ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:119

出生児の有害アウトカム、不妊治療が原因か?/Lancet

 自然妊娠の子供に比べmedically assisted reproduction(MAR)で妊娠した子供は、有害な出生アウトカムのリスクが高いが、そのほとんどはMAR以外の要因によることが、英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のAlice Goisis氏らの検討で示された。すでにMARで出生した子供は500万人以上に上り、これらの子供のウェルビーイング(wellbeing)に及ぼすMARの影響の検討が活発化しているという。MARとは、生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)に加え、排卵誘発、調節卵巣刺激、配偶者/パートナーまたはドナーの精液を用いた子宮内・子宮頸管内・膣内受精などによる生殖を含めた概念である。ARTは、妊娠を促す目的で、卵母細胞と精子の双方あるいは胚を体外で操作する処置または治療であり、体外受精や胚移植のほか、配偶子卵管内移植、接合子卵管内移植、配偶子・胚の凍結保存、卵母細胞・胚の提供、代理母出産などが含まれる。Lancet誌オンライン版2019年1月14日号掲載の報告。

ヘモクロマトーシスの遺伝子変異、一般的な疾患とも関連/BMJ

 HFE遺伝子p.C282Y変異のホモ接合体は、性別を問わず、臨床的に診断された一般的な疾患(肝疾患、糖尿病、関節リウマチ、変形性関節症など)の有病率や発生率と関連があり、鉄過剰に関連するp.C282Y変異は、早期に介入を開始すれば予防および治療の可能性があることが、英国・エクセター大学のLuke C. Pilling氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。欧州人家系では、HFE遺伝子p.C282Y変異ホモ接合体は、鉄過剰症である遺伝性ヘモクロマトーシス(1型)の主因とされる。鉄過剰症は瀉血療法により予防可能であり、治療が可能な場合もあるが、見逃しや診断の遅延が多いという。

食物繊維は健康関連アウトカムを改善、低GI食の効果は?/Lancet

 ニュージーランド・オタゴ大学のAndrew Reynolds氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、食物繊維の摂取量増加および全粒穀物摂取を推奨することは、人々の健康に有益と考えられることが示された。炭水化物の質と健康との関連性を検証したこれまでのシステマティックレビューとメタ解析では、1つのマーカーを検証したものが多く、臨床アウトカムの数は限定的であった。Lancet誌オンライン版2019年1月10日号掲載の報告。

多発性硬化症進行、疾患修飾薬による違いは?/JAMA

 再発寛解型多発性硬化症(MS)患者において、フィンゴリモド、アレムツズマブ、ナタリズマブによる初回治療は、グラチラマー酢酸塩またはインターフェロンβ(IFNβ)による初回治療と比較し、二次性進行型MSへの移行リスクが低い。英国・ケンブリッジ大学のJ. William L. Brown氏らが、疾患修飾薬(DMT)の使用と二次性進行型MSへの移行リスクとの関連性を検証した前向きコホート研究の結果を報告した。未治療の再発寛解型MS患者の80%は20年以内に二次性進行型MSに移行するが、DMTと二次性進行型MSへの移行との関連性について妥当性が確認された定義を用いた研究はほとんどなかった。著者は今回の結果について、「DMTを選択する際に役立つ可能性がある」とまとめている。JAMA誌2019年1月15日号掲載の報告。

三日熱マラリアの再発予防にtafenoquine単回投与は有効か?/NEJM

 三日熱マラリア原虫(P.vivax)マラリアの患者に対し、tafenoquineの単回投与は、再発予防に関して、プリマキン14日間投与に対する非劣性は示されなかった。グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)活性が正常値の患者において、ヘモグロビン値低下の有意差は認められなかった。ペルー・Peruana Cayetano Heredia大学のA. Llanos-Cuentas氏らが行った、第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験の結果で、著者は「tafenoquineはP.vivaxマラリアの根治治療(radical cure)に有効ではあるが、プリマキンに対する非劣性は示されなかった」とまとめている。tafenoquineの単回投与は、“根治治療”と称されるP.vivax血症と休眠体の消失により、再発予防と関連することが示されていた。NEJM誌2019年1月17日号掲載の報告

