呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:133

ハイブリッド・ワクチンは同種ワクチンより優れているか?(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

1回目のワクチン接種(priming)と異なったワクチンを2回目に接種(booster)する方法は異種ワクチン混在接種(heterologous prime-boost vaccination)と呼称されるが、論評者らはハイブリッド・ワクチン接種と定義し、以前の論評でそれまでの論文を紹介した(山口, 田中. CareNet論評-1429)。しかしながら、その時の論評で取り上げることができなかった重要な論文がその後に出版された(Liu X, et al. Lancet. 2021;398:856-869.)。本論評では、Liu氏らの論文に焦点を絞りハイブリッド・ワクチンの臨床的意義について再考する。

アテゾリズマブ術後補助療法、PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIAのNSCLC患者で有益(IMpower010)/ESMO2021

 完全切除および補助化学療法後の早期(Stage IB~IIIA)肺がん患者へのアテゾリズマブを評価した「IMpower010試験」の最新の中間解析結果を、スペイン・Vall d'Hebron University HospitalのEnriqueta Felip氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。  腫瘍細胞でPD-L1が1%以上発現している(PD-L1 TC≧1%)Stage II~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)において、アテゾリズマブは再発または死亡リスクを34%低下したこと、再発部位について両群で明確な違いはみられないが、再発までの期間はアテゾリズマブ群のほうが延長したことなどが報告された。

経口コロナ治療薬molnupiravir、第III相中間解析で入院・死亡リスクを半減/米・メルク

 米・メルクは10月1日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口抗ウイルス薬molnupiravir(MK-4482/EIDD-2801)について、日本を含む世界173施設で実施中の第III相試験(MOVe-OUT)の中間解析結果を公表した。2021年8月5日までに登録された軽度~中等度のCOVID-19患者775例について解析したところ、molnupiravir群では投与後29日目までの入院・死亡がプラセボ群と比べ約50%減少したことがわかった。MOVe-OUT試験は最終的に1,550人規模の被験者で実施する予定だったが、中間解析のポジティブな結果を受け、新たな被験者の登録はすでに停止している。メルクは、近くFDAに対し緊急使用許可(EUA)を申請する方針。承認されれば、COVID-19に対する初の経口治療薬となる見通しだ。

mRNAワクチン有効率、基礎疾患の有無で差なし/NEJM

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクがある集団や、COVID-19の世界的大流行の影響を過度に受けている人種/民族集団を含む米国の医療従事者において、実臨床下でのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]、mRNA-1273[Moderna製])の接種は、症候性COVID-19の予防に関して高い有効性を発揮し、年齢や基礎疾患、感染者との接触の程度が異なる集団でも有効率に差はないことが、米国疾病予防管理センターのTamara Pilishvili氏らVaccine Effectiveness among Healthcare Personnel Study Teamの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年9月22日号に掲載された。

IgG monoclonal抗体製剤はワクチンの代替薬になりえるか?(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

本論評では、遺伝子組み換えIgG monoclonal抗体治療の基礎をなす回復期血漿治療の変遷を考慮しながらmonoclonal抗体治療の臨床的意義について考察する。長年、インフルエンザ肺炎に対して古典的回復期血漿治療が施行されてきた。また、2002~03年のSARSに対しても回復期血漿治療が試みられたが満足いく結果が得られず、抗体依存感染増強(ADE:antibody-dependent enhancement of infection)を呈した症例が少なからず存在した。新型コロナに対しても回復期血漿治療が試行錯誤されたが、今年になって発表された2つの論文は新型コロナに対する回復期血漿治療が無効、あるいは、逆に、病態を悪化させる可能性があることを指摘した。

ポンぺ病の新治療薬が製造販売承認を取得/サノフィ

 サノフィ株式会社は、2021年9月27日にポンペ病の効能または効果でアバルグルコシダーゼアルファ(商品名:ネクスビアザイム点滴静注用100mg)が製造販売承認を取得したと発表した。同社では、ポンペ病(糖原病II型)において、乳児型ポンペ病および遅発型ポンペ病の新たな標準治療となる可能性に期待を寄せている。  ポンペ病は、ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。このグリコーゲンの蓄積が、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼすことで運動機能や呼吸機能の低下をもたらす希少疾患。世界でのポンペ病の患者数は5万人と推定され、乳児期から成人後期のいずれの時期においても発症する可能性がある。

急性低酸素性呼吸不全、超低容量換気は転帰を改善せず/JAMA

 急性低酸素性呼吸不全(AHRF)患者において、従来の低容量人工換気(low-tidal-volume mechanical ventilation)と比較して、体外式二酸化炭素除去装置(ECCO2R)を用いた超低容量人工換気は、90日死亡率を改善しないことが、英国・クイーンズ大学ベルファストのJames J. McNamee氏らによる多施設共同無作為化非盲検実用的臨床試験「REST試験」で示された。機械的人工換気を必要とするAHRFにおいて、従来の低容量換気よりも1回換気量をさらに減少することで、転帰が改善する可能性が考えられていた。JAMA誌2021年9月21日号掲載の報告。

モデルナ製ワクチン第III相最終解析、重症化予防効果は/NEJM

 mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は、2回接種後5ヵ月以上にわたり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症および重症化の予防に有効で、無症候性感染も減少した。米国・Baylor College of MedicineのHana M. El Sahly氏らが、mRNA-1273ワクチンの安全性および有効性を検証した無作為化観察者盲検プラセボ対照第III相試験における盲検期の最終解析結果を報告した。mRNA-1273ワクチンは、この試験の中間解析で有効率94.1%を示し、緊急使用が許可された後、プロトコールが修正され非盲検期が追加されていた。NEJM誌オンライン版2021年9月22日号掲載の報告。

12~17歳でのmRNA-1273ワクチンの安全性と有効性を考える(解説:田中希宇人氏、山口佳寿博氏)

COVID-19の小児例は成人例に比べ症例数も少なく、ほとんどが無症状や軽症例であることがわかっている。COVID-19の臨床像を小児も含めた年齢層別に検討したイタリアからの報告では入院率、重症例の割合は年齢を重ねるごとに増加し、無症状例や軽症例は年齢とともに減少していた。3,836例の小児例の解析では約40%が無症状であり、ごく軽症や軽症を含めると95%以上という結果であった。ここで報告されている4例の小児死亡例は全例が6歳以下で、心血管系や悪性腫瘍の基礎疾患を併存している症例のみであり、新型コロナウイルスが原因とは考えられていなかった(Bellino S, et al. Pediatrics. 2020;146:e2020009399. )。本邦でも国立成育医療研究センターと国立国際医療研究センターの共同研究『COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)』を利用したCOVID-19の小児例が報告されている(Shoji K, et al. J Pediatric Infect Dis Soc. 2021 Sep 6. [Epub ahead of print])。1,038例の18歳未満のCOVID-19例では約30%が無症状であり、症状を認めた730例のうち酸素投与まで必要となってしまう小児は15例(2.1%)であったとの報告である。

セルペルカチニブがRET陽性非小細胞肺がんに国内承認/イーライリリー

 日本イーライリリーは、2021年9月27日、セルペルカチニブ(製品名:レットヴィモ)について、厚生労働省より「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する治療薬として、製造販売承認を取得したと発表。  今回の承認は、国際共同第I/II相試験であるLIBRETTO-001試験に基づいたもの。  セルペルカチニブは、RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対して世界で初めて承認された、RETのキナーゼ活性を選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬である。