腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:9

多発性骨髄腫のグローバル試験の日本人サブセット結果/日本血液学会

 高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)においてダラツムマブと経過観察を比較したAQUILA試験の日本人集団解析が発表された。  2025年1月に発表された全体結果では、ダラツムマブ単剤療法は積極的経過観察よりも、SMMの進行または死亡までの期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間も延長を示している。  日本人患者は28例(DARA群15例、観察群13例)であった。日本人の5年PFS率はDARA群46.3%、観察群7.7%であった(ハザード比[HR]:0.25、95%信頼区間[CI]:0.10〜0.65)。全奏効率(ORR)はDARA群86.7%、観察群7.7%という結果を示した(相対リスク比:11.27、95%CI:1.70〜74.84)。

ロボット支援直腸がん手術、術後1日目のCRPで合併症予測が可能に

 術後合併症や感染症への対応には、早期発見と迅速な対処が求められる。今回、直腸がんに対するロボット支援下直腸手術(RARS)後の合併症リスクが、術後1日目のC反応性蛋白(CRP)値で予測できるとする研究結果が報告された。術後早期のCRP測定が、高リスク患者の見極めや迅速な介入に役立つ可能性があるという。研究は国立病院機構福山医療センター消化器・一般外科の寺石文則氏らによるもので、詳細は8月28日付けで「Updates in Surgery」に掲載された。  RARSは、骨盤内の限られた視野で高い操作性を発揮し、従来の腹腔鏡手術や開腹手術と同等かそれ以上の成績を示すことが報告されている。しかし、依然として術後合併症は患者予後を左右する大きな課題であり、早期に高リスク患者を見極めることが重要だ。炎症マーカーであるCRPは大腸手術後の合併症予測に有用とされるが、ロボット支援手術における術後早期のCRP値の予測的価値は十分に検討されていない。このような背景を踏まえ著者らは、RARS後の合併症リスク因子を解析し、特に術後1日目のCRP測定の有用性を評価することを目的とした後ろ向きコホート研究を実施した。

初回マンモグラフィ非受診女性、乳がん死リスク増加/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のZiyan Ma氏らの研究チームは観察研究において、初回マンモグラフィの受診勧奨に応じず受診しなかった女性は、受診勧奨に応じ受診した女性と比較して、乳がん発見時の腫瘍の悪性度が高く長期的な乳がん死のリスクが顕著に増加しているが、乳がん発生率は同程度であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年9月24日号で報告された。  研究チームは、初回マンモグラフィの受診勧奨に応じなかった女性における、その後の受診状況および乳がんのアウトカムを評価する目的で、住民ベースのコホート研究を実施した(スウェーデン研究会議などの助成を受けた)。

口腔内の細菌が膵臓がんの一因に?

 膵臓がんのリスクは口の中に生息する微生物と関係している可能性があるようだ。歯周病に直接関係する微生物も含め、27種類の細菌や真菌が膵臓がんリスクと有意に関連し、これらの微生物に基づいて構築された微生物リスクスコア(MRS)が1標準偏差(SD)上昇するごとに、膵臓がんリスクが3倍以上高まることが、新たな研究で示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のRichard Hayes氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に9月18日掲載された。Hayes氏は、「歯磨きとフロスの使用は、歯周病を予防するだけでなく、がんの予防にも役立つ可能性のあることが、これまで以上に明らかになってきた」と述べている。

がん手術後の遠隔モニタリングは患者の回復を助ける

 手術後のがん患者に対する遠隔モニタリングは、機能回復や症状改善に有効であることが新たな研究で示された。医療チームが遠隔で症状を追跡した患者は、手術からより早く回復したという。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのTracy Crane氏らによるこの研究結果は、「npj Digital Medicine」に8月28日掲載された。Crane氏は、「退院後の最初の2週間は極めて重要だ。遠隔ケアは、病院と自宅の間の溝を埋め、問題を早期に発見し、回復をサポートするのに役立つ」と話している。  この研究では、消化器がん、泌尿・生殖器がん、婦人科がんに対する大規模な腹部または骨盤手術を受ける患者293人を対象にランダム化比較試験を実施し、周術期の遠隔モニタリングの有効性を検討した。対象患者は、スマートフォン(以下、スマホ)のアプリによる遠隔モニタリングを受ける群と、手術のみを受ける群(対照群)にランダムに割り付けられた。両群とも手首に活動量計を装着して歩数などの機能的活動量を測定するとともに、手術前と退院後7・14・30・60・90日目にモバイルアプリを通じて症状を報告したが、遠隔モニタリング群では、トリアージ看護師が患者の症状と歩数データを追跡し、問題があると判断した際には患者に連絡を取った。一方、対照群では、基準値を外れた場合には病院に電話するよう促す自動メッセージが患者に送られた。