太れば太るほど、GFR低下・死亡リスク増/BMJ

 肥満は、慢性腎臓病(CKD)の有無にかかわらず、糸球体濾過量(GFR)の低下および死亡のリスク増大と関連することが明らかにされた。米国・Geisinger Health SystemのAlex R. Chang氏らが、40ヵ国のコホートを基に分析した結果で、BMJ誌2019年1月10日号で発表した。これまで肥満と末期腎疾患(ESKD)との関連は示されているが、関連の程度は試験間でばらつきがみられていた。また、CKDのコホート試験で、肥満はリスク増大とは関連せず、死亡リスクは低いことが示されていた。BMI値とCKDの関連を検討したメタ解析では、被験者データが不足しており、ウエスト囲など体幹部肥満の計測値が含まれておらず結果が限定的だった。研究グループは、肥満計測値(BMI値、ウエスト囲、ウエスト身長比)とGFR低下および全死因死亡との関連を調べた。

ホルモン補充療法のVTEリスク、製剤で異なる/BMJ

 ホルモン補充療法(HRT)による静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクは、製剤のタイプによって異なり、経口薬は全般にリスクが高く、経皮吸収薬はリスクと関連がないことが、英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年1月9日号に掲載された。更年期症状がみられる女性の無作為化対照比較試験では、HRTを受けている女性は受けていない女性に比べVTEリスクが高いと報告されているが、ほとんどの試験は結合型エストロゲン製剤または結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロン配合薬が使用されている。また、観察研究では、HRTは全般にリスクの上昇と関連するとされるが、異なるタイプの製剤の詳細な比較に関して、これらの研究には十分な検出力はなかったという。

食道がんのハイブリッド低侵襲食道切除術、重大な合併症を低減/NEJM

 食道がんに対するハイブリッド低侵襲食道切除術は、開胸食道切除術に比べ術中・術後の重大な合併症の発生率が低く、3年時の全生存率および無病生存率は低下しないことが、フランス・Claude Huriez University HospitalのChristophe Mariette氏の検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年1月10日号に掲載された。ハイブリッド低侵襲食道切除術は、腹腔鏡を用いる経腹的アプローチと開胸食道切除術を組み合わせた手術法で、肺合併症が少なく、手技の再現が容易などの利点があるとされる。開胸食道切除術では、半数以上の患者で肺合併症を主とする術後合併症が認められるが、合併症に関してハイブリッド低侵襲食道切除術との比較はこれまで行われていなかった。

アキレス腱断裂、手術・非手術とも再断裂リスクは低い/BMJ

 アキレス腱断裂の手術療法は、非手術療法に比べ、再断裂のリスクが有意に低いもののその差は小さく(リスク差:1.6%)、他の合併症のリスクが高い(リスク差:3.3%)ことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのYassine Ochen氏らの検討で示された。アキレス腱断裂は遭遇する頻度が高く、最近の研究では発生率の増加が報告されている。観察研究を含まない無作為化対照比較試験のみのメタ解析では、手術療法は非手術療法に比べ、再断裂リスクが有意に低い(リスク差:5~7%)が、他の合併症のリスクは16~21%高いとされる。BMJ誌2019年1月7日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

後天性血栓性血小板減少性紫斑病の治療にcaplacizumabが有望/NEJM

 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)の治療において、caplacizumabはプラセボに比べ、迅速に血小板数を正常化し、再発率を抑制することが、英国・University College London HospitalsのMarie Scully氏らが行ったHERCULES試験で示された。aTTPでは、von Willebrand因子の切断酵素であるADAMTS13の免疫介在性の欠損により、von Willebrand因子マルチマーが血小板や微小血栓に無制限に粘着可能となり、その結果として血小板減少、溶血性貧血、組織虚血が引き起こされる。caplacizumabは、抗von Willebrand因子ヒト化二価単一可変領域免疫グロブリンフラグメントであり、von Willebrand因子マルチマーと血小板の相互作用を阻害するという。NEJM誌オンライン版2018年1月9日号掲載の報告。

