と関連することが、米国・ピッツバーグ大学のRaul G. Nogueira氏らが実施した「VERITAS研究」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年12月11日号で報告された。  研究グループは、急性椎骨脳底動脈閉塞患者における血管内治療の安全性と有効性を評価するために、標準的な内科的治療(対照)と比較した無作為化試験の系統的レビューを行い、患者レベルのデータを統合したメタ解析により、事前に規定したサブグループにおける有益性を検討した(特定の研究助成は受けていない)。

重症血友病A、新たな第VIII因子発現遺伝子治療が有望/NEJM

 第VIII因子インヒビターのない重症血友病A患者において、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した自己造血幹細胞(HSC)による遺伝子治療は、安定した第VIII因子発現が得られ、第VIII因子活性は末梢血中のベクターのコピー数と相関することが、インド・Christian Medical College VelloreのAlok Srivastava氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2024年12月9日号に掲載された。  研究グループは、第VIII因子インヒビターのない重症血友病Aにおけるレンチウイルスベクターを用いた自己CD34陽性HSCによる第VIII因子発現遺伝子治療の安全性と有効性の評価を目的に、インドの単施設において第I相試験を行った(インド政府科学技術省などの助成を受けた)。

敗血症疑い患者の抗菌薬の期間短縮、PCTガイド下vs.CRPガイド下/JAMA

 敗血症が疑われる重篤な入院成人患者において、バイオマーカー(プロカルシトニン[PCT]とC反応性タンパク質[CRP])のモニタリングプロトコールによる抗菌薬投与期間の決定について、標準治療と比較してPCTガイド下では、安全に投与期間を短縮でき全死因死亡も有意に改善したが、CRPガイド下では投与期間について有意な差は示されず、全死因死亡は明らかな改善を確認することはできなかった。英国・マンチェスター大学のPaul Dark氏らADAPT-Sepsis Collaboratorsが、多施設共同介入隠蔽(intervention-concealed)無作為化試験「ADAPT-Sepsis試験」の結果を報告した。敗血症に対する抗菌薬投与の最適期間は不明確であり、投与中止の判断はバイオマーカー値に基づいて行われているが、その有効性および安全性の根拠は不明確なままであった。JAMA誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。

貧血を伴う動脈瘤性くも膜下出血の輸血、非制限戦略vs.制限戦略/NEJM

 動脈瘤性くも膜下出血で貧血を伴う患者において、非制限輸血戦略は制限輸血戦略と比較して12ヵ月後の神経学的アウトカム不良のリスクを改善しなかった。カナダ・オタワ大学のShane W. English氏らが、カナダ、オーストラリアおよび米国の計23施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「Subarachnoid Hemorrhage Red Cell Transfusion Strategies and Outcome:SAHARA試験」の結果を報告した。動脈瘤性くも膜下出血後の集中治療管理中の患者において、制限輸血戦略と比較した非制限輸血戦略の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。

ATTR型心アミロイドーシス、CRISPR-Cas9遺伝子編集療法が有望/NEJM

 心筋症を伴うトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者において、nexiguran ziclumeran(nex-z)の単回投与は、血清TTR値を迅速かつ持続的に減少したことが示された。nex-zと関連がある有害事象としては一過性の注入に伴う反応が認められた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMarianna Fontana氏らが、トランスサイレチン(TTR)遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9を用いた遺伝子編集療法nex-zの、安全性および有効性を評価した第I相非盲検試験の結果を報告した。ATTR-CMは進行性の致死的疾患であるが、nex-zはポリニューロパチーを伴う遺伝性ATTRアミロイドーシス患者において血清TTR値を減少させたことが報告されていた。NEJM誌2024年12月12日号掲載の報告。

更年期のホルモン補充療法、心血管疾患のリスクは?/BMJ

 経口エストロゲン・プロゲスチン療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスク増加と関連していた。一方、tiboloneは、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞のリスク増加と関連していたが、静脈血栓塞栓症とは関連していなかった。スウェーデン・ウプサラ大学のTherese Johansson氏らが、スウェーデン統計局、ならびに保健福祉庁の処方薬登録、全国患者登録、がん登録および死因登録のデータを用いて行った、無作為化比較試験(RCT)を模倣するtarget trialの結果を報告した。閉経後10年以上経過後または60歳を超えてからの経口エストロゲン・プロゲスチン療法開始は、心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症のリスクが増加する可能性が示唆されているが、現行更年期ホルモン補充療法の心血管疾患リスクに関する研究は不足していた。BMJ誌2024年11月27日号掲載の報告。

