精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

日本の高齢者データが示す、室内温度と抑うつ症状の関連性

 住環境は高齢者の心の健康にどのような影響を与えるのだろうか。今回、室内の寒さや暑さを十分に防げない住宅に暮らす高齢者ほど、抑うつ症状を抱える割合が高いことが示された。温度調節の難しい住宅に住む高齢者では、抑うつ症状のリスクが1.57倍に上ることが明らかになったという。研究は、東北大学医学部の岩田真歩氏、同大学歯学イノベーションリエゾンセンターデータサイエンス部門の竹内研時氏らによるもので、詳細は8月22日に「Scientific Reports」に掲載された。

青年期のデジタル依存症が健康に及ぼす影響~メタ解析

 スマートフォン、コンピュータ、ソーシャルメディアプラットフォームなどのデジタル機器の過度かつ強迫的な使用を特徴とする青年期のデジタル依存症は、世界的な懸念事項となっている。中国・Xuzhou Medical UniversityのBlen Dereje Shiferaw氏らは、デジタル依存症について包括的に捉え、それらの青年期におけるサブタイプとさまざまな健康アウトカムとの関連性を調査する目的でシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Behavioral Addictions誌オンライン版2025年9月10日号の報告。  Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)、Wanfang、PubMed、Web of Scienceのデータベースより、青年期のデジタル依存症に関連する健康アウトカムを報告した研究を包括的にレビューし、事前に定義された包含基準と除外基準を用いて評価した。

嚥下障害を起こしやすい薬剤と誤嚥性肺炎リスク

 飲食物を飲み込む機能障害である嚥下障害は、さまざまな疾患や薬物の副作用により引き起こされる可能性があり、誤嚥性肺炎のリスク因子となっている。しかし、嚥下障害を引き起こす特定の薬剤やその発現率については、これまで十分に解明されていなかった。慶應義塾大学の林 直子氏らは、添付文書の情報に基づき、嚥下障害に関連する薬剤およびその発現率、これらの薬剤を服用している患者における誤嚥性肺炎のリスク因子を特定するため、日本のレセプトデータベースの横断的分析を行った。Drugs-Real World Outcomes誌オンライン版2025年9月19日号の報告。  本研究では、嚥下障害誘発薬剤の候補(candidate dysphagia-inducing drug:CDID)を、副作用として嚥下障害が記載されている日本の添付文書より特定した。CDIDを服用している患者の年齢、性別、服用薬、併存疾患について、ジャムネットのJammNet保険データベースを用いて分析した。

日本人高齢者の笑いの頻度とうつ病発症との関係

 笑いは、精神的および身体的な健康の有益性と関連するといわれている。しかし、日常生活における笑いがうつ病の予防に有効かどうかに関する縦断的なエビデンスは、依然として限られている。東北大学の玉田 雄大氏らは、日常生活における笑いの頻度が高齢者のうつ病発症リスクと関連しているかどうかを検証するため、6年間の縦断研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年9月4日号の報告。  6年間にわたる3-waveコホートである日本老年学的評価研究(JAGES)に参加した65歳以上の日本人3万2,666例のデータを分析した。笑いの頻度は、2019年に自記式質問票を用いて評価した。回答カテゴリーは、「ほぼ毎日」「1~5日/週」「1~3日/月」「まったくない、またはほとんどない」とした。2016~22年のうつ病発症の定義には老年うつ病尺度を用いた。2016年に測定された潜在的交絡因子でコントロールしたうえで、修正ポアソン回帰モデルを用いて調整リスク比(aRR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

急性期~維持期統合失調症に対するブレクスピプラゾールのベストプラクティスに関するコンセンサス

 ブレクスピプラゾールは、統合失調症などに適応を有する第2世代抗精神病薬であり、ドパミンパーシャルアゴニストとして他の抗精神病薬と異なる作用機序を有している。米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、大塚ファーマシューティカルヨーロッパおよびH. Lundbeck A/Sからの資金提供を受けて組織された精神科専門家による国際委員会において実施された、統合失調症のさまざまな段階におけるブレクスピプラゾールの安全かつ効果的な使用法についての議論を報告した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月29日号の報告。

