呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:85

エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。  今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加のほか、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。

HEPAフィルター空気清浄機により新型コロナウイルス除去に成功/東大

 東京大学医科学研究所と国立国際医療研究センターは、8月23日付のプレスリリースで、河岡 義裕氏らの研究により、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機を用いることで、エアロゾル中に存在する感染性の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を経時的に除去できることが実証されたことを発表した。なお本結果は、mSphere誌オンライン版8月10日号に掲載された。  本研究は、東京大学と進和テックの共同で行われた。本研究に用いられたHEPA(high-efficiency particulate air)フィルターは、米国環境科学技術研究所の規格(IEST-RP-CC001)で、0.3μmの試験粒子を99.97%以上捕集可能なフィルターとして定義されている。HEPAフィルターのろ過効果を検証するため、コンプレッサーネブライザーでSARS-CoV-2エアロゾルを試験チャンバー内に噴霧して満たした後、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を毎時12回換気の風量で5分間、10分間、35.5分間稼働させた。所定の稼働時間後、チャンバー内のSARS-CoV-2エアロゾルをエアサンプラーで採取し、プラークアッセイを用いて、サンプル中の感染性ウイルス力価を測定した。さらに、1価の銅化合物を主成分とし、活性酸素を発生させてフィルター面に付着したウイルスを不活性化することができる抗ウイルス剤のCufitec(R)を塗布したHEPAフィルターを用いた場合でも、同様の条件で感染性ウイルス力価を測定した。

インフルエンザと新型コロナ:動脈血栓の視点ではどっちが怖い?(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染症の特徴として、深部静脈血栓症・肺塞栓症などの静脈血栓症リスクの増加が注目された。静脈血栓症リスクは、新型コロナウイルス以外の感染症でもICU入院例では高かった。インフルエンザなど他のウイルス感染と比較して、新型コロナウイルスにはACE-2受容体を介して血管内皮細胞に感染するとの特徴があった。血管内皮細胞は血管内の血栓予防にて死活的に重要な役割を演じている。新型コロナウイルス感染により血管内皮細胞の機能が障害されれば、微小循環の過程にて血小板、白血球が活性化し全身循環する血液の血栓性は亢進する。静脈血栓症以外に、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈血栓リスクも新型コロナウイルス感染後に増加すると想定された。また、新型コロナウイルス感染症例の心筋梗塞、脳梗塞リスクの増加を示唆する論文も多数出版されている。

がん負担の世界最大のリスク因子は喫煙/Lancet

 2019年の世界におけるがん負担に寄与した最大のリスク因子は喫煙であり、また、2010年から2019年にかけて最も増大したのは代謝関連のリスク因子(高BMI、空腹時高血糖)であることが、米国・ワシントン大学のChristopher J. L. Murray氏ら世界疾病負荷研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2019 Cancer Risk Factors Collaboratorsの解析で明らかとなった。Lancet誌2022年8月20日号掲載の報告。  研究グループは、GBD 2019の比較リスク評価フレームワークを用い、行動、環境・職業および代謝に関連したリスク因子に起因するがん負担について、2019年のがん死亡および障害調整生存年(DALY)を推定するとともに、これらの2010年から2019年までの変化を検討した。

モデルナとファイザーのBA.4/5対応追加接種用2価ワクチンを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は8月31日付のプレスリリースで、モデルナとファイザーの新型コロナワクチンの緊急使用許可(EUA)を改訂し、野生株とオミクロン株BA.4/BA.5に対応した2価ワクチンで、既存の1価ワクチンの初回シリーズまたは追加接種から少なくとも2ヵ月後に、追加接種としての使用を承認したことを発表した。このたび緊急使用許可された2価ワクチンは「アップデートブースター(updated boosters)」とも呼ばれる。

サル痘+コロナ+HIVのトリプル感染が初報告、臨床経過は?

 サル痘、COVID-19、HIV感染症に同時に感染した症例がイタリアで報告された。患者の男性は、発熱や咽頭痛などが生じてSARS-CoV-2陽性の診断を受け、皮膚病変が発現・悪化したため入院し、サル痘ウイルスとHIVの陽性が判明した。イタリア・カターニア大学のSanti Nolasco氏らによる、The Journal of infection誌オンライン版2022年8月19日号掲載の報告。  本患者は、イタリア人の男性(35歳)で、スペインに2022年6月16日~20日の5日間滞在していた。その間、避妊具なしで男性と性交渉を行ったという。主な臨床経過は以下のとおり。

ニルマトレルビル治療、65歳以上のコロナ重症化を予防/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化リスクが高くニルマトレルビル治療の適応があると評価された患者において、ニルマトレルビル治療により65歳以上ではCOVID-19による入院および死亡が有意に減少したが、40~64歳では有益性は認められなかった。イスラエル・Clalit Research InstituteのRonen Arbel氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析し、報告した。ニルマトレルビル治療は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株(B.1.617.2)に感染した高リスクでワクチン未接種の患者において有効性が示されているが、オミクロン変異株(B.1.1.529)によるCOVID-19の重症化予防に関するデータは限られていた。NEJM誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。

新型コロナ発症抑制と治療に「エバシェルド」が特例承認/AZ

 アストラゼネカは8月30日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生抑制および治療の両方を適応として、同社の長時間作用型モノクローナル抗体の併用療法である「チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)」(販売名:エバシェルド筋注セット、以下エバシェルド)が、厚生労働省より製造販売の特例承認を取得したことを発表した。  新型コロナの発生抑制を適応としたエバシェルドの投与対象となるのは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児で、新型コロナワクチンの接種が推奨されない人、または、血液悪性腫瘍患者など、免疫機能の低下等によりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある人となる。また、新型コロナ患者との濃厚接触者でない人のみ投与を受けられる。用法および用量は、筋肉内注射により、チキサゲビマブ150mgとシルガビマブ150mgの計300mgを投与する。なお、新型コロナの変異株の流行状況等に応じて、チキサゲビマブ300mgとシルガビマブ300mgの計600mgを投与することもできるとしている。

医療者のコロナ感染リスク、着用マスクや累積曝露時間による

 COVID-19患者との接触機会の多い医療従事者の感染予防に、サージカルマスクよりレスピレーターマスク(FFP2、N95やDS2に相当)が有用であることが示唆されているが、科学的エビデンスは少ない。今回、スイス・Cantonal Hospital St. GallenのTamara Dorr氏らの医療従事者を対象としたコホート研究で、レスピレーターマスク使用がサージカルマスク使用より感染リスクが40%以上低くなること、COVID-19患者への累積曝露時間と感染リスクに用量反応関係があることが示唆された。JAMA Network Open誌2022年8月15日号に掲載。

メポリズマブ、好酸球性喘息の小児患者で増悪を低減/Lancet

 都市部の低所得地域に居住する増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者において、インターロイキン-5(IL-5)に対するヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブによる表現型指向の治療法は、以前に成人で観察された有効性に比べれば劣るものの、プラセボとの比較で喘息増悪の回数の有意な減少をもたらすことが、米国・ウィスコンシン大学医学公衆衛生大学院のDaniel J. Jackson氏ら国立アレルギー・感染病研究所(NIAID)Inner City Asthma Consortiumが実施した「MUPPITS-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月13日号に掲載された。  MUPPITS-2試験は、増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者の治療における、ガイドラインに基づく治療へのメポリズマブの上乗せ効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、米国の都市部9ヵ所の医療センターが参加し、2017年11月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(米国NIAIDとGlaxoSmithKlineの助成を受けた)。