腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:11

大惨事はがんの診断数を減少させる

 自然災害やパンデミックなどの大惨事は、がんによる死者数の増加につながるかもしれない。新たな研究で、ハリケーン・イルマとハリケーン・マリアが2週間間隔でプエルトリコを襲った際に、同国での大腸がんの診断数が減少していたことが明らかになった。このような診断数の低下は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生直後にも認められたという。プエルトリコ大学総合がんセンターのTonatiuhSuarez-Ramos氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に4月14日掲載された。  米国領プエルトリコでは、2017年9月初旬に超大型ハリケーン・イルマが島の北を通過したわずか2週間後に、カテゴリー5の最強ハリケーン・マリアが上陸し、甚大な被害を出した。当時、稼働していた病院はほとんどなく、高い貧困率などが原因ですでに制限されていた医療へのアクセスがさらに悪化した。さらに2020年にはCOVID-19パンデミックが発生した。政府が実施した厳格なロックダウン政策は、感染の抑制には効果的だったが、医療サービスの利用低下につながった。

飲酒に起因するがんの死亡者数、20年で51%増

 アルコールに起因するがんによる死亡について、2000~21年で年齢調整死亡率(ASDR)は減少した一方、死亡者数は51%増加したことが、米国・Texas Tech University Health Sciences CenterのPojsakorn Danpanichkul氏らの研究により明らかになった。この傾向は社会人口統計学的指数(SDI)やがんの種類によってばらつきがみられた。Alimentary Pharmacology & Therapeutics誌オンライン版2025年4月27日号に掲載。  本研究では、Global Burden of Disease Study 2021を分析し、アルコールに起因するがんによる死亡とASDR、それらの2000~21年の年変化率(APC)を、SDIに基づく地域/国別、国の開発状況別に調べた。

腫瘍浸潤クローン性造血、固形がんの死亡リスクと関連/NEJM

 「未確定の潜在能を持つクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)」は加齢に伴う病態で、がん患者における死亡率の上昇と関連する。腫瘍で変異アレル頻度(VAF)の高いCHIP変異が検出されることがあり、英国・フランシス・クリック研究所のOriol Pich氏らは、この現象を「腫瘍浸潤性クローン性造血(tumor-infiltrating clonal hematopoiesis:TI-CH)」と呼ぶ。同氏らは、今回、TI-CHは非小細胞肺がん(NSCLC)患者のがん再発や死亡のリスクを高め、固形腫瘍患者で全死因死亡のリスクを上昇させ、腫瘍免疫微小環境をリモデリングし、腫瘍オルガノイドの増殖を促すことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年4月24日号で報告された。

グローバルなリアルワールドエビデンスに期待(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

本研究は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、PD-L1陽性(TPS≧1%)でEGFR変異やALK転座がない症例を対象に、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブと、新規の二重特異性抗体ivonescimab(PD-1+VEGFに対する抗体)の有効性と安全性を比較した多施設ランダム化第III相試験「HARMONi-2試験」の報告である。中間解析時点での主要評価項目は無増悪生存期間PFSで、ivonescimab群で有意に延長が認められた(中央値11.1ヵ月vs.5.8ヵ月、HR:0.51、p<0.0001)。このPFSの改善効果はPD-L1 TPS 1~49%、TPS≧50%、扁平上皮がん、非扁平上皮がんを含む主要なサブグループで一貫していた。また奏効率ORRはivonescimab群で50%、ペムブロリズマブ群で39%、病勢コントロール率DCRはそれぞれ90%と71%であった。重篤な免疫関連有害事象(irAE)は両群で同程度であり、高血圧や蛋白尿などのVEGFに関連する有害事象はivonescimab群でやや多いものの管理可能な範囲であった。とくにベバシズマブが従来禁忌とされてきた扁平上皮がんでも、出血性合併症の増加は認められなかった。

未治療高齢マントル細胞リンパ腫、アカラブルチニブのベンダムスチン・リツキシマブへの上乗せでPFS延長(ECHO)/JCO

 未治療の高齢マントル細胞リンパ腫患者に対して、ベンダムスチン・リツキシマブへのアカラブルチニブの上乗せ効果を検討した第III相ECHO試験の結果について、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMichael Wang氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年5月1日号に報告した。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はアカラブルチニブの追加で有意に延長した。

