ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:109

遺伝学的に血清Caが高い人は骨折しにくいのか/BMJ

 正常カルシウム値の集団において、血清カルシウムを増加させる遺伝的素因は、骨密度の上昇とは関連せず、臨床的に意義のある骨折予防効果をもたらさないことが、カナダ・マギル大学のAgustin Cerani氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年8月1日号に掲載された。カルシウム補助剤は、一般住民において広く使用されており、骨折リスクの低減を意図して用いられることが多いが、冠動脈疾患のリスクを増大させることが知られており、骨の健康への保護効果は依然として不明とされる。

慈善団体の患者支援プログラム、経済的困窮者の多くが対象外/JAMA

 米国の大規模な独立慈善団体が運営する疾患別患者支援プログラム(274件)の97%が、無保険患者を対象外としており、また、プログラムがカバーしている医薬品の年間薬剤費はカバー対象外の医薬品と比べ3倍以上であることが、同国ジョンズホプキンス大学のSo-Yeon Kang氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。米国の独立慈善団体による患者支援プログラムは、高額な処方薬への患者アクセスを改善するが、最近の連邦政府の調査では、薬剤費の増大や反キックバック法違反の疑いが生じている。また、これらプログラムの構成や患者の適格基準、カバーされる医薬品の詳細はほとんど知られていないという。

心房細動を洞調律から検出、AI対応ECGによるPOCT/Lancet

 新たに開発された人工知能(AI)対応心電図(ECG)アルゴリズムを用いた臨床現場即時検査(point of care test:POCT)は、標準12誘導ECGで洞調律の集団の中から心房細動患者を同定できることが、米国・メイヨー・クリニックのZachi I. Attia氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号に掲載された。心房細動は無症状のことが多いため検出されない場合があるが、脳卒中や心不全、死亡と関連する。既存のスクリーニング法は、長期のモニタリングを要するうえ、費用の面と利益が少ないことから制限されている。

妊娠性肝内胆汁うっ滞症、ウルソデオキシコール酸常用は再考を/Lancet

 妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦をウルソデオキシコール酸で治療しても、周産期の有害転帰は低下しないことから、ウルソデオキシコール酸の常用は再考されるべきである。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLucy C. Chappell氏らが、イングランドとウェールズの33施設で妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦を対象に実施した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(PITCHES)の結果を報告した。妊婦の皮膚掻痒と血清胆汁酸濃度の上昇で特徴づけられる妊娠性肝内胆汁うっ滞症は、死産、早産、新生児治療室への入室の増加と関連がある。ウルソデオキシコール酸はこの治療に広く使用されているが、先行研究では症例数が限られており統計学的な有意差もなく、エビデンスは不十分であった。Lancet誌オンライン版2019年8月1日号掲載の報告。

認知機能低下と入院の関連、外科と内科で違いは/BMJ

 手術による2泊以上の入院は、平均的な認知機能の経過(the cognitive trajectory)にわずかながら影響を及ぼしたが、非外科的入院ほどではなかった。重大な認知機能低下のオッズは、外科手術後で約2倍であり、非外科的入院の約6倍よりも低かったという。米国・ウィスコンシン大学のBryan M. Krause氏らが、加齢に伴う認知機能の経過と大手術との関連を定量化する目的で行った前向き縦断的コホート研究の結果を報告した。手術は長期的な認知障害と関連する可能性があるが、これらの関連性を検討した先行研究では、認知機能低下が加齢に伴い加速するという認知機能の経過を考慮しておらず、方法論的な問題のため一貫した結果が得られていなかった。著者は、「本研究の情報は、インフォームドコンセントの際に、手術による健康上の有益性の可能性と比較検討されるべきである」とまとめている。BMJ誌2019年8月7日号掲載の報告。

認知症リスクに50歳での心血管健康度が関連/BMJ

 中年期に推奨される心血管健康スコア「ライフ シンプル7」の順守が、晩年における認知症リスク低下と関連していることが明らかにされた。「ライフ シンプル7」では、生活習慣や血糖値、血圧など7つの項目をスコア化し心血管リスクの指標としている。フランス・パリ大学のSeverine Sabia氏らが、約8,000例を約25年間追跡した、前向きコホート試験により明らかにし、BMJ誌2019年8月7日号で発表した。  研究グループは、ロンドンの公務員を対象に行われたWhitehall II試験(1985~88年に登録)の参加者で、50歳時点における心血管健康スコアのデータがあった7,899例を対象に前向き試験を行った。

