2024年4月から勤務医の時間外労働の上限が原則960時間となる、いわゆる「医師の働き方改革」がスタートするのを踏まえ、会員の勤務医1,000人を対象に働き方改革の制度の理解度、期待と不安、勤務先の対応策などについて聞くアンケートを実施した(2023年3月9日実施)。
直近1年間の勤務時間について、1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準とした場合の「当直を含む時間外労働時間の合計」を聞いたところ、「月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)」が42%、「月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)」が36%、「月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)」が13%、「週40時間を超える」が9%という結果となった。この割合は年代別(20、30、40、50代以上)、診療科別(外科・救急科とそれ以外の診療科)で比較しても大きな違いは見られなかった。
2019年にCareNet.comが行ったアンケートでも同じ質問をしたが、このときは時間外労働が週40時間を超える医師は全体の19%だったが、今回は22%と悪化した。今回のアンケートは対象を勤務医(勤務先病床数20床以上)に限定、外科・救急科に総数の5分の1を割り当てるなどやや条件が異なるものの、この4年間で時間外労働の削減があまり進んでいないことがうかがわれる結果となった。
長年の議論を経て、ようやく固まりつつある医師の働き方改革の各制度についての理解度を聞いたところ、改革の柱となる「時間外労働の上限規制」については「完全に理解している」「おおよそ理解している」の合計が53%と半数を超えたが、「宿日直の扱いと許可」では45%、「自己研鑽時間の扱い」では43%と医師本人の働き方に関する項目でも半数に届かず、「B/連携B、Cの特例水準」では39%、「今後のスケジュール」では37%に留まった。
「医師の働き方改革に期待していることや不安なこと」を選択式(3つまで)で聞いたところ、期待としては「サービス残業がなくなる」が28%、「プライベートの時間が増える」が26%で続いた。一方、不安としては「収入が減る」がダントツの37%、続いて「アルバイト・副業等が禁止される」23%、「サービス残業が増える」22%で、全体として期待よりも不安に関する項目に多くの票が集まった。
「派遣先勤務・アルバイト・副業等について、主たる勤務先に業務内容・勤務時間を届け出ているか」との設問では、43%が「届け出ている」と回答したが、「届け出ていない」との回答も23%にのぼり、働き方改革スタートまで1年となっても、勤務医の正確な勤務時間や業務内容の把握ができていない医療機関が相当数に上ることが予想される結果となった。
「主たる勤務先では、働き方改革に対して何らかの対策をとっているか」(複数回答)との設問には、「医師スタッフの増員(常勤・非常勤とも)」が20%、「宿日直勤務の許可・申請」が19%で全体の5分の1を占めたものの、最多は「何もしていない」の35%だった。
最後に自由記述で「医師の働き方改革に関する意見」を聞いたところ、数多くの回答が集まった。最も目に付いたのは時間外労働規制による給与減の不安に関するもので、20~30代の若手層を中心に「収入減が一番困る。忙しくてもいいから維持したい」(20代、臨床研修医)、「給与改定を望む。基本給が少なく時間外勤務の補填で必要な給与を確保していたので、かなり痛い」(40代、脳神経外科)、「医師に働き方改革は不要。労働時間を減らすのではなく、労働時間分の給料を出せ」(30代、放射線科)といった「労働時間に見合った報酬を支払うべき」との声が目立った。
そのほか、「従うしかない。主治医制も変わっていくのでは」(50代、外科)、「公立病院は昔のブラックな働き方が残っているが、徐々に改善されるだろう。反面、人員の確保や報酬の増加により経営が圧迫される懸念がある」(60代、内科)、「若手が権利ばかりを主張し、結局しわ寄せが管理者側に来てしまうだけの制度だと思う」(40代、消化器内科)といった、多様な意見が寄せられた。
アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。
1年後に迫る医師の「働き方改革」、認知度と対策は?…会員1,000人アンケート
(ケアネット 杉崎 真名)