若年層の大腸がん、その臨床的特徴が調査で明らかに

 大腸がんは日本人で最も患者数が多いがんであり、一般的に50歳代から年齢が上がるにつれて罹患率も上昇することが知られている。一方で、若年層における大腸がんに関する報告は少ない。しかし、今回50歳未満の大腸がんに関する臨床病理学的所見を調査した研究結果が報告された。大腸がんの好発部位や、スクリーニングの有用性が明らかになったという。研究は札幌医科大学医学部腫瘍内科学講座/斗南病院消化器内科の岡川泰氏らによるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に3月11日掲載された。  近年、高所得国を中心として50歳未満で発症する若年発症型大腸がんが増加している。さらに、若年発症型大腸がんは進行期で診断されることが多く、世界的に重要な懸念事項であるが、日本から若年発症型大腸がんについて報告された研究はわずかであり、その臨床病理学的特徴は不明のままである。このような背景から、研究グループは、若年発症型大腸がんの臨床病理学的所見を調査するために単施設の後ろ向き研究を実施した。

ピロリ除菌後の胃がんリスクを予測するバイオマーカー~日本の前向き研究

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後においても0.5~1.2%の人に原発性胃がんが発生する可能性がある。このような高リスクの集団を識別する新たなバイオマーカーとして、非悪性組織におけるepimutationの蓄積レベル(epimutation負荷)ががんリスクと関連していることが複数の横断的研究で報告されているが、前向き研究でリスク予測におけるDNAメチル化マーカーの有用性は確認されていない。今回、星薬科大学の山田 晴美氏らの研究により、epimutation負荷のDNAメチル化マーカーであるRIMS1がH. pylori除菌後の健康人における原発性胃がんリスクを正確に予測可能であることが示された。Gut誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。

米国がん協会のガイドライン遵守はがんサバイバーの寿命を延ばす

 喫煙習慣のない肥満関連のがんサバイバーは、米国がん協会(ACS)が推奨する食事と身体活動に関するガイドラインを遵守することで死亡リスクが低下する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。ACS疫学研究の主任科学者であるYing Wang氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に4月3日掲載された。  Wang氏は、「がんの診断がきっかけで、どうすれば生活習慣をより健康的にできるかを考える人は多い。多くのがんサバイバーは、長生きする可能性を高めるためにできる生活習慣の是正について知りたがっている」とACSのニュースリリースで述べている。

患者ナビゲーション導入でリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率がアップ

 患者に対する個別サポートが、大腸がんリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率を高めるのに役立つことが新たな研究で示唆された。免疫学的便潜血検査(FIT検査)によるスクリーニングで大腸がんリスクが判明した後に大腸内視鏡検査を受けた人の割合は、患者ナビゲーターが割り当てられた人の方が、単に検査結果を知らされただけの人よりも高かったという。米アリゾナ大学がんセンター人口科学副所長のGloria Coronado氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月1日掲載された。  患者ナビゲーションとは、米国の複雑な医療制度の中で患者が円滑かつ適切に医療を受けられるように支援する制度のことであり、その役割を担う人は患者ナビゲーターと呼ばれる。米疾病対策センター(CDC)による地域予防サービスガイド(Guide to Community Preventive Services)では、患者ナビゲーションの導入が推奨されている。しかし、患者ナビゲーションが、大腸がんリスクを有する人における大腸内視鏡検査の受診率向上に寄与しているのかどうかは不明である。

早期肺がん患者の術後の内臓脂肪量は手術方法に影響される

 肺がん患者では、呼吸機能の低下だけでなく、体重、筋肉量、内臓脂肪量など、いわゆる体組成の減少により予後が悪化することが複数の研究で報告されている。この度、肺がん患者に対する肺葉切除術よりも切除範囲がより小さい区域切除術後で、体組成の一つである内臓脂肪が良好に維持されるという研究結果が報告された。神奈川県立がんセンター呼吸器外科の伊坂哲哉氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に3月4日掲載された。  近年行われた2cm以下の末梢型早期肺がんに対する区域切除術と肺葉切除術を比較した大規模な臨床試験JCOG0802/ WJOG4607Lでは、区域切除術が肺葉切除術よりも全生存率(OS)を改善した。この試験では、肺がより温存された区域切除群において肺葉切除群よりも、肺がん以外の病気による死亡が少ない結果であったが、その機序については未だ解明されていない。肺がん患者の良好な予後のためには、内臓脂肪を含む体組成を維持することが重要と考えられるが、肺葉切除と区域切除後の体組成変化の違いについても未だ明らかになっていない。このような背景から、伊坂氏らは肺がん患者における肺葉切除と区域切除後の内臓脂肪の変化量を比較し、予後との関連を明らかにするために、単施設の後ろ向き研究を実施した。