ノンシュガー甘味料の健康への影響~メタ解析/BMJ

 ドイツ・フライブルク大学のIngrid Toews氏らによる無作為化/非無作為化比較試験および観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、ノンシュガー甘味料(non-sugar sweeteners:NSS)の摂取群と非摂取群とでほとんどの健康上のアウトカムに差はみられないことが示された。ただし、著者は「NSSの摂取が有益であるという有力な証拠はなく、NSS摂取の潜在的な有害性が排除されたわけではない」とまとめている。これまでの研究では、NSS摂取による健康への影響(体重、糖尿病、がん、口腔衛生など)が示唆されていたが、一貫したエビデンスは得られていなかった。BMJ誌2019年1月2日号掲載の報告。

心筋梗塞患者、薬剤費負担なしの継続支援策は有効か/JAMA

 心筋梗塞(MI)患者において、P2Y12阻害薬の薬剤費の一部自己負担を補う商品券(バウチャー)を提供した場合、商品券を提供しなかった場合と比較して、患者報告によるP2Y12阻害薬服薬継続率の増加は3.3%であり、1年時における主要有害心血管イベント(MACE)について有意な低下は認められなかった。米国・Duke Clinical Research InstituteのTracy Y. Wang氏らが、18歳以上の急性MI患者を対象に、薬剤費自己負担の障壁を取り除くことによるP2Y12阻害薬服薬継続率とMACEリスクを検討した無作為化試験「ARTEMIS(Affordability and Real-World Antiplatelet Treatment Effectiveness After Myocardial Infarction Study)」の結果を報告した。ガイドラインではMI後1年間のP2Y12阻害薬治療が推奨されているが、推奨よりも早く中断する患者が多く、その理由として費用の問題が大きいことが推察されていた。JAMA誌2019年1月1・8日号掲載の報告。

血中hsCRP高値の現・元喫煙者、肺がんリスク高い/BMJ

 血中高感度C反応性蛋白(hsCRP)が高値の元喫煙者および現喫煙者は、肺がんリスクが高いことが示された。一方で、hsCRP値と肺腺がんリスクの関連は認められず、hsCRP値は、原因となるリスク因子ではなく肺がんの診断前マーカーとなりうる可能性が示されたという。国際がん研究機関(IARC、本部:フランス)のDavid C. Muller氏らが、20のコホート試験を基に行った、コホート内ケースコントロール試験の結果で、BMJ誌2019年1月3日号で発表した。先行研究では、CRPは全身性炎症のマーカーで、肺がんリスクと関連することが示されていた。しかし、喫煙状態別(喫煙歴なし、元喫煙、現喫煙)の関連について正確な推定値を示すことが可能な規模の試験はなかった。

急性STEMI、PCI中の早期にアルテプラーゼ投与は有効か/JAMA

 発症後6時間以内の急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中の補助的な低用量アルテプラーゼ冠動脈内投与は、微小血管閉塞量を低下しないことが示された。英国・グラスゴー大学のPeter J. McCartney氏らが440例の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年1月1・8日号で発表された。微小血管閉塞は概して、急性STEMI患者に影響を及ぼし、有害転帰と関連することが知られる。著者は「試験の結果は、このような治療法を支持しないものだった」とまとめている。

