腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:13

adagrasib:KRAS G12C変異陽性NSCLCに対する2次治療の新たな選択肢(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 「KRYSTAL-12試験」の結果は、KRASG12C変異陽性NSCLCに対する2次治療の新たな標準選択肢が確立した点が重要と捉えられる。従来、1次治療であるプラチナ併用化学療法+免疫チェックポイント阻害薬による治療後に病勢進行したNSCLCに対しては、ドセタキセル±ラムシルマブなどが標準的であった。しかし、本試験ではKRASG12C変異を有する集団では従来の殺細胞性抗がん剤よりも標的治療adagrasibのほうが無増悪生存期間を延長し、腫瘍縮小効果も高いことが明確に示された。安全性プロファイルの観点でも、adagrasibは経口薬である利便性や重篤な骨髄抑制などが少ない点で有利と考えられる。消化器症状や肝機能上昇といった副作用はあるものの、治療継続困難となる症例割合は少ない。実際、治療関連有害事象による中止はadagrasib群で8%にとどまり、ドセタキセル群(14%)より少ない結果であった。

タレトレクチニブ、ROS1陽性非小細胞肺がんに承認/日本化薬

 日本化薬は、2025年9月19日、Nuvation Bioから導入したタレトレクチニブ (商品名:イブトロジー)について、「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能又は効果とした製造販売承認を取得した。  同承認はROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした2つの第II相臨床試験(TRUST-IおよびTRUST-II)の結果などに基づくもの。これらの試験により、日本人患者も含め、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC 患者に対するタレトレクチニブの有効性が示された。

男性の身長の高さとがんリスク、関連がみられたがん種は

 600万人以上を対象とし、性別・身長とがんの関連を検討したこれまでで最大規模の研究において、39種中27のがん種において身長の高さががんリスク増加と統計学的有意に関連し、男性では悪性黒色腫、急性骨髄性白血病、唾液腺がん、結腸がんでとくに身長の高さによる過剰がんリスクが高かった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のCecilia Radkiewicz氏らによる、International Journal of Cancer誌オンライン版2025年8月26日号への報告より。

日米の高齢者がん手術、術後転帰に大きな違い

 高齢者の消化器がん外科手術において、日本と米国の全国データベースを比較すると、年齢に伴う術前合併症や術後転帰の変化パターンは類似しているものの、移動能力や機能面では両国間に差があることが明らかになった。福島県立医科大学の小船戸 康英氏らによる本研究はAnnals of Gastroenterological Surgery誌2025年4月21日号に掲載された。  がんは日米両国における主要な死因の1つであり、生涯に少なくとも一度はがんを経験する人口の割合は日本で5割超、米国で4割弱と推定されている。外科治療は依然としてがんの根治的治療の主軸であり、世界的な高齢化のなか、併存疾患や虚弱状態を多く有する高齢がん患者を対象とした研究の重要性が増している。

性的マイノリティ女性は乳がん・子宮頸がん検診受診率が低い、性特有の疾患における医療機関の課題

 性的マイノリティ(SGM)の女性は、乳がんや子宮頸がんの検診受診率が非SGM女性に比べて低いことが全国調査で明らかになった。大腸がん検診では差がみられず、婦人科系がん特有の課題が示唆されたという。研究は筑波大学人文社会系の松島みどり氏らによるもので、詳細は「Health Science Reports」に8月4日掲載された。  がん検診は、子宮頸がんや乳がんの早期発見と死亡率低下に重要な役割を果たしている。先進国と途上国を含む10カ国以上では、平均的なリスクを持つ全年齢層で20%の死亡率低下が報告されている。しかし、日本では2022年時点での子宮頸がん・乳がんの検診受診率はそれぞれ43.6%、47%にとどまっている。この受診率の低さの背景として、教育や所得の問題が議論されてきたが、日本ではSGMの問題という重要な視点が欠けていた。