9種類の第2世代抗精神病薬に関連する血清プロラクチン上昇パターン

 抗精神病薬に伴うプロラクチン上昇は、統合失調症患者の服薬アドヒアランスおよび長期治療アウトカムに重大な影響を及ぼす。現在入手可能なデータでは、抗精神病薬を服用している患者におけるプロラクチン上昇のモニタリングとマネジメントを実践するには、不十分である。中国・上海交通大学のLei Zhang氏らは、実臨床における9種類の第2世代抗精神病薬(SGA)に関連するプロラクチン上昇パターンを調査し、プロラクチン上昇リスクを比較するため、本研究を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月19日号の報告。  2007〜19年の中国の大規模メンタルヘルスセンターの入院患者における電子カルテのデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、統合失調症と診断され(ICD-10基準)、SGA治療を行い、血清プロラクチン値を測定した患者。9種類のSGA(amisulpride、リスペリドン、パリペリドン、ziprasidone、オランザピン、ペロスピロン、クエチアピン、クロザピン、アリピプラゾール)の多剤併用療法および単剤療法を含む投与量を収集した。主要アウトカムは、入院患者におけるプロラクチン上昇の発現率とした。9種類のSGAにおけるプロラクチン上昇のハザード比(HR)を比較するために、調整層別Cox比例ハザード回帰分析を用いた。さらに、これらのSGAについて、規定1日用量(DDD)法を用いて用量反応解析を実施した。用量区分は、0.6DDD/日未満(低用量)、0.6~1.1DDD/日未満(中用量)、1.1DDD/日以上(高用量)とした。

ADHDとASDに対するビタミン介入の有効性〜メタ解析

 ビタミン介入は、自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)のマネジメントにおいて、費用対効果が高く利用しやすいアプローチとして、主に便秘などの消化器症状の緩和を目的として用いられる。最近の研究では、ビタミンがASDやADHDの中核症状改善にも有効である可能性が示唆されている。しかし、既存の研究のほとんどは患者と健康者との比較に焦点を当てており、臨床的に意義のあるエビデンスに基づく知見が不足していた。中国・浙江大学のYonghui Shen氏らは、ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月30日号の報告。

シロシビンによるうつ病改善効果、5年後も持続

 「シロシビン」の大うつ病性障害(以下、うつ病)に対する効果は、最長で5年間持続する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。シロシビンはマジックマッシュルームと呼ばれるキノコに含まれている幻覚作用のある成分である。初期のシロシビンに関する臨床試験を追跡調査したこの研究では、試験参加者の3分の2が試験から5年が経過した後もうつ病の完全寛解を保っていたことが判明したという。米オハイオ州立大学コロンバス校幻覚剤研究教育センター所長のAlan Davis氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Psychedelic Studies」に9月4日掲載された。  Davis氏は、「5年が経過した今でも、ほとんどの人はこの治療法が安全で、有意義かつ重要で、生活の改善を促すものだと見なしている」と語っている。同氏はまた、「治療後に起こり得ることを詳細に理解することは重要だ。結果がどうであれ、このような臨床試験に参加したことで彼らの人生が改善されたことを示していると思う」と同大学のニュースリリースの中で述べている。

ナルコレプシー治療にパラダイムシフト、oveporextonが第III相試験の評価項目をすべて改善、先駆的医薬品にも指定/武田

 武田薬品工業の経口オレキシン2受容体(OX2R)選択的作動薬oveporexton(TAK-861)はナルコレプシータイプ1(NT1)に対する第III相試験で有望な結果を示した。その結果は世界睡眠学会で発表された。また、同薬は国内では先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定された。  NT1は、脳内のオレキシンニューロンが減少することで引き起こされる慢性かつまれな神経疾患であり、日常生活に支障を来すさまざまな症状を引き起こす。oveporextonはオレキシンの欠乏に対処することで、NT1の広範な症状を改善する。現在、NT1の原因となるオレキシン欠乏を標的とする治療薬はなく、認可されればoveporextonがファースト・イン・クラスとなる。

アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール〜RCTメタ解析

 アジテーションは、苦痛を伴う神経精神症状であり、アルツハイマー病の約半数にみられる。また、アルツハイマー病に伴うアジテーションは、認知機能の低下を促進し、介護者の負担を増大させる一因となっている。セロトニンおよびドーパミンを調節するブレクスピプラゾールは、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対する有効性が示されている薬剤であるが、高齢者における有効性、安全性、適切な使用については、依然として不確実な点が残っている。ブラジル・Federal University of PernambucoのAnderson Matheus Pereira da Silva氏らは、アルツハイマー病高齢者のアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月31日号の報告。