重症妊娠高血圧、経口薬ではニフェジピンがより効果大か/Lancet

 医療資源が乏しい環境下の重症高血圧症の妊婦について、基準値への降圧を図る経口薬治療の効果を検証した結果、ニフェジピン、メチルドパ、ラベタロールのいずれもが現実的な初回選択肢であることが示された。3薬間の比較では、ニフェジピンの降圧達成率がより高かったという。米国・ワシントン大学のThomas Easterling氏らが、これまで検討されていなかった3種の経口降圧薬の有効性と安全性を直接比較する多施設共同非盲検無作為化比較試験を行い、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号で発表した。高血圧症は妊婦における最も頻度の高い内科的疾患であり、重症例では広く母体のリスク低下のための治療が推奨される。急性期治療としては一般に静脈投与や胎児モニタリングが有効だが、医療従事者が多忙であったり医療資源が限られている環境下では、それらの治療は困難であることから研究グループは本検討を行った。

70歳以下のCLLの1次治療、イブルチニブ+リツキシマブ併用が有効/NEJM

 70歳以下の未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、イブルチニブ+リツキシマブ併用レジメンは標準的な化学免疫療法レジメンと比較して、無増悪生存(PFS)と全生存(OS)がいずれも有意に優れることが、米国・スタンフォード大学のTait D. Shanafelt氏らが行ったE1912試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月1日号に掲載された。70歳以下の未治療CLL患者の標準的な1次治療は、フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによる化学免疫療法とされ、とくに免疫グロブリン重鎖可変領域(IGHV)の変異を有する患者で高い効果が確認されているが、重度の骨髄抑制や、わずかながら骨髄異形成のリスクがあるほか、T細胞免疫抑制による日和見感染などの感染性合併症を含む毒性の問題がある。ブルトン型チロシンキナーゼの不可逆的阻害薬であるイブルチニブは、第III相試験において、フレイルが進行したため積極的な治療を行えない未治療CLL患者でPFSとOSの改善が報告されているが、70歳以下の患者の1次治療のデータは少ないという。

急性期PE、年間症例数が多い病院で死亡率低下/BMJ

 急性症候性肺塞栓症患者では、本症の年間症例数が多い病院(high volume hospitals)へ入院することで、症例数が少ない病院に比べ、30日時の本症に関連する死亡率が低下することが、スペイン・Ramon y Cajal Institute for Health Research(IRYCIS)のDavid Jimenez氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年7月29日号に掲載された。hospital volumeは、内科的/外科的疾患のアウトカムの決定要因として確立されている。一方、急性肺塞栓症発症後の生存に、hospital volumeが関連するかは知られていないという。

米国の必須医薬品年間支出額、2011~15年で2倍以上に/BMJ

 米国のWHO必須医薬品関連の支出額は、2011年の119億ドルから2015年には258億ドルへと増加し、その多くを2つの高価なC型肝炎ウイルスの新規治療薬(ソホスブビル、レジパスビル/ソホスブビル配合剤)が占め、この期間に増加した支出総額の約22%は既存薬の単位当たりの費用の増加による可能性があることが、米国・ハーバード大学医学大学院のDavid G. Li氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月17日号に掲載された。WHO必須医薬品モデルリストは、基本的な保健医療システムに必要最小限の医薬品を構成する重要な医薬品類と定義される。米国の後発医薬品市場は競争が激しいが、2008~15年に競争が不十分な状況となり、約400種の後発薬の価格が100倍以上に値上がりした。そのため、治療のアドヒアランスが低下し、患者アウトカムへの悪影響や、保健医療費の長期的な高騰を招く恐れがあるという。

2型糖尿病リスク、遺伝的負荷と食事脂肪の交互作用なし/BMJ

 遺伝的負荷と食事脂肪の質は、それぞれ2型糖尿病の新規発生と関連しており、2型糖尿病の発生に関して遺伝的負荷と食事脂肪の質に交互作用はないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJordi Merino氏らCHARGE Consortium Nutrition Working Groupの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月25日号に掲載された。2型糖尿病は、遺伝因子や生活習慣因子の影響を強く受ける複雑な疾患であり、食事の質の改善を目指す推奨は、2型糖尿病の予防と治療における重要な要因とされる。

