呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

『がん患者におけるせん妄ガイドライン』改訂、抗精神病薬+ベンゾジアゼピン系薬など現場で多い処方を新規CQに 

 2025年9月、『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版』(日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会編、金原出版)が刊行された。2019年の初版から改訂を重ね、今回で第3版となる。日本サイコオンコロジー学会 ガイドライン策定委員会 せん妄小委員会委員長を務めた松田 能宣氏(国立病院機構近畿中央呼吸器センター心療内科/支持・緩和療法チーム)に改訂のポイントを聞いた。 ――「がん患者におけるせん妄」には、その他の臨床状況におけるせん妄とは異なる特徴がある。がん治療にはオピオイド、ステロイドなどの薬剤が多用されるが、それらが直接因子となったせん妄が多くみられる。さらに、近年では免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫療法の普及に伴い、この副作用としてせん妄を発症する患者も増えている。また高カルシウム血症や脳転移など、がんに伴う身体的問題を背景としてせん妄を発症することもある。進行がん患者におけるせん妄は、その原因が複合的であることが多い。さらに、終末期におけるせん妄では身体的要因の改善が困難であり、治療目標をせん妄の回復からせん妄による苦痛の緩和に変更し、それに合わせてケアを組み立てていく必要もある。

餅などによる気道閉塞、腹部突き上げ法と背部叩打法の有効性~MOCHI研究班

 お正月は餅を食べる機会が多く、餅による窒息の初期対処法をいま一度確認しておきたい。日本医科大学の五十嵐 豊氏らが、餅などの異物による気道閉塞患者に対して腹部突き上げ法もしくは背部叩打法による初期対応を実施する場合の有効性を介入なしの場合と比較したところ、いずれの方法も介入なしと比べて有意に良好な神経学的転帰と関連し、さらに背部叩打法は生存率改善とも関連していたことが示された。Resuscitation Plus誌2025年9月号に掲載。

がん免疫療法、投与時刻が効果に影響

 がん免疫療法の効果は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与する時刻によって異なる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。進展型小細胞肺がん(extensive-stage small-cell lung cancer;ES-SCLC)患者を対象にしたこの研究では、15時より前にICIの点滴を受けた患者では、15時以降に点滴を受けた患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に長かったことが示されたという。中南大学(中国)湘雅医学院付属腫瘍病院のYongchang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に12月8日掲載された。Zhang氏は、「点滴を行う時刻の調整は、生存期間を延ばすための安価な方法となる可能性がある。追加費用も不要で、さまざまな医療現場で容易に実施できる簡単な介入だ」と述べている。

月1回の注射で重症喘息患者の経口ステロイド薬が不要に?

 重症喘息があり、発作予防のために毎日、経口コルチコステロイド薬(以下、経口ステロイド薬)を使用している人は少なくない。しかし、経口ステロイド薬には重い副作用を伴うことがある。  こうした中、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)呼吸器免疫学臨床教授のDavid Jackson氏らが、治療へのテゼペルマブの追加が重症喘息患者の症状と経口ステロイド薬の必要性にもたらす効果を調べる第3b相臨床試験を実施。その結果、この抗体薬により対象患者の90%で毎日の経口ステロイド薬の使用量を減らすことができ、約半数で経口ステロイド薬の使用を完全に中止することができたことが示された。テゼペルマブは、免疫系の一部を標的とするよう設計された抗体薬で、肺の炎症を軽減する働きがある。製薬企業のAstraZeneca社とAmgen社の資金提供を受けて実施されたこの臨床試験の結果は、英国胸部疾患学会(BTS)冬季学術集会(BTS Winter Meeting 2025、11月26~28日、英ロンドン)で発表されるとともに、「Lancet Respiratory Medicine」に11月26日掲載された。

対象者全員の検診受診で肺がんによる死亡は大幅に回避可能

 全ての肺がん検診対象者が検診を受ければ、5年間で回避可能な肺がんによる死亡は現状の1万4,970件から6万2,110件にまで大幅に増加する可能性のあることが、新たな大規模研究で示された。米国では、2024年に肺がん検診の対象となる成人のうち、実際に検診を受けたのは約5人中1人にとどまっていたことも明らかになった。米国がん協会(ACS)がんリスク因子・スクリーニング・サーベイランス・リサーチのサイエンティフィックディレクターであるPriti Bandi氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に11月19日掲載された。  Bandi氏は、「肺がん検診の受診率がこれほどまでに低いままであるのは残念なことだ。より深刻なのは、この低い受診率が現実に命を救うチャンスの喪失につながっている点だ。対象者の全員が検診を受ければ、肺がんによる死亡を大幅に防げたはずだ」とニュースリリースの中で述べている。

