JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、とくに男性において、血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞にとって有害であることを、中国・香港大学のShan Luo氏らが、UK Biobankのデータを用いたメンデル無作為化試験の結果、明らかにした。テストステロン補充療法は世界的に増大しているが、心血管疾患でどのような役割を果たすのか、エビデンスは示されていない。そうした中、最近行われたメンデル無作為化試験で、遺伝的予測の内因性テストステロンが、虚血性心疾患や虚血性脳卒中と、とくに男性において関連していることが示されていた。検討の結果を踏まえて著者は、「内因性テストステロンは、現在の治療法でコントロール可能であり、血栓塞栓症や心不全のリスク因子は修正可能である」と述べている。BMJ誌2019年3月6日号掲載の報告。
UK Biobank40~69歳の英国人男女39万2,038例のデータを用いて評価
研究グループは、内因性テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞と因果関係を有するのかを明らかにするため、無作為化試験「Reduction by Dutasteride of Prostate Cancer Events(REDUCE)」の被験者から遺伝的予測の内因性テストステロンを入手。UK Biobankのデータを用いて、それらテストステロンと血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞との関連性を評価し、「CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomes」でゲノムワイドベースの関連性検証試験を行った。
被験者数は、REDUCE試験は50~75歳の欧州系の男性3,225例、UK Biobankは40~69歳の英国人男女39万2,038例、CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomesは17万1,875例(約77%が欧州直系)であった。
主要評価項目は、自己申告と、病院エピソードおよび死亡記録に基づく血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞の発生であった。
JMJD1C遺伝子変異を活用、女性では関連性認められず
UK Biobankの被験者のうち、血栓塞栓症の発生は1万3,691例(男性6,208例、女性7,483例)、心不全は1,688例(それぞれ1,186例、502例)、心筋梗塞は1万2,882例(1万136例、2,746例)であった。
男性において、
JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、血栓塞栓症(対数変換テストステロン値[nmol/L]の単位増加当たりのオッズ比[OR]:2.09、95%信頼区間[CI]:1.27~3.46、p=0.004)、心不全(7.81、2.56~23.81、p=0.001)と明らかな関連性が認められたが、心筋梗塞との関連性は認められなかった(1.17、0.78~1.75、p=0.44)。ただし検証試験では、被験者全体において、
JMJD1C遺伝子変異による遺伝的予測の内因性テストステロンと心筋梗塞の、明らかな関連性が認められた(1.37、1.03~1.82、p=0.03)。
女性においては、いずれも明らかな関連性はみられなかった(ORは血栓塞栓症:1.49[p=0.09]、心不全:0.53[p=0.47]、心筋梗塞:0.91[p=0.80])。
アウトカムと関連する遺伝子変異において、過剰な不均一性は観察されなかった。一方で、潜在的な
SHBG遺伝子多面的変異で予測した遺伝的内因性テストステロンが、アウトカムと関連しないことも示された。
(ケアネット)