呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

対象者全員の検診受診で肺がんによる死亡は大幅に回避可能

 全ての肺がん検診対象者が検診を受ければ、5年間で回避可能な肺がんによる死亡は現状の1万4,970件から6万2,110件にまで大幅に増加する可能性のあることが、新たな大規模研究で示された。米国では、2024年に肺がん検診の対象となる成人のうち、実際に検診を受けたのは約5人中1人にとどまっていたことも明らかになった。米国がん協会(ACS)がんリスク因子・スクリーニング・サーベイランス・リサーチのサイエンティフィックディレクターであるPriti Bandi氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に11月19日掲載された。  Bandi氏は、「肺がん検診の受診率がこれほどまでに低いままであるのは残念なことだ。より深刻なのは、この低い受診率が現実に命を救うチャンスの喪失につながっている点だ。対象者の全員が検診を受ければ、肺がんによる死亡を大幅に防げたはずだ」とニュースリリースの中で述べている。

アテゾリズマブ、胸腺がんに対する適応追加/中外

 中外製薬は2025年12月22日、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)について、胸腺がんに対する適応追加の承認を取得したことを発表した。  本承認は、切除不能な胸腺がん患者48例を対象に、1次治療としてアテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセルの有効性および安全性を評価した医師主導国内第II相試験「MARBLE試験」の成績に基づくものである。  本試験における主要評価項目の独立中央判定に基づく奏効割合は56.3%(95%信頼区間:41.2~70.5)であり、副次評価項目の無増悪生存期間の中央値は9.6ヵ月であった。

デュピルマブ、6~11歳の気管支喘息の用法・用量追加/サノフィ

 サノフィは2025年12月22日、デュピルマブ(商品名:デュピクセント)について、6~11歳の小児の気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者に限る)に関し、製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本承認は、既存治療でコントロール不良の中等症から重症の喘息を有する6~11歳の小児を対象とした海外第III相試験「LIBERTY ASTHMA VOYAGE(EFC14153試験)」、EFC14153試験を完了した患者を対象に実施した海外第III相試験「LTS14424試験(main study)」、国内第III相試験「LTS14424試験(Japan substudy)」の結果などに基づくものである。

Long COVIDの経過は8つのタイプに分かれる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆるlong COVIDは、一般に、新型コロナウイルスへの感染後に、疲労感やブレインフォグ、めまい、動悸などのさまざまな症状が3カ月以上持続する慢性疾患とされている。このほど新たな研究で、long COVIDの経過は、症状の重症度、持続期間、経過(改善傾向か悪化傾向か)により8つのタイプに分類されることが示唆された。米ハーバード大学医学大学院のTanayott Thaweethai氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月17日掲載された。  Thaweethai氏らはこの研究で、RECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)イニシアチブへの参加成人3,659人(女性69%、99.6%は2021年12月以降のオミクロン株流行期に感染)を対象に、感染の3〜15カ月後に評価したlong COVIDの症状スコアに基づき、患者の縦断的経過パターンを解析した。対象者のうち、3,280人は最初の新型コロナウイルス感染から30日以内に試験に登録した急性期患者、残る379人は登録時には未感染であったがその後に感染したクロスオーバー群であった。

肺がん治療における経済的視点/治療医に求められる役割

 がん治療の経済的毒性が注目される中、日本肺癌学会が開催する肺がん医療向上委員会において、近畿大学の高濱 隆幸氏が講演した。高濱氏は肺がん診療の現場において、治療医が患者とのShared Decision Making(SDM)に、経済的視点を組み込む重要性を訴えた。  分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新薬の登場により、肺がん患者の生存期間中央値は2年を超え、予後は著しく改善している。これらの新薬は高額であり、生存期間の長期化の見返りとして治療費や通院費などの副次的費用が増加する。また、離職による収入減で経済的負担を長期にわたって強いられる患者もいる。日本肺がん患者連絡会の調査では、肺がん患者の88%が高額療養費制度を利用しているにもかかわらず、63%が何らかの経済的負担を感じているという。