高血圧治療戦略、心血管疾患予防にはQRISK2準拠が望ましい/Lancet

 心血管疾患リスクスコアに基づいた治療戦略「QRISK2≧10%」は、NICEガイドライン2011年版の約1.4倍、同2019年版の約1.2倍多く心血管疾患を予防可能であるという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のEmily Herrett氏らが、英国で用いられている高血圧治療戦略の意義を検証した後ろ向きコホート研究の結果を報告した。血圧スペクトル全体での血圧低下が有益であるという強力なエビデンスにもかかわらず、世界中で広く推奨されている降圧療法は主に血圧閾値を目標としており、リスクに基づいて治療を決定することの効果とその後の心血管疾患の発生については明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2019年7月25日号掲載の報告。

片頭痛急性期にrimegepantのOD錠が有効か/Lancet

 片頭痛急性期の治療として、低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬rimegepantの口腔内崩壊錠75mg単回投与は、プラセボよりも有効で、忍容性は同等であり安全性の懸念はないことが、米国・Biohaven PharmaceuticalsのRobert Croop氏らによる、第III相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。先行研究により、標準的な錠剤のrimegepantについて、片頭痛急性期治療における有効性が示されていた。Lancet誌オンライン版2019年7月13日号掲載の報告。

ART実施のHIV陽性者、同性間でコンドーム不使用でも伝播せず/Lancet

 抗レトロウイルス薬療法(ART)によりウイルス量が抑制されているHIV陽性の男性同性愛者が、HIV陰性の同性パートナーとコンドームを使用せずに性行為を行っても、陰性パートナーへのHIV伝播リスクはゼロであることが示唆されたという。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlison J. Rodger氏らが行った「PARTNER」試験の結果で、Lancet誌2019年6月15日号で発表した。これまでの試験で、異性間カップルでは同リスクがゼロであることは明らかになっていた。著者は「今回の結果は、“U=Uキャンペーン”のメッセージを支持するものであり、HIVの早期検査と治療のベネフィットを裏付けるものである」と述べている。 コンドーム不使用の性行為をした同性カップルを追跡 PARTNER試験は、ヨーロッパ14ヵ国、75ヵ所の医療機関を通じて行われた前向き観察試験。2010年9月15日~2014年5月31日に行った「PARTNER1」試験では、パートナーがHIV陽性でARTを受けウイルスが抑制されている異性愛者カップルおよび男性同性愛者のカップルで、コンドーム不使用の性行為を報告したカップルを対象に追跡を行った。その後延長して行われた「PARTNER2」試験(追跡終了2018年4月30日)では、男性同性愛者カップルのみを追跡した。  追跡中の受診時に、性行為に関する質問、HIV陰性パートナーに対するHIV検査、HIV陽性パートナーに対するHIV-1ウイルス量測定検査を行った。HIV陰性パートナーに抗体陽転が見つかった場合には、匿名で系統学的検査を行い、HIV-1 polとenvを比較してパートナーからの感染可能性を検証した。  解析対象(カップル追跡年)には、コンドーム不使用の性行為を報告したカップルで、HIV陰性パートナーから性行為前・後の予防投与の報告がなく、HIV陽性パートナーのウイルス量が抑制されていた(直近1年以内の検査で血中HIV-1 RNA<200コピー/mL)場合のみを適格として組み入れた。 カップル782組を中央値2.0年追跡 2010年9月15日~2017年7月31日にかけて、972組の男性同性愛カップルが試験に登録された。カップル追跡年数は1,593(782組)カップル年、追跡期間中央値は2.0年(IQR:1.1~3.5)だった。ベースラインのHIV陽性パートナーの年齢中央値は40歳(同:33~46)、コンドーム不使用の性行為の期間中央値は1.0年(同:0.4~2.9)だった。  解析対象としたカップル追跡年における、コンドーム不使用の肛門性行為の報告回数は7万6,088回だった。また、HIV陰性男性777例のうち、288例(37%)がパートナー以外とのコンドーム不使用の性行為を報告した。  カップル追跡年において、新規HIV感染の発生は15例だった。しかし、いずれも系統学的にパートナーから伝播ではなく、ARTを受けるHIV陽性パートナーからのHIV伝播率はゼロと認められた(95%信頼区間上限値:0.23/100カップル追跡年)。

