救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:19

パクスロビドがコロナ後遺症リスクを低減

 抗ウイルス薬のパクスロビド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル、日本での商品名パキロビッドパック)の使用により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の入院率と死亡率を低減できるだけでなく、COVID-19の後遺症(以下、後遺症)のリスクも低減できることが新たな研究で示された。米VAセントルイス・ヘルスケアシステムのZiyad Al-Aly氏らが実施したこの研究結果は、査読前の論文のオンラインアーカイブである「medRxiv」に11月5日発表された。Al-Aly氏は、「この薬剤が深刻な後遺症問題に対処する重要な手段となる可能性がある」と述べている。

COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーの臨床的特徴-ワクチン接種の有無で比較-(解説:小金丸博氏)

COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーやフロントラインワーカーの臨床的・ウイルス学的特徴をワクチン接種の有無で比較した前向きコホート研究の結果がJAMA誌2022年10月18日号に報告された。エッセンシャルワーカーとフロントラインワーカーは、他者と3フィート(約91cm)以内の距離で接触する仕事を週に20時間以上行うものと定義され、具体的には医療従事者のほか、教育、農業、食品加工、輸送、固形廃棄物収集、公共事業、行政サービス、保育などの分野が含まれた。この研究は、米国において、症状の有無に関係なく毎週行うサーベイランス検査でSARS-CoV-2感染症と特定された労働者を対象とし、変異株の種類やワクチン接種状況別に臨床症状やウイルスRNA量の評価を行った。

コロナ感染、繰り返すほど重症化・後遺症リスク増

 新型コロナウイルスへの複数回の感染により、死亡と後遺症リスクは2倍超、入院リスクは3倍超になることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによるコホート研究で明らかになった。新型コロナウイルスの感染による死亡や後遺症のリスクは知られているが、1回感染後の再感染によってそれらのリスクが高くなるかどうかは不明であった。Nature Medicine誌2022年11月10日掲載の報告。  調査は、2020年3月1日~2022年4月6日の米国退役軍人省の医療データベースを利用し、コロナ1回感染者44万3,588例、2回以上の複数回感染者4万947例(2回感染者3万7,997例[92.8%]、3回感染者2,572例[6.3%]、4回以上感染者378例[0.9%])、対照群として1回も感染していない未感染者533万4,729例を抽出し、死亡率、入院率、後遺症発現率を解析した。

COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、ファイザー)は、経口投与の利便性と、入院または死亡に対する高い有効性のため、多くのハイリスク患者にとって好ましい治療薬とされている。しかし、本剤は併用禁忌の薬剤が多数あるため、使用できる患者は限られる。フランス・Assistance Publique-Hopitaux de ParisのNicolas Hoertel氏らの研究グループは、重症化リスクの高いCOVID-19患者において、ニルマトレルビル/リトナビルが禁忌である割合について調査した。本結果は、JAMA Network Open誌2022年11月15日号のリサーチレターに掲載された。  本剤の禁忌については、リトナビルはチトクロームP450 3A(CYP3A)酵素を阻害し、CYP3Aの薬物代謝に高度に依存する薬剤の濃度を上昇させることで、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。また、強力なCYP3A誘導薬との併用により、ニルマトレルビルの濃度が著しく低下し、抗ウイルス効果が失われる可能性がある。重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も本剤の禁忌とされた。これらの医学的禁忌は、重症化リスクが高いCOVID-19患者に広くみられる可能性がある。

塩野義のコロナ治療薬ゾコーバを緊急承認/厚生労働省

 厚生労働省は11月22日、塩野義製薬と北海道大学の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(商品名:ゾコーバ錠125mg)を、医薬品医療機器等法第14条の2の2に基づき緊急承認した。緊急承認制度は2022年5月に新たに創設された制度で、薬剤の安全性の「確認」は前提とする一方で、有効性が「推定」できれば承認することができる。今回、本制度が初めて適用となった。同日開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会と医薬品第二部会の合同会議で、塩野義製薬が提出した第III相試験(第II/III相試験Phase 3 Part)の速報データに基づき緊急承認された。