アテゾリズマブ、胸腺がんに対する適応追加/中外

 中外製薬は2025年12月22日、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)について、胸腺がんに対する適応追加の承認を取得したことを発表した。  本承認は、切除不能な胸腺がん患者48例を対象に、1次治療としてアテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセルの有効性および安全性を評価した医師主導国内第II相試験「MARBLE試験」の成績に基づくものである。  本試験における主要評価項目の独立中央判定に基づく奏効割合は56.3%(95%信頼区間:41.2~70.5)であり、副次評価項目の無増悪生存期間の中央値は9.6ヵ月であった。

デュピルマブ、6~11歳の気管支喘息の用法・用量追加/サノフィ

 サノフィは2025年12月22日、デュピルマブ(商品名:デュピクセント)について、6~11歳の小児の気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者に限る)に関し、製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本承認は、既存治療でコントロール不良の中等症から重症の喘息を有する6~11歳の小児を対象とした海外第III相試験「LIBERTY ASTHMA VOYAGE(EFC14153試験)」、EFC14153試験を完了した患者を対象に実施した海外第III相試験「LTS14424試験(main study)」、国内第III相試験「LTS14424試験(Japan substudy)」の結果などに基づくものである。

Long COVIDの経過は8つのタイプに分かれる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆるlong COVIDは、一般に、新型コロナウイルスへの感染後に、疲労感やブレインフォグ、めまい、動悸などのさまざまな症状が3カ月以上持続する慢性疾患とされている。このほど新たな研究で、long COVIDの経過は、症状の重症度、持続期間、経過(改善傾向か悪化傾向か)により8つのタイプに分類されることが示唆された。米ハーバード大学医学大学院のTanayott Thaweethai氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月17日掲載された。  Thaweethai氏らはこの研究で、RECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)イニシアチブへの参加成人3,659人(女性69%、99.6%は2021年12月以降のオミクロン株流行期に感染)を対象に、感染の3〜15カ月後に評価したlong COVIDの症状スコアに基づき、患者の縦断的経過パターンを解析した。対象者のうち、3,280人は最初の新型コロナウイルス感染から30日以内に試験に登録した急性期患者、残る379人は登録時には未感染であったがその後に感染したクロスオーバー群であった。

肺がん治療における経済的視点/治療医に求められる役割

 がん治療の経済的毒性が注目される中、日本肺癌学会が開催する肺がん医療向上委員会において、近畿大学の高濱 隆幸氏が講演した。高濱氏は肺がん診療の現場において、治療医が患者とのShared Decision Making(SDM)に、経済的視点を組み込む重要性を訴えた。  分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新薬の登場により、肺がん患者の生存期間中央値は2年を超え、予後は著しく改善している。これらの新薬は高額であり、生存期間の長期化の見返りとして治療費や通院費などの副次的費用が増加する。また、離職による収入減で経済的負担を長期にわたって強いられる患者もいる。日本肺がん患者連絡会の調査では、肺がん患者の88%が高額療養費制度を利用しているにもかかわらず、63%が何らかの経済的負担を感じているという。

パラチフスAに対するワクチンの安全性、有効性と免疫原性(解説:寺田教彦氏)

パラチフスA菌は、世界で年間200万例以上の症例が推定され、腸チフス(Salmonella Typhi)と共に、衛生水準の整っていない地域で依然として重要な公衆衛生上の課題となっている(John J, et al. Burden of Typhoid and Paratyphoid Fever in India. N Engl J Med. 2023;388:1491-1500.)。日本における腸チフスおよびパラチフスの報告数は年間20~30例と少なく、7~9割が輸入症例だが、渡航医療の観点では一定の診療機会が存在する。日本の渡航前外来では、腸チフスワクチンとしてVi多糖体ワクチンが承認されて以降、南・東南アジアを中心とする流行地域への渡航者を対象に接種が行われている。