パラチフスAに対するワクチンの安全性、有効性と免疫原性(解説:寺田教彦氏)

パラチフスA菌は、世界で年間200万例以上の症例が推定され、腸チフス(Salmonella Typhi)と共に、衛生水準の整っていない地域で依然として重要な公衆衛生上の課題となっている(John J, et al. Burden of Typhoid and Paratyphoid Fever in India. N Engl J Med. 2023;388:1491-1500.)。日本における腸チフスおよびパラチフスの報告数は年間20~30例と少なく、7~9割が輸入症例だが、渡航医療の観点では一定の診療機会が存在する。日本の渡航前外来では、腸チフスワクチンとしてVi多糖体ワクチンが承認されて以降、南・東南アジアを中心とする流行地域への渡航者を対象に接種が行われている。

百日咳より軽症とは限らない?パラ百日咳の臨床転帰

 パラ百日咳菌(B. parapertussis)感染症の患者特性と臨床転帰を、百日咳菌(B. pertussis)感染症と比較した後ろ向き観察研究の結果、パラ百日咳菌感染後に入院を含む重篤な転帰を呈することは稀ではなかった。また、乳幼児では百日咳菌がより重篤な疾患を引き起こした一方、年長児ではパラ百日咳菌感染者で重篤な転帰が発生する可能性が有意に高かった。奈良県総合医療センターの北野 泰斗氏らによるClinical Microbiology and Infection誌オンライン版2025年11月26日号に掲載の報告。

成人のRSウイルスワクチンに関する見解を発表/感染症学会、呼吸器学会、ワクチン学会

 日本感染症学会(理事長:松本 哲哉氏)、日本呼吸器学会(同:高橋 和久氏)、日本ワクチン学会(同:中野 貴司氏)の3学会は合同で、「成人のRSウイルスワクチンに関する見解」を12月9日に発表した。 Respiratory syncytial virus(RSV)感染症は、新生児期から感染が始まり、2歳を迎えるまでにほとんどの人が感染するウイルス。生涯獲得免疫はなく、成人では鼻風邪のような症状、乳幼児では多量の鼻みずと喘鳴などの症状が現れる。治療薬はなく、対症療法のみとなるが、ワクチンで予防ができる感染症である。

ゾンゲルチニブ発売、HER2変異陽性NSCLCの治療の変化は?/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、ゾンゲルチニブ(商品名:ヘルネクシオス)を2025年11月12日に発売した。発売を機に「非小細胞肺がん(NSCLC)のアンメットニーズと最新治療」をテーマとしたメディアセミナーを2025年11月18日に開催した。後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長 兼 呼吸器内科 科長)がHER2遺伝子変異陽性NSCLC治療のアンメットニーズと最新治療について紹介し、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者の清水 佳佑氏(肺がんHER2「HER HER」代表)が、患者会の運営経験、患者が抱える課題やアンメットニーズを述べた。

成人の肺炎球菌感染症予防の新時代、21価肺炎球菌結合型ワクチン「キャップバックス」の臨床的意義/MSD

 MSDは11月21日、成人の肺炎球菌感染症予防をテーマとしたメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野(第二内科)教授の迎 寛氏が「成人の肺炎球菌感染症予防は新しい時代へ ―21価肺炎球菌結合型ワクチン『キャップバックス』への期待―」と題して講演した。高齢者肺炎球菌感染症のリスクや予防法、10月に発売されたキャップバックスが予防する血清型の特徴などについて解説した。  迎氏はまず、日本における肺炎死亡の97.8%が65歳以上の高齢者で占められている現状を提示した。抗菌薬治療が発達した現代においても、高齢者肺炎の予後は依然として楽観できない。とくに強調されたのが、一度肺炎に罹患した高齢者が陥る「負のスパイラル」だ。