呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:50

化学物質を扱う労働者のがんリスクの実態

 国内で化学物質を取り扱う職業に就いている労働者は、がんに罹患するリスクが有意に高く、勤務歴が長いほどそのリスクが上昇する可能性を示すデータが報告された。東海大学医学部衛生学公衆衛生学の深井航太氏らの研究によるもので、詳細は「Occupational & Environmental Medicine」に6月9日掲載された。  がんリスクを高める因子として加齢や遺伝素因のほかに、喫煙や飲酒、運動不足といった生活習慣が知られており、がん予防のため一般的には後者のライフスタイル改善の重要性が強調されることが多い。一方、複数の先進国から、全てのがんの2~5%程度は職業に関連するリスク因子が関与して発生しているという研究結果が報告されている。それに対してわが国では、労災認定される職業がんは年間1,000件ほどにとどまり、約100万人とされる1年当たりの全国のがん罹患数に比べて極めて少ない。さらに、労災認定されるがんはアスベスト曝露による肺がんや中皮腫が大半を占めていて、多くの職業がんが見逃されている可能性がある。深井氏らはそのような職業がんの潜在的リスク因子として、化学物質への曝露の影響に着目し、以下の検討を行った。

新型コロナBA.2.86「ピロラ」、きわめて高い免疫回避能/東大医科研

 2023年9月時点、新型コロナウイルスの変異株は、オミクロン株XBB系統のEG.5.1が世界的に優勢となっている。それと並行して、XBB系統とは異なり、BA.2の子孫株のBA.2.86(通称:ピロラ)が8月中旬に世界の複数の地域で検出され、9月下旬時点で、主に南アフリカにおいて拡大し、英国やヨーロッパでも広がりつつある。BA.2.86は、BA.2と比較して、スパイクタンパク質に30ヵ所以上の変異が認められる。世界保健機構(WHO)は、BA.2.86を「監視下の変異株(VUM)」に指定した。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、BA.2.86の流行拡大のリスク、ワクチンやモノクローナル抗体薬の効果を検証し、その結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月18日号に掲載された。

HER3-DXd、EGFR-TKIおよび化療耐性のEGFR陽性NSCLCに良好な抗腫瘍活性(HERTHENA-Lung01)/WCLC2023

 抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecan(HER3-DXd)のEGFR-TKI、プラチナ化学療法耐性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する有効性が発表された。  EGFR‐TKIはEGFR変異のある進行期NSCLCの標準治療であるが、最終的に耐性が発現する。EGFR‐TKI耐性後はプラチナベースの化学療法が用いられるが、その効果は限定的である。  HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)であるHER3-DXdは、第I相結果でEGFR‐TKI に対する多様な耐性機構を持つEGFR変異陽性NSCLC において、管理可能な安全性と抗腫瘍活性が示されている。

フルチカゾン、コロナ軽~中等度の症状回復に効果なし/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者をフルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入薬で14日間治療しても、プラセボと比較して回復までの期間は短縮しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果で示された。米国・ミネソタ大学のDavid R. Boulware氏らが報告した。軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、症状消失までの期間短縮あるいは入院または死亡回避への吸入グルココルチコイドの有効性は不明であった。NEJM誌2023年9月21日号掲載の報告。

小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法の5年生存率(IMpower133/IMbrella A)

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対するアテゾリズマブ+化学療法の1次治療による5年生存率は12%であると示された。  世界肺癌学会(WCLC2023)で、米国・ジョージタウン大学のStephen V. Liu氏らが発表した、第III相IMpower133試験と第4相IMbrella A試験の統合解析で明らかになった。小細胞肺がんに対する免疫治療の長期生存データが示されたのは初めて。  既報での化学療法単独の5年全生存(OS)率は約2%、OS中央値は約12ヵ月とされる。  IMbrella A試験は、オープンラベル非無作為化多施設長期観察試験。対象は、IMpower133試験におけるアテリズマブ+化学療法(カルボプラチン+エトポシド)群の中で、アテゾリズマブ継続または生存追跡が行われていた患者18例。