複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に複雑冠動脈疾患(CAD)を併存する患者において、血流予備量比(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)+経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、外科的大動脈弁置換術(SAVR)+冠動脈バイパス術(CABG)に対して非劣性であることが示された。カナダ・マギル大学ヘルスセンターのElvin Kedhi氏らTCW study groupが、初となる経皮的治療と外科治療を比較した国際多施設共同前向き非盲検無作為化非劣性検証試験「TCW試験」の結果を報告した。重症AS患者では、閉塞性CADを併存していることが多い(~50%)。ESC/EACTSガイドラインでは、SAVR+CABGが推奨されている。一方、FFRガイド下PCIおよびTAVIが有効な治療選択肢となりうることも示されていた。Lancet誌オンライン版2024年12月4日号掲載の報告。

慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA

 心血管系薬剤のリフィル処方を先延ばしにする患者にリマインダーのテキストメッセージを送っても、薬局の処方データに基づく服薬アドヒアランスの改善や、12ヵ月時の臨床イベントの減少は得られなかった。米国・Kaiser Permanente ColoradoのP. Michael Ho氏らが、プラグマティックな無作為化非盲検試験において示した。患者の行動変容にテキストメッセージが用いられるようになってきているが、これまで厳密な検証は行われていないことが多かった。著者は、「服薬アドヒアランスの不良には、複数の要因が関与していると考えられることから、今後の介入ではアドヒアランスに影響を与える複数の要因に対処するよう取り組む必要があるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年12月2日号掲載の報告。

経口SERDのimlunestrant、ER+/HER2-進行乳がんのPFSを改善(EMBER-3)/NEJM

 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)進行乳がん患者において、ESR1(ERαをコードする遺伝子)変異陽性の患者では、imlunestrant単剤療法が標準内分泌療法よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示され、被験者全集団では、imlunestrant+アベマシクリブ併用療法がimlunestrant単剤療法よりもPFSを有意に延長したことが示された。米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのKomal L. Jhaveri氏らEMBER-3 Study Groupが、第III相非盲検無作為化試験「EMBER-3試験」の結果を報告した。imlunestrantは次世代の脳内移行性の高い経口選択的ER分解薬(SERD)で、ESR1変異陽性乳がんにおいても持続的にERを阻害する。NEJM誌オンライン版2024年12月11日号掲載の報告。

慢性B型肝炎への低分子干渉RNA薬xalnesiran、抗原消失率は?/NEJM

 ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ(NA)療法でウイルス学的抑制が得られている慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染患者において、xalnesiranと免疫調節薬の併用療法は高頻度に治療終了後24週時のHBV表面抗原(HBs抗原)の消失をもたらしたが、Grade3または4の有害事象が半数の患者に認められた。中国・南方医科大学のJinlin Hou氏らPiranga Study Groupが、海外第II相多施設共同無作為化非盲検アダプティブプラットフォーム試験「Piranga試験」の結果を報告した。xalnesiranは、HBVゲノムの保存領域を標的とし複数の転写産物を抑制する低分子干渉RNA薬で、免疫調節薬併用の有無にかかわらず慢性HBV感染患者に対する有効性が示されている。今回は、免疫調節薬として、肝臓で選択的に活性化されるToll様受容体7(TLR7)アゴニストのruzotolimod、またはペグインターフェロン アルファ-2a(PEG-IFNα-2a)とxalnesiranの併用、xalnesiran単剤の有効性と安全性が評価された。NEJM誌2024年12月5日号に掲載の報告。

転移を有する去勢抵抗性前立腺がん、放射線療法の追加は有効か/Lancet

 低腫瘍量のde novo転移を有する去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者の治療において、標準治療+アビラテロンと比較して標準治療+アビラテロンに放射線療法を併用すると、画像上の無増悪生存期間(PFS)と去勢抵抗性前立腺がんのない生存期間(無去勢抵抗性生存期間)が有意に延長するが、全生存期間(OS)の改善は得られないことが、フランス・Institut Gustave RoussyのAlberto Bossi氏らが実施した「PEACE-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。

MSI-H/dMMRの進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 全身療法による前治療歴のない、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を示す転移を有する大腸がん患者の治療において、化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ療法は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象が少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らCheckMate 8HW Investigatorsが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年11月28日号に掲載された。  CheckMate 8HW試験は、日本を含む23ヵ国121施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に患者の無作為化を行った(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。

