眼科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

高加入度数コンタクトレンズ、小児の近視進行を抑制/JAMA

 近視の小児では、高加入度数の多焦点コンタクトレンズを用いた3年間の治療により、中加入度数の多焦点コンタクトレンズや単焦点コンタクトレンズと比較して、近視の進行が緩徐化され、眼軸長伸展が抑制されることが、米国・オハイオ州立大学のJeffrey J. Walline氏らが行ったBLINK試験で示された。研究の成果はJAMA誌2020年8月11日号に掲載された。2016年の報告では、世界の近視の有病率は、2000年からの50年間に23%から54%に、高度な近視の有病率は3%から10%にまで増加すると推定されている。また、近視は、視力を脅かす合併症(白内障、網膜剥離、緑内障、脈絡膜萎縮症など)と関連するが、その進行を緩徐化することで、これらの合併症のリスクが低減する可能性があるという。

多発性硬化症治療に新しい治療薬シポニモド登場/ノバルティスファーマ

 ノバルティス ファーマは、6月29日、二次性進行型多発性硬化症(以下「SPMS」という)に対して有効性を証明した初めての1日1回経口の多発性硬化症治療薬シポニモド フマル酸(商品名:メーゼント)の製造販売承認を取得した。  多発性硬化症(以下「MS」という)は、中枢神経(脳・脊髄・視神経)のミエリンが破壊され軸索がむき出しになる「脱髄」と呼ばれる病変が多発し、視力障害、運動障害、感覚障害、言語障害など多様な症状があらわれる疾患。わが国のMS患者は、約1万5千人と推定され、年々増加している。発症のピークは20歳代で、女性に多いのが特徴。発症後に再発期と寛解期を繰り返す再発寛解型MS(以下「RRMS」という)として経過し、半数は次第に再発の有無にかかわらず病状が進行するSPMSに移行する。進行期に移行すると日常生活に影響をおよぼす不可逆的な身体的障害が徐々にみられ、主に歩行障害で車いす生活を余儀なくされる場合もある。また、認知機能障害が進み、社会生活に影響をもたらすこともある

米国・3人に1人が新型コロナ消毒方法を間違える/CDC

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以来、米国では洗剤や消毒薬曝露に関する毒物センターへの問い合わせが急激に増加している。そこで、米国疾病予防管理センター(CDC)COVID-19 Response TeamのRadhika Gharpure氏らが米国人の消毒薬の使用状況を調査した。その結果、洗剤や消毒薬の安全な準備・使用・保管に関する知識には個人差が見られ、回答者の約3分の1は「食品へ漂白剤を使用」「皮膚に家庭用洗浄剤や消毒薬を使用」「洗剤や消毒薬の吸入または摂取」など、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染を防ぐためには推奨できない方法をとっていたことが明らかになった。研究者らは、手指衛生や手で触れやすい場所の清掃や消毒など、家庭でのSARS-CoV-2感染予防のための根拠に基づく安全な清掃・消毒の実践法について、引き続き強調する必要があるとしている。2020年6月12日CDC・Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)掲載の報告。

パチシラン継続投与でTTR型FAPの症状が改善/アルナイラム

 アルナイラム社は、欧州神経学会バーチャル会議2020でトランスサイレチン(TTR)型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)のRNAi治療薬パチシラン(商品名:オンパットロ)の国際共同試験の長期結果と同所性肝移植後に病状が進行した患者を対象とした治療の中間データを発表した。  TTR型家族性アミロイドポリニューロパチーは、TTR遺伝子の変異が原因で生じる進行性の難治性疾患で、患者数は全世界で約5万人と推定される。障害発生率と死亡率はきわめて高く、診断からの生存期間の中央値は4.7年、心筋症を発症した患者では3.4年とさらに短くなる。

眼底写真の深層学習、視神経乳頭異常を鑑別/NEJM

 眼底写真を用いて構築した深層学習システムは、乳頭浮腫のある視神経乳頭と、正常乳頭または乳頭浮腫以外の異常を伴う乳頭を鑑別可能であることが、シンガポール・国立眼科センターのDan Milea氏らBONSAIコンソーシアムの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年4月14日号に掲載された。乳頭浮腫(頭蓋内圧亢進による視神経浮腫)の検出や、視神経乳頭が正常と判定する能力は、頭痛や他の神経学的症状を呈する患者の評価に有益で、眼底検査所見は診断戦略や治療選択肢に影響を及ぼし、乳頭浮腫の検出の失敗は視力喪失や神経学的合併症をもたらす可能性があるという。一方、眼底写真を用いたAIおよび深層学習は、すでに糖尿病性網膜症や緑内障性視神経症を自動検出するシステムとして開発されている。