妊娠中の新型インフルワクチン接種、出生児5歳までのアウトカム/BMJ

 妊娠中に受けた2009年パンデミックH1N1(pH1N1)インフルエンザワクチン接種と、出生児の5歳までの健康アウトカムについて、ほとんど関連性は認められないことが、カナダ・オタワ大学のLaura K. Walsh氏らにより報告された。10万例超の出生児を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果で、若干の関連性として、喘息の増加と消化器感染症の低下が観察されたが、著者は「これらのアウトカムは、さらなる検討で評価する必要がある」と述べている。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。

抗凝固療法終了後のVTE、10年で3分の1以上が再発/BMJ

 非誘発性の静脈血栓塞栓症(VTE)の初回エピソードを発症し、3ヵ月を超える抗凝固療法を終了した患者における累積VTE再発率は、2年で16%、5年で25%、10年では36%に達することが、カナダ・オタワ大学のFaizan Khan氏らMARVELOUS共同研究グループの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年7月24日号に掲載された。抗凝固療法は、非誘発性VTEの初回エピソード後のVTE再発リスクの抑制において高い効果を発揮するが、この臨床的な有益性は抗凝固療法を中止すると維持されなくなる。抗凝固療法を無期限に中止または継続すべきかの判断には、中止した場合のVTE再発と、継続した場合の大出血という長期的なリスクとのバランスの考慮が求められるが、中止後のVTE再発の長期的なリスクは明確でないという。

子供の体脂肪量測定、正確で簡便な方法を開発/BMJ

 身長、体重、年齢、性別、民族という5つの因子に基づき、子供の体脂肪量をBMIより正確に測定する可能性のある新たなモデルが開発された。英国・ロンドン大学のMohammed T. Hudda氏らが、BMJ誌2019年7月24日号で報告した。体重に基づく尺度として、BMIは非脂肪量(lean mass)と脂肪量(fat mass)を判別せず、既定のBMIの集団でも脂肪量に大きなばらつきがあり、心血管代謝疾患のリスクとの関連にも違いが生じる可能性があるという。子供の体脂肪量の評価を改善するために、日常的に利用しやすい測定値に基づく、より正確で簡便な方法が求められている。

低~中所得国の高血圧ケア、その継続性は?/Lancet

 低~中所得国(LMIC)では、高血圧ケアを継続中の患者が、どの段階でケアを受けなくなるかに関する全国調査のエビデンスが少ない。一方、この情報は、保健医療サービス介入の効果的な対象の設定や、高血圧ケアの改善の進展評価において重要だという。米国・ハーバード公衆衛生大学院のPascal Geldsetzer氏らは、LMICにおける高血圧ケアの中断の現況を調査・評価し、Lancet誌オンライン版2019年7月18日号で報告した。  研究グループは、44ヵ国のLMICにおいて、ケアの過程(ケアの必要性から治療の成功まで)の個々の段階でその消失を評価することにより、4段階の高血圧ケアカスケード(血圧測定、高血圧の診断、治療、高血圧コントロール)の達成状況を、国別および集団別に検討する目的で、横断研究を実施した(Harvard McLennan Family Fundなどの助成による)。

高血糖の脳梗塞患者、強化血糖コントロールは有効か/JAMA

 高血糖を有する急性期虚血性脳卒中患者の治療において、最長72時間の強化血糖コントロールは標準治療と比較して、90日時に機能アウトカムが良好な患者の割合に差はないことが、米国・バージニア大学のKaren C. Johnston氏らが行った「SHINE試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年7月23日号に掲載された。急性期虚血性脳卒中患者では、高血糖は不良な転帰と関連するが、高血糖への強化治療の効果は知られていないという。  本研究は、米国の70施設が参加した無作為化臨床試験であり、2012年4月~2018年8月の期間に63施設から1例以上の患者が登録された(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]などの助成による)。

長期透析患者の貧血、roxadustat vs.エポエチンアルファ/NEJM

 透析を受ける中国人患者の貧血治療において、経口roxadustatは非経口製剤のエポエチンアルファに対して非劣性であることが示された。中国・上海交通大学医学院のNan Chen氏らが、roxadustatの有効性および安全性を評価した第III相無作為化非盲検実薬対照比較試験の結果を報告した。roxadustatは、経口投与が可能な低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬で、赤血球造血を刺激し鉄代謝を調整することが実証されている。透析施行中の貧血患者に対する治療薬として、標準治療である赤血球造血刺激因子製剤と比較した場合の有効性と安全性に関して、さらなるデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2019年7月24日号掲載の報告。