複数種類のがんを調べる血液検査、有用性を判断するには時期尚早

 血液サンプルを用いて複数種類のがんの有無を検査する多がん検出(multicancer early detection;MCD)検査(以下、MCD検査)は、目に見えない腫瘍を発見できる可能性があるため、大きな注目を集めている。しかし、MCD検査によるスクリーニングのベネフィットを評価した、完了した対照試験は存在せず、この検査法の有効性を判断するには時期尚早であるとする研究結果が発表された。米RTI-ノースカロライナ大学Evidence-based Practice Centerの最高医療責任者代理であるLeila Kahwati氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に9月16日掲載された。  MCD検査は、未検出の腫瘍から血液中に放出されたDNAやタンパク質、その他の生化学物質を検出することで、がんの有無を判定する。MCD検査のいくつかは、医師の診断書があれば製造元からオンラインで注文できる。ただし、いずれも米食品医薬品局(FDA)の承認を受けていない。

世界のがん発症や死亡、2050年に6~7割増/Lancet

 がんは世界の疾病負担の大きな要因であり、2050年まで症例数と死亡数の増加が続くことが予測され、とくに資源の乏しい国との負担格差が大きくなることが見込まれること、また、がんの年齢標準化死亡率は低下するものの、国連による2030年の持続可能な開発目標(SDG)の達成には不十分であることが、米国・ワシントン大学のLisa M. Force氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Cancer Collaboratorsの解析で示された。がんは世界的に主要な死因の1つで、政策立案には正確ながん負担情報が欠かせないが、多くの国では最新のがんサーベイランスデータがない。著者は、「世界的ながん負担に効果的かつ持続的に対処するには、予防、診断、治療の全過程にわたるがん対策戦略の策定と実施において、各国の医療システムや開発状況を考慮した包括的な国内外の取り組みが必要である」と提言している。Lancet誌オンライン版2025年9月24日号掲載の報告。

がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。

糖尿病患者の飲酒は肝がんリスク大幅増、茶によるリスク低下は限定的

 糖尿病の有無別にアルコールおよび茶の摂取と肝がん発症リスクとの関連を検討した前向きコホート研究の結果、アルコール摂取はとくに糖尿病患者で肝がんリスクを大きく高めることが確認された一方で、茶の摂取による肝がんリスク低下効果は非糖尿病患者に限られたことが、中国・清華大学のXiaoru Feng氏らによって明らかになった。Nutrients誌2025年9月4日号掲載の報告。  一部の研究では少量のアルコール摂取は肝がんリスクを下げる可能性が報告されているが、高頻度・大量のアルコール摂取は肝がんリスクを上昇させることが多くの研究で示されている。茶の摂取は肝がんリスク低下に関連する可能性があるとする研究がある一方で、有意な関連を認めない研究も多く、結論は一様ではない。また、糖尿病患者は代謝異常のためにアルコールや茶のの影響を受けやすく、それが肝がんのリスクに関与している可能性もある。そこで研究グループは、大規模かつ長期の追跡調査を行い、アルコールおよび茶の摂取と肝がん発症との関連を、糖尿病の有無別に評価した。

マンモグラフィの画像からAIモデルが心血管リスクを評価

 定期的なマンモグラフィ検査は、乳がんの早期発見に有効であるだけでなく、女性の心臓病リスクを正確に予測するのにも役立つ可能性があるようだ。マンモグラフィの画像から心血管疾患(CVD)リスクを予測する人工知能(AI)モデルの予測性能は、米国心臓協会(AHA)や他の専門家グループが開発したCVDイベントリスク予測方程式(Predicting Risk of Cardiovascular Disease Events;PREVENT)の予測性能と同等であることが、新たな研究で示された。ジョージ国際保健研究所(オーストラリア)で心血管プログラムのグローバルディレクターを務めているClare Arnott氏らによるこの研究結果は、「Heart」に9月16日掲載された。