腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:12

米国がん協会のガイドライン遵守はがんサバイバーの寿命を延ばす

 喫煙習慣のない肥満関連のがんサバイバーは、米国がん協会(ACS)が推奨する食事と身体活動に関するガイドラインを遵守することで死亡リスクが低下する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。ACS疫学研究の主任科学者であるYing Wang氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に4月3日掲載された。  Wang氏は、「がんの診断がきっかけで、どうすれば生活習慣をより健康的にできるかを考える人は多い。多くのがんサバイバーは、長生きする可能性を高めるためにできる生活習慣の是正について知りたがっている」とACSのニュースリリースで述べている。

患者ナビゲーション導入でリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率がアップ

 患者に対する個別サポートが、大腸がんリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率を高めるのに役立つことが新たな研究で示唆された。免疫学的便潜血検査(FIT検査)によるスクリーニングで大腸がんリスクが判明した後に大腸内視鏡検査を受けた人の割合は、患者ナビゲーターが割り当てられた人の方が、単に検査結果を知らされただけの人よりも高かったという。米アリゾナ大学がんセンター人口科学副所長のGloria Coronado氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月1日掲載された。  患者ナビゲーションとは、米国の複雑な医療制度の中で患者が円滑かつ適切に医療を受けられるように支援する制度のことであり、その役割を担う人は患者ナビゲーターと呼ばれる。米疾病対策センター(CDC)による地域予防サービスガイド(Guide to Community Preventive Services)では、患者ナビゲーションの導入が推奨されている。しかし、患者ナビゲーションが、大腸がんリスクを有する人における大腸内視鏡検査の受診率向上に寄与しているのかどうかは不明である。

早期肺がん患者の術後の内臓脂肪量は手術方法に影響される

 肺がん患者では、呼吸機能の低下だけでなく、体重、筋肉量、内臓脂肪量など、いわゆる体組成の減少により予後が悪化することが複数の研究で報告されている。この度、肺がん患者に対する肺葉切除術よりも切除範囲がより小さい区域切除術後で、体組成の一つである内臓脂肪が良好に維持されるという研究結果が報告された。神奈川県立がんセンター呼吸器外科の伊坂哲哉氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に3月4日掲載された。  近年行われた2cm以下の末梢型早期肺がんに対する区域切除術と肺葉切除術を比較した大規模な臨床試験JCOG0802/ WJOG4607Lでは、区域切除術が肺葉切除術よりも全生存率(OS)を改善した。この試験では、肺がより温存された区域切除群において肺葉切除群よりも、肺がん以外の病気による死亡が少ない結果であったが、その機序については未だ解明されていない。肺がん患者の良好な予後のためには、内臓脂肪を含む体組成を維持することが重要と考えられるが、肺葉切除と区域切除後の体組成変化の違いについても未だ明らかになっていない。このような背景から、伊坂氏らは肺がん患者における肺葉切除と区域切除後の内臓脂肪の変化量を比較し、予後との関連を明らかにするために、単施設の後ろ向き研究を実施した。

ハプロHSCTのGVHD予防、間葉系幹細胞の逐次注入の有用性/JCO

 半合致(ハプロ)造血幹細胞移植(HSCT)後3ヵ月の臍帯由来間葉系幹細胞(MSC)逐次注入による移植片対宿主病(GVHD)予防効果および安全性を、中国・Xinqiao Hospital of Army Medical UniversityのHan Yao氏らが非盲検多施設無作為化比較試験で検討した。その結果、慢性GVHDと急性GVHDの発症率と重症度のどちらも有意に減少し、3年無GVHD・無再発生存率(GRFS)が改善することが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。

国内DOAC研究が色濃く反映!肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症ガイドライン改訂/日本循環器学会

 『2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症ガイドライン』が3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会の会期中に発刊され、本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において田村 雄一氏(国際医療福祉大学医学部 循環器内科学 教授/国際医療福祉大学三田病院 肺高血圧症センター)が改訂点を解説した。本稿では肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症の項について触れる。  静脈血栓塞栓症(VTE)と肺高血圧症(PH)の治療には、直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用や急性期から慢性期疾患へ移行していくことに留意しながら患者評価を行う点が共通している。そのため、今回よりVTEの慢性期疾患への移行についての注意喚起のために、「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」「肺高血圧症治療ガイドライン」「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」の3つが統合された。