AMI救急患者、層別化と迅速フォローでアウトカム改善/NEJM

 救急外来を受診した急性心筋梗塞患者について、臨床医の入退院の意思決定を支援するために病院ベースで開発したポイント・オブ・ケア(POC)アルゴリズムを用いて患者を層別化し、高リスク患者は入院させ、低リスク患者については外来で迅速にフォローアップをすることで、通常ケアと比較し、30日以内のあらゆる死亡および心血管系入院の複合リスクの有意な低下(補正後ハザード比[HR]:0.88)が示された。カナダ・トロント大学のD. S. Lee氏らが、10病院を対象に行ったステップウェッジクラスター無作為化試験「COACH試験」の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2022年11月5日号掲載の報告。  研究グループは、救急外来を受診した急性心筋梗塞の成人患者について、POCアルゴリズムの使用と外来での迅速なフォローアップがアウトカムに影響するかを検討する試験を行った。カナダ・オンタリオ州の10病院を、通常治療(対照)フェイズと介入フェイズをクロスオーバーして順次開始する無作為に割り付け、被験者にPOCアルゴリズムを使い、死亡リスクにより層別化。介入フェイズでは、低リスク患者は3日以内に退院し、標準化された外来ケアを受けた。高リスク患者は、入院した。  主要アウトカムは、30日以内の全死因死亡または心血管入院の複合アウトカム、および20ヵ月以内の同複合アウトカムだった。

急性期治療における抗精神病薬の使用状況~スコーピングレビュー

 せん妄などの原発性精神疾患以外の症状に対して、急性期治療で抗精神病薬が使用されることは少なくない。このようなケースで使用された抗精神病薬は、退院時およびフォローアップ時においても継続使用されていることが多いといわれている。カナダ・カルガリー大学のNatalia Jaworska氏らは、抗精神病薬処方の慣行の特徴、抗精神病薬処方と中止に対する専門家の認識、急性期治療における抗精神病薬処方中止戦略などを明らかにするため、スコーピングレビューを実施した。その結果、急性期治療で専門家が認識していた抗精神病薬処方と実際に測定された処方の慣行は異なっており、また院内での処方中止戦略についての報告はほとんどないことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、抗精神病薬の有効性およびリスクを評価するためには、処方中止戦略を継続的に評価する必要があるとしている。BMC Health Services Research誌2022年10月21日号の報告。

ICUせん妄患者へのハロペリドール、生存や退院増につながらず/NEJM

 せん妄を有する集中治療室(ICU)入室患者において、ハロペリドールによる治療はプラセボと比較して、生存日数の有意な延長および90日時点の有意な退院数増大のいずれにも結び付かないことが示された。デンマーク・Zealand University HospitalのNina C. Andersen-Ranberg氏らが多施設共同盲検化プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。ハロペリドールはICU入室患者のせん妄治療にしばしば用いられるが、その効果に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。  研究グループは、急性症状でICUに入室したせん妄を有する18歳以上の成人患者を対象に、ハロペリドール治療がプラセボ治療と比較して、生存日数および退院数を増大するかどうかを検討した。試験は2018年6月14日~2022年4月9日に、デンマーク、フィンランド、英国、イタリア、スペインのICUで行われた。

SpO2目標値の高低で、人工呼吸器の非使用期間に差はあるか/NEJM

 侵襲的人工呼吸管理を受けている重篤な成人患者では、酸素飽和度(SpO2)の目標値を3段階(低[90%]、中[94%]、高[98%])に分けた場合に、これら3群間で28日後までの人工呼吸器非使用日数に差はなく、院内死亡の割合も同程度であることが、米国・ヴァンダービルト大学のMatthew W. Semler氏らが実施した「PILOT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年10月24日号に掲載された。  PILOT試験は、侵襲的人工呼吸管理下の患者における、異なるSpO2目標値が臨床アウトカムに及ぼす影響の比較を目的に、ヴァンダービルト大学医療センター(米国、ナッシュビル市)の救急診療部(ED)と集中治療室(ICU)で実施された実践的な非盲検クラスター無作為化クロスオーバー試験であり、2018年7月~2021年8月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。