活動期クローン病の導入・維持療法、ミリキズマブが有効/Lancet

 中等症~重症の活動期クローン病患者の導入療法および維持療法において、プラセボまたはウステキヌマブと比較してヒト化抗ヒトIL-23p19抗体ミリキズマブは、安全性は既知の良好なプロファイルと一致し、かつ有効性に関する2つの複合エンドポイントがいずれも有意に良好であることが、ベルギー・ルーベン大学病院のMarc Ferrante氏らが実施した「VIVID-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年11月21日号に掲載された。  VIVID-1試験は、中等症~重症の活動期クローン病におけるミリキズマブの有効性と安全性の評価を目的とするtreat-throughデザインを用いた第III相二重盲検ダブルダミー無作為化プラセボ/実薬対照比較試験であり、2019年7月~2023年8月に日本を含む33ヵ国の324施設で患者の無作為化を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。

再発・難治性B細胞性ALLにobe-celが有効/NEJM

 obecabtagene autoleuce(l以下obe-cel)は、自家41BB-ζ抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であり、毒性作用を軽減してCAR-T細胞の生着と持続性を改善するために、CD19に対する親和性が中等度のCARを使用している。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのClaire Roddie氏らは「FELIX試験」において、再発または難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の成人患者の治療として、obe-celは高い割合で持続的奏効をもたらし、Grade3以上の免疫関連毒性作用の発現率が低いことを示した。研究の成果は、NEJM誌2024年12月12日号で報告された。

レナカパビル年2回投与、男性/ジェンダーダイバースのHIV曝露前予防に有効/NEJM

 男性およびジェンダーダイバースのHIV感染発生率は、レナカパビルの年2回皮下投与により、バックグラウンドおよびエムトリシタビン/テノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(F/TDF)投与と比較して89~96%有意に低下した。米国・エモリー大学のColleen F. Kelley氏らPURPOSE 2 Study Teamが、米国、ブラジル、タイ、南アフリカ、ペルー、アルゼンチンおよびメキシコの計92施設で実施した第III相無作為化二重盲検実薬対照比較試験「PURPOSE 2試験」において示された。年2回のレナカパビル皮下投与は、シスジェンダー女性におけるHIV曝露前予防(PrEP)に有効であることが示されているが、シスジェンダー男性、トランスジェンダー女性、トランスジェンダー男性およびジェンダーノンバイナリーにおけるレナカパビルPrEPの有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。

重度母体合併症、その後の出産減少と関連/JAMA

 最初の出産で重度の母体合併症(SMM)を発症した女性はその後の出産の可能性が低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のEleni Tsamantioti氏らによるコホート研究の結果において示された。SMMを経験した女性は健康問題が長く続く可能性があり、SMMと将来の妊娠の可能性との関連性は不明であった。著者は、「SMMの既往歴がある女性には、適切な生殖カウンセリングと出産前ケアの強化が非常に重要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年11月25日号掲載の報告。  研究グループは、スウェーデンの出生登録(Medical Birth Register)および患者登録(National Patient Register)のデータを用い、コホート研究を実施した。

重症三尖弁逆流、T-TEER+薬物療法vs.薬物療法単独/JAMA

 重症三尖弁逆流症患者において、至適薬物療法(OMT)に加えた三尖弁経カテーテルedge-to-edge修復術(T-TEER)の施行はOMT単独と比較して、三尖弁逆流症の重症度、および患者報告に基づく複合アウトカム(NYHA心機能分類クラス、患者全般評価[PGA])の改善が認められたことが、フランス・レンヌ大学のErwan Donal氏らTri-Fr Investigatorsによる無作為化試験「Tri.Fr試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。  Tri.Fr試験は、重症の症候性三尖弁逆流症患者におけるT-TEER+OMTとOMT単独の有効性を評価した研究者主導の前向き無作為化試験で、2021年3月18日~2023年3月13日に、フランスおよびベルギーの24施設で行われた。最終フォローアップは2024年4月。

ダークチョコレートで2型糖尿病リスク低減か/BMJ

 ダークチョコレートの摂取量増加は2型糖尿病リスク低下と関連したが、ミルクチョコレートではそのような関連はみられなかった。ミルクチョコレートの摂取量増加は長期的な体重増加と関連したが、ダークチョコレートではそのような関連はみられなかった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のBinkai Liu氏らが、米国の看護師および医療従事者を対象とした大規模前向きコホート研究のデータを用いて行った解析の結果を報告した。チョコレートにはフラバノールが多く含まれ、無作為化試験で心代謝へのベネフィットや2型糖尿病のリスクを軽減することが示されている。ただしチョコレートの摂取と2型糖尿病のリスクとの関連性は観察試験では一貫した結果が示されておらず、なお議論の的となっていた。研究グループは、ダークチョコレートとミルクチョコレートでは、カカオ含有量や砂糖、ミルクといった成分割合が異なり、2型糖尿病リスクとの関連性が異なる可能性があるとして、これまで行われていなかったチョコレートの種類(ダークチョコレート、ミルクチョコレート)との関連を調べた。BMJ誌2024年12月4日号掲載の報告。