過去30年で50歳未満のがん患者が大幅に増加

 50歳未満のがん患者が世界的に急増しているとの研究結果が報告された。過去30年間で、この年齢層の新規がん患者が世界で79%増加しており、また、若年発症のがんによる死亡者数も28.5%増加したことが明らかになったという。英エディンバラ大学のXue Li氏らによるこの研究の詳細は、「BMJ Oncology」に9月5日掲載された。  研究グループによると、がんは高齢者に多い疾患であるが、1990年代以降、世界の多くの地域で50歳未満のがん患者の数が増加していることが複数の研究で報告されているという。Li氏らは、2019年の世界の疾病負担(Global Burden of Disease;GBD)研究のデータを用いて、若年発症のがんの世界的な疾病負担について検討した。GBD 2019から、204の国と地域における14〜49歳の人での29種類のがんの罹患率や死亡率、障害調整生存年(DALY)、リスク因子に関するデータを抽出し、1990年から2019年の間にこれらがどのように変化したかを推定した。

10代前半男子の喫煙、将来の子どものDNAに悪影響

 10代前半での男児の喫煙は、将来の子どものDNAに悪影響を与え、子どもの喘息、肥満、肺機能低下のリスクを高めることが、新たな研究で明らかにされた。英サウサンプトン大学のNegusse Kitaba氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Epigenetics」に8月31日掲載された。  この研究では、RHINESSA試験参加者875人(7〜50歳、男性457人、女性418人)を対象にエピゲノムワイド関連研究(EWAS)を実施してDNAメチル化パターンを調べ、参加者の母親が妊娠する前の父親の喫煙との関連を検討した。参加者のうちの328人では、父親が母親の妊娠前(参加者の出生年より2年以上前)に喫煙を開始しており、うち64人では、父親の喫煙開始年齢が15歳未満だった。なお、DNA分子にメチル基が付加されるDNAメチル化は、DNAの配列を変更せずに遺伝子の機能を制御するプロセス(エピジェネティクス)の主要素であり、主に遺伝子の発現を抑制する役割を果たす。

難治性慢性咳嗽に対するゲーファピキサント、9試験をメタ解析/JAMA

 選択的P2X3受容体拮抗薬ゲーファピキサント45mgの1日2回経口投与は、プラセボと比較し咳嗽頻度、咳嗽重症度および咳嗽特異的QOLを改善するもののその効果は小さい可能性が高く、一方で有害事象、とくに味覚に関連する有害事象のリスクが高いことが、カナダ・マクマスター大学のElena Kum氏らによるシステマティック・レビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。ゲーファピキサントは、難治性または原因不明の慢性咳嗽に対する初の治療薬として開発され、日本およびスイスでは承認されているが、米国、欧州、カナダなどでは規制当局の審査中である。JAMA誌2023年9月11日号掲載の報告。

日本人NSCLCのオシメルチニブ早期減量は脳転移の発生/進行リスク

 肺がんは初診時に脳転移が発生していることも多く、非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち20~40%は治療経過中に脳転移が発生するとされている1,2)。EGFR変異はNSCLC患者はEGFR変異があると脳転移のリスクが上昇するとされており、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の脳転移制御に対する役割が注目されている。そこで、日本医科大学付属病院の戸塚 猛大氏らの研究グループは、オシメルチニブの早期減量が脳転移に及ぼす影響を検討した。その結果、オシメルチニブの早期減量は脳転移の発生または進行のリスクであり、治療開始前に脳転移がある患者、75歳以下の患者でリスクが高かった。本研究結果は、Cancer Medicine誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。

がんに関する質問へのAIの回答は信頼できるのか

 人工知能(AI)は、特にがん治療に関しては、必ずしも正確な健康情報を提供するわけではない可能性が、2件の研究で示唆された。これらの研究は、がん治療に関するさまざまな質問に対してAIチャットボットが提供する回答の質を検討したもので、両研究とも「JAMA Oncology」に8月24日掲載された。  1件目の研究は、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ハーバード大学ダナファーバーがん研究所のDanielle Bitterman氏らが実施したもので、2022年11月に発表されたChatGPTに焦点を当てたもの。研究グループは、ゼロショットプロンプティング(あらかじめ情報を伝えずに直接質問を提示すること)のテンプレートを4種類作成し、これを用いて、がん(乳がん、前立腺がん、肺がん)の診断に関する26種類の記述(がん種、がんの進展度などの情報を伴う場合と伴わない場合あり)に対して、計104個の質問を作成した。ChatGPTは2021年9月までの情報に基づくものであるため、ChatGPTの出した回答は、2021年の全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)ガイドラインと照合して、「治療法はいくつ提示されたか」などの5つの基準で評価し、4人のがん専門医のうちの3人の評価が一致した場合を、ガイドラインとChatGPTによる評価が一致したと見なした。