AYA世代がん治療後の妊孕性予測モデル構築に向け、クラウドファンディング実施/大阪急性期・総合医療センター

 「小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2024年12月改訂 第2版」の外部評価委員を務めた森重 健一郎氏(大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター生殖医療センター長)が、AYA世代の妊孕性予測ツールを開発する目的でクラウドファンディングを開始しており、5月16日まで寄付を募集している。  現在、国が進める「第4期がん対策推進基本計画」では目標3本柱として、1)がん予防、2)がん医療、3)がんとの共生を掲げており、2)がん医療のがん医療提供体制において妊孕性温存療法の対策の推進が触れられている。

NeuroSAFEを用いた前立腺がん手術が勃起機能温存に有効か

 画期的な技術の導入により、前立腺がんの外科的手術後に勃起機能を温存できる男性の数が2倍近く増える可能性のあることが明らかになった。ロボット支援根治的前立腺全摘除術(RARP)にNeuroSAFEと呼ばれる術中診断技術を導入することで、勃起をコントロールすると考えられている前立腺の外層を通る神経を温存させることができるという。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)病院の泌尿器科顧問であるGreg Shaw氏らによるこの研究結果は、欧州泌尿器科学会年次総会(EAU25、3月21〜24日、スペイン・マドリード)で発表されるとともに、「The Lancet Oncology」4月号に掲載された。

局所進行上咽頭がんの1次治療、補助化学療法+CCRT vs.CCRT/BMJ

 N2~3期の上咽頭がん患者において、同時併用化学放射線療法(CCRT)の前にドセタキセル+シスプラチンによる補助化学療法(NACT)を4サイクル行うことにより、CCRTのみ行った場合と比較し、遠隔転移のリスクが低下するとともに全生存期間が改善し、毒性は管理可能であることが示された。中国・中山大学がんセンターのWei-Hao Xie氏らが、中国の3次医療機関6施設で実施した第III相無作為化比較試験の結果を報告した。局所進行上咽頭がんに対する補助化学療法+同時併用化学放射線療法の有効性は確立されていなかった。BMJ誌2025年4月15日号掲載の報告。

サブタイプ別転移乳がん患者の脳転移発生率、HER2低発現の影響は

 約1万8千例を含む大規模な転移乳がん患者コホートを対象に、サブタイプおよび治療ライン別の脳転移の有病率と累積発生率、またHER2低発現が脳転移発生率に及ぼす影響を評価した結果、すべてのサブタイプで治療ラインが進むごとに発生率が上昇し、HER2低発現は従来のサブタイプ分類における発生率に影響を及ぼさないことが示唆された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のSarah L Sammons氏らによるJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版2025年3月31日号への報告。  本研究では、電子カルテに基づく全国規模の匿名化データベースが用いられた。主要評価項目は脳転移の初回診断とし、HER2低発現を含む転移乳がんのサブタイプおよび治療ライン別に、脳転移の有病率および発生率を推定した。全身治療開始時に脳転移を有さなかった患者における脳転移リスクは、累積発症率関数を用いて推定した。すべてのp値は両側検定に基づき、p≦0.05を統計学的有意とした。

間質性肺炎合併肺がん、薬物療法のポイント~ステートメント改訂/日本呼吸器学会

 2017年10月に初版が発行された『間質性肺炎合併肺癌に関するステートメント』について、2025年4月に改訂第2版が発行された。肺がんの薬物療法は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場するなど、目覚ましい進歩を遂げている。そのなかで、間質性肺炎(IP)を合併する肺がんの治療では、IPの急性増悪が問題となる。そこで、近年はIP合併肺がんに関する研究も実施され、エビデンスが蓄積されつつある。これらのエビデンスを含めて、本ステートメントの薬物療法のポイントについて、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。