変形性膝関節症の痛み、薬物療法の長期効果は/JAMA

 変形性膝関節症患者における薬物療法による長期的な疼痛緩和効果には、プラセボと比較して考慮すべき不確実性が存在することが、イタリア・パドバ大学のDario Gregori氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。変形性関節症は、慢性で進行性の疾患だが、薬物療法は主に短期の検討が行われており、そのため長期の疾患管理における推奨治療が不明確になっているという。  研究グループは、変形性膝関節症患者を12ヵ月以上追跡した薬物療法の無作為化臨床試験を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(パドバ大学などの助成による)。

リンゴ型の脂肪分布、腹部と臀部で異なる遺伝的機序が関与か/JAMA

 ウエスト/ヒップ比(WHR)の算出の基礎となる腹部(ウエスト)および殿大腿部(ヒップ)の脂肪分布には、それぞれ異なる遺伝メカニズムが関連している可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のLuca A. Lotta氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。一般にWHRで評価される体脂肪分布は、BMIとは独立の重要な心血管代謝疾患の寄与因子とされるが、腹部の高脂肪分布または殿大腿部の低脂肪分布によるWHR増加が心血管代謝疾患リスクに影響を及ぼすかは不明だという。

高カロリーなのはファストフードだけではない/BMJ

 外食のエネルギー量は、フルサービス食およびファストフード食のいずれもきわめて高く、むしろファストフード食のほうが低い傾向があり、これは広範な地域でみられる現象で、世界的な肥満の下支えとなっている可能性が、米国・タフツ大学のSusan B. Roberts氏らの調査で明らかとなった。肥満の有病率は多くの国で増加し続けている。大規模にチェーン展開しているレストランの栄養情報によると、ファストフードは世界的な肥満の最も重要な寄与因子とされるが、他の形式のレストランの食事については、エネルギー量の測定データがなく、肥満への寄与の程度はほとんど知られてないという。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

再入院削減プログラム、死亡率を増大?/JAMA

 米国のメディケア受給者では、再入院削減プログラムにより、心不全および肺炎による入院患者の退院後30日以内の死亡率がむしろ増加することが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのRishi K. Wadhera氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。HRRPは、「患者保護ならびに医療費負担適正化法(ACA)」の下で2010年に成立し、2012年からは、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)に、心不全、急性心筋梗塞、肺炎患者の30日再入院率が予想を上回った病院に対し制裁金を課すことが求められている。その成果として、HRRPはこれらの疾患による再入院率を抑制することが示されたが、死亡率への影響は知られていなかった。

集団感染発生の多剤耐性菌、温床は院内配管/NEJM

 スフィンゴモナス・コリエンシス(Sphingomonas koreensis)は、米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターのインフラに時間と空間を超えて持続的に存在し、医療関連感染症を引き起こすヒト日和見病原体であることを、米国・国立ヒトゲノム研究所のRyan C. Johnson氏らがゲノム疫学調査で突き止めた。病院内の配管システムは、頻度は低いものの入院患者が感染する可能性がある日和見感染病原体の温床として知られている。今回の調査は、2016年に発生したスフィンゴモナス種細菌の集団感染を受けて行われた。NEJM誌2018年12月27日号掲載の報告。

子供がいる米国女医、職場内差別を経験/BMJ

 米国・カリフォルニア大学のMeghan C. Halley氏らが実施した大規模な質的研究の結果、子供を持つ女性医師は、母親ゆえに、頻繁で持続的な、時には露骨な差別を経験していることが明らかになった。そうした母親差別の経験は、他の専門職の女性らの報告と合致する一方で、医師研修に特有の側面もあること、また母親差別を助長する同僚(medical profession)が存在することも示唆されたという。先行研究で、女性医師の3分の2以上が性的な差別を、また女性臨床研究医の3分の1はセクシャルハラスメントを経験しているという報告はあったが、母親ゆえの差別あるいはその後の医師としてのキャリアへの影響に関するデータは限られていた。今回の結果を受けて著者は、「医学・医療分野における母親差別の影響を緩和するためには、出産・育児休暇、保育への取り組みの構造的な変化が必要である」と見解を述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。