画像診断での深層学習 vs.専門医、前向き研究やRCT少ない/BMJ

 画像診断に関する前向き深層学習(deep learning)研究や無作為化試験は少なく、非無作為化試験のほとんどは前向き研究ではなく、バイアスのリスクが高く、既存の報告基準から逸脱していることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMyura Nagendran氏らの検討で示された。また、多くの研究は、データやコード(データの前処置とモデル化に使用)を利用できず、比較群の専門医数が少ないことも明らかとなった。研究の詳細は、BMJ誌2020年3月25日号に掲載された。近年、人工知能(AI)の一部門である深層学習に関する研究の報告が、急速に増加している。これに伴い、AIは医師より能力が優れるとするメディアの見出しが、人々を誇大な宣伝であおり、その加速度的な推進が強く求められている。

持続血糖測定器「FreeStyle リブレ」に新たな保険適用

 アボット ジャパン合同会社は、フラッシュグルコースモニタリングシステム 「FreeStyle リブレ」(以下「リブレ」)に、2020年4月1日より新たな保険が適用されると発表した。  リブレは、組織間質液中のグルコース値を記録するセンサーと、その測定値を読み取って表示するリーダーから構成され、500円玉大のセンサーを上腕後部に装着し、グルコース値を毎分測定する。センサーは防水性で、最長14日間装着でき、リーダーをセンサーにかざしスキャンするだけで、グルコース値を測定することができる持続血糖測定器。わが国では2017年9月1日より保険適用となっている。

視力と認知症との関係

 視力の低下と認知症リスクとの関連を調査した縦断的エビデンスの結果は一致していない。香港中文大学のAllen T. C. Lee氏らは、誤分類、逆因果関係、健康上の問題や行動による交絡因子に関連するバイアスとは無関係に、高齢者の大規模なコミュニティーコホートにおける視力低下と認知症発症率との関連を調査した。The Journals of Gerontology誌Series Aオンライン版2020年2月11日号の報告。  ベースライン時に認知症でない地域在住高齢者1万5,576例を対象に、認知症発症について6年間フォローアップを行った。認知症診断は、ICD-10または臨床的認知症尺度(CDR)1~3に従って実施した。ベースラインおよびフォローアップ時の視力評価には、スネレン視力表を用いた。人口統計(年齢、性別、教育、社会経済的地位)、身体的および精神医学的併存疾患(心血管リスク、眼科的状態、聴覚障害、運動不足、うつ病)、ライフスタイル(喫煙、食事、身体活動、知的活動、社会活動)についても評価した。

日本人高齢者の認知症発症率に対する感覚障害の影響

 認知症および認知症の周辺症状(BPSD)は、高齢者の介護の必要レベルに影響を及ぼす。高齢者では、加齢に伴い感覚障害の発生率が上昇し、認知症の発症を加速させる。大勝病院の丸田 道雄氏らは、視覚障害(VI)、聴覚障害(HI)などの感覚障害とBPSDおよび認知症の発症率との関連について調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年12月4日号の報告。  日本のある都市における2010~17年の介護保険データを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。2010年時点で認知症でなかった高齢者2,190人を、感覚障害の4つのカテゴリー、VI群、HI群、VIとHI両方の感覚障害(DSI)群、感覚障害なし(NO)群に分類した。認知症の発症率は、カプランマイヤー生存分析およびlog-rank検定を用いて調査した。NO群と比較した、感覚障害に関連する認知症発症リスクは、Cox比例ハザード分析を用いて調査した。4群間のBPSD有病率は、ピアソンのχ2検定を用いて比較した。

血圧に差がついてしまっては理論検証にならないのでは?(解説:野間重孝氏)-1165

マルファン症候群は細胞外基質タンパクであるfibrillin 1(FBN1)の遺伝子変異を原因とする遺伝性の結合織疾患であり、種々の表現型、重症度がみられるが、大動脈瘤(とくに大動脈基部)とそれに伴う大動脈弁閉鎖不全症が生命予後の決定因子としてとくに重要であるため、その発生予防が種々議論されてきた。近年、FBN1変異下においては炎症性サイトカインの1つである形質転換増殖因子β(TGFβ)の活性が亢進していることが明らかにされ、この活性亢進が結合織疾患の発生に関与している可能性が示され、動脈瘤の発生予防法として、シグナル伝達系でTGFβの上流に位置するアンジオテンシンII受容体1型活性をアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)によってブロックする治療法が有効である可能性が示唆され、注目を集めるに至った。