腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:14

食品中の果糖はがんの進行を促進する?

 糖の一種である果糖(フルクトース)は、がん細胞の増殖を促す燃料になる可能性があり、果糖の摂取を控えることが、がんと闘う手段の一つになり得ることが、新たな研究で示唆された。米セントルイス・ワシントン大学遺伝学・医学部教授のGary Patti氏らが、米国立衛生研究所(NIH)から一部助成を受けて実施したこの研究の詳細は、「Nature」に12月4日掲載された。  米国人が毎日口にしている食品には高果糖コーンシロップが多用されており、果糖はすでに米国人の食生活に広く浸透している。Patti氏は、「高果糖コーンシロップは、キャンディーやケーキから、パスタソースやサラダ用ドレッシング、ケチャップまで、極めて多くの食品に含まれている。意図的に摂取を回避しようとしない限り、高果糖コーンシロップを食事から除くことは困難である」と話す。

一部の主要ながんによる死亡回避、予防が治療を上回る

 「1オンスの予防は1ポンドの治療に値する」は、米国の建国の父ベンジャミン・フランクリンの有名な格言の一つだが、がんに関してはそれが間違いなく当てはまるようだ。米国立がん研究所(NCI)がん対策・人口科学部門長のKatrina Goddard氏らによる新たな研究で、過去45年間に、がんの予防とスクリーニングによって子宮頸がんや大腸がんなど5種類のがんによる死亡の多くが回避されていたことが明らかになった。この研究の詳細は、「JAMA Oncology」に12月5日掲載された。

オンコタイプDX再発スコア≧31のHR+/HER2ー乳がん、アントラサイクリンによるベネフィット得られる可能性(TAILORx)/SABCS2024

 21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による再発スコア(RS)≧31の、リンパ節転移のないホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がん患者における術後療法として、タキサン+シクロホスファミド(TC)療法と比較したタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミド(T-AC)療法の5年無遠隔再発期間(DRFI)および無遠隔再発生存期間(DRFS)における有意なベネフィットが確認された。とくに明確にこのベネフィットが認められたのは、腫瘍径>2cmの患者であった。TAILORx試験の事後解析結果を、米国・シカゴ大学のNan Chen氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

乳がん再発予測、ctDNA検査はいつ実施すべき?示唆を与える結果(ZEST)/SABCS2024

 血中循環腫瘍DNA(ctDNA)陽性で再発リスクが高いStageI~IIIの乳がん患者に対するPARP阻害薬ニラパリブの有効性を評価する目的で実施された第III相ZEST試験において、試験登録者のctDNA陽性率が低く、また陽性時点での再発率が高かったために登録が早期終了したことを、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。  ZEST試験では、治療可能病変に対する標準治療完了後の、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)または腫瘍組織のBRCA(tBRCA)病的バリアントを有するHR+/HER2-乳がん患者(StageI~III)を対象に、血液を用いた微小残存腫瘍検出専用の遺伝子パネル検査(Signatera)を実施。ctDNA陽性で放射線学的に再発のない患者を、ニラパリブ群(200または300mg/日)およびプラセボ群に無作為に割り付けた。ctDNA検査は2~3ヵ月ごとに実施された。主要評価項目はニラパリブ群の安全性と忍容性で、無再発生存期間(RFS)も評価された(当初は無病生存期間が主要評価項目とされていたが、登録の早期中止に伴い変更)。

TN乳がん術前化学療法への周術期アテゾリズマブ上乗せ、EFSを改善せず/SABCS2024

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、術前化学療法に術前・術後アテゾリズマブを上乗せした場合の有効性と安全性を評価した第III相NSABP B-59/GBG-96-GeparDouze試験の結果、術前アテゾリズマブ+化学療法→術後アテゾリズマブは、術前プラセボ+化学療法→術後プラセボと比較して、主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)を有意に改善しなかったことを、米国・ピッツバーグ大学のCharles Geyer氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

切除不能肝細胞がん、アテゾ+ベバがTACEの代替となる可能性/ESMO Asia2024

 切除不能肝細胞がんにおいて、Intermediate Stage(中間期)における標準療法は塞栓療法(主にTACE療法)である。しかし、一部でTACE療法が適さない患者が存在し、その場合は全身療法が推奨となる。一方、既報のIMbrave150試験において、当時の標準化学療法のソラフェニブに対し、アテゾリズマブ+ベバシズマブが有意に予後を改善したことが報告されている。こうした背景から、切除不能な肝細胞がん患者におけるアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法のTACE療法に対する代替可能性を検討するREPLACEMENT試験が計画された。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において公立松任石川中央病院の山下 竜也氏が全生存期間(OS)を含む本試験の最終解析結果を発表した。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024

 2024年6月にオシメルチニブの添付文書が改訂され、EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブと化学療法の併用療法が使用可能となった。本改訂は、オシメルチニブと化学療法の併用療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」の結果に基づくものである。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において、アジア人集団の治療成績が、国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏により報告された。

進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ

 アストラゼネカは、2024年12月13日に「イミフィンジ・リムパーザ適応拡大メディアセミナー ~進行・再発子宮体がん治療における免疫チェックポイント阻害剤・PARP阻害剤の新たな可能性~」と題したメディアセミナーを開催した。  進行・再発子宮体がんにおける新たな治療選択肢として、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)は「進行・再発の子宮体癌」、リムパーザ(一般名:オラパリブ)は「ミスマッチ修復機能正常(pMMR)の進行・再発の子宮体癌におけるデュルバルマブ(遺伝子組換え)を含む化学療法後の維持療法」をそれぞれ効能または効果として、本年11月22日に厚生労働省より承認を取得している。

導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024

 導入療法後に病勢進行のないホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における1次治療として、抗HER2療法と内分泌療法へのパルボシクリブの追加は無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善した。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のOtto Metzger氏が、第III相無作為化非盲検PATINA試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。 ・対象:HR+/HER2+転移乳がん患者(6~8サイクルの導入化学療法+トラスツズマブ±ペルツズマブ後に病勢進行なし) ・試験群:パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)+トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(パルボシクリブ追加群、261例) ・対照群:トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(抗HER2療法+内分泌療法群、257例) ・評価項目: [主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS [重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など ・層別化因子:ペルツズマブ投与の有無、術後(術前)補助療法としての抗HER2療法の有無、導入療法への反応(CR/PR vs.SD)、内分泌療法の種類(フルベストラントvs.アロマターゼ阻害薬[AI])

SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ

 近年、SGLT2阻害薬は実験レベルでさまざまながん種に対する抗腫瘍効果が示唆されている。臨床においても、無作為化試験や観察研究などでSGLT2阻害薬とがん発症リスクとの関係が検討されているが結論は出ておらず、一般的にがん発症率が低いことを考慮すると大規模な疫学コホートでの検討が必要となる。今回、東京大学/国立保健医療科学院の鈴木 裕太氏らが全国規模の疫学データベースを用いて、SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を処方された患者におけるがん発症率を調べた結果、SGLT2阻害薬のほうががん発症リスクが低く、とくに大腸がんの発症リスクが低いことがわかった。Diabetes & Metabolism誌2024年11月号に掲載。