低用量アスピリンでPI3K変異大腸がんの再発半減/NEJM

 PIK3CA exon 9または20のホットスポット変異を有する根治的切除後の大腸がん患者において、低用量アスピリンはプラセボと比較し大腸がん再発率を有意に低下させることが認められ、PI3K経路の遺伝子に他の体細胞変異を有する患者においても、同様の有用性が示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnna Martling氏らが、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドの33施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Adjuvant Low-Dose Aspirin in Colorectal Cancer trial(ALASCCA試験)」の結果を報告した。アスピリンは、遺伝性大腸がんの高リスク患者において、大腸腺腫および大腸がんの発生率を低下させることが知られている。観察研究では、とくにPIK3CA体細胞変異を有する患者において、アスピリンが診断後の無病生存期間(DFS)を改善する可能性が示唆されていたが、無作為化試験のデータはなかった。NEJM誌2025年9月18日号掲載の報告。

進行がん患者の望む治療と実際の治療との間のずれが明らかに

 進行がん患者の中には、残された日々をできるだけ快適に過ごしたいと望む人は少なくない。しかし、医師はその願いに十分に耳を傾けていないことが、新たな研究で示唆された。そのような望みを持つ進行がん患者の多くが、痛みを和らげることよりも延命を重視した治療を受けていることが明らかになったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の腫瘍内科医であるManan Shah氏らによるこの研究の詳細は、「Cancer」に8月25日掲載された。Shah氏は、「患者が望む治療と患者が実際に受けていると思っている治療との間にずれがあるのは大きな問題だ」とUCLAのニュースリリースの中で述べている。

ビタミンAはがんリスクを上げる?下げる?

 ビタミンA摂取とがんリスクの関連について、メタ解析では食事性ビタミンA摂取量が多いほど乳がんや卵巣がんの罹患率が低いと報告された一方、臨床試験ではビタミンAが肺がんや前立腺がんの死亡リスクを高めることが報告され、一貫していない。今回、病院ベースの症例対照研究の結果、食事性ビタミンA摂取量とがんリスクにU字型の関係がみられたことを、国際医療福祉大学の池田 俊也氏らが報告した。Nutrients誌2025年8月25日号に掲載。

デュルバルマブの非小細胞肺がんおよび膀胱がん周術期療法、国内承認/AZ

 アストラゼネカは、2025年9月19日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について、「非小細胞肺癌における術前・術後補助療法」および「膀胱癌における術前・術後補助療法」を効能又は効果として厚生労働省より承認を取得したと発表。  非小細胞肺がん(NSCLC)の承認は第III相AEGEAN試験の結果に基づくもの。AEGEAN試験は、切除可能なStage IIAからIIIB(AJCC第8版)NSCLCに対する(AJCC第8版)非小細胞肺がん(NSCLC)に対する周術期治療としてのデュルバルマブをPD-L1発現の有無を問わずに評価する第III相無作為化二重盲検プラセボ対照国際多施設共同試験。

陽性NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブのOS最終解析(MARIPOSA)/NEJM

 未治療のEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、アミバンタマブ+ラゼルチニブはオシメルチニブと比べて、全生存期間(OS)を有意に延長したことが示されたが、Grade3以上の有害事象のリスク増加との関連が認められた。National Taiwan University HospitalのJames Chih-Hsin Yang氏らMARIPOSA Investigatorsが、アミバンタマブ+ラゼルチニブとオシメルチニブの有効性と安全性を比較した第III相無作為化試験「MARIPOSA試験」の結果を報告した。同試験では主要解析時(追跡期間中央値22.0ヵ月)に、無増悪生存期間がアミバンタマブ+ラゼルチニブ群で有意に延長したことが報告されている(中央値23.7ヵ月vs.16.6ヵ月、病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.70、p<0.001)。事前に規定された最終OS解析の結果は報告されていなかった。NEJM誌オンライン版2025年9